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放射線教育授業実践事例27:福島県田村郡三春町立三春中学校(2015.12)

 2015年12月18日(金)、福島県田村郡三春町立三春中学校では、1年生の総合的な学習の時間「原発事故から4年〜福島や三春の現状を発信しよう」を公開した。

 

 

三春中学校

 

 2013年に、旧三春中学校を含め、桜中、沢石中、要田中の4校が統合して開校。三春町は福島県中東部に位置し、郡山市など4つの市に隣接する。生徒数は364人(2015年12月現在)。JR磐越東線「三春」駅からタクシーで約10分。東京電力福島第一原子力発電所からは約50km。

 

 

放射線と向き合い、風評被害に立ち向かうために

 

●三春中学校校長 佐藤祐也氏

 

 事故から4年以上経って今は表面上落ち着いていますが、いまだ避難されている方もいらっしゃいますし、山などには放射線値の高い場所もあります。廃炉までには時間がかかりますし、これから20年30年と放射線に付き合っていかなければなりません。そんな中で、福島県全体が取り組む放射線教育は、とても重要なことだと考えています。風評被害が根強い中、将来子どもたちが県外に出た時に、言われなき中傷を受けるかもしれません。その時に放射線に関して正しい知識をもち、相手にきちんと説明できるようになってほしいと思っています。今回の公開授業もそういう思いを形にしたもので、以前に地元のお米や野菜などを持ち寄って放射線量を計測し、安全だと実感したうえでの授業になります。また、この三春町には、汚染された環境を早急に回復し、県民が将来にわたり安心して暮らせる環境を創造するための福島県環境創造センターが整備されており、平成28年度のグランドオープンを目指しています。本校はこの環境創造センターとも連携し、今後も放射線教育に取り組んでいきたいと考えています、とのこと。

 

学んだことや調べたことをポスターにして発表

 

●指導:齋藤大輔教諭(数学)、坂本晴生教諭(理科)

 

 理科において放射線の基礎知識、保健体育において健康への影響、そして総合的な学習の時間で三春や福島、他の地域からどのように見られており、実際三春や福島の状況はどうなのかを調べたうえでの、最後の授業。前回、生徒一人ひとりがテーマに応じて探究した内容をポスターにまとめており、今回の授業では5つのグループに分かれて発表が行われた。

 

 

 

 

 発表者は掲示したポスターの説明を行い、発表者以外の生徒はその内容についての質問、評価などを行った。「自宅で作っているお米を計測し、安全だとわかった」という生徒や、放射線の単位であるベクレル、シーベルト、グレイの関係について調べ、意味がわかれば新聞などの情報も身近になるとした生徒など、発表内容は多彩。最後に、齋藤教諭、坂本教諭が選んだ生徒が全員の前で発表を行った。ひとりの生徒は「原子力発電所を日本が所有していることが不安。地震の多い国なので考え直してほしい」と訴えた。最後に、各生徒はワークシートに「今日がんばったこと」「これからの生活に活かしたいこと」を記入。後者について、ある生徒は「福島の農産物が安全であることを祖父母にも教えたい」と答えた。

 

 

独自性の高い当校の放射線教育に対して称賛の声

 

●指導助言:鳴川哲也(福島県教育庁義務教育課指導主事)、大辻永(茨城大学 准教授)

 

 公開授業終了後、参観した他校の教師や関係者が集った研究協議会が行われた。

 三春中学校の放射線教育の推進を担い、公開授業の指導にもあたった坂本教諭が当校の取り組みを説明。検討した結果、比較的余裕のある1年生で集中的に実施することにしたとし、そのうえで「理科(3時間)や保健体育(2時間)は自ら課題を見つけ、考えるためのINPUTであり、総合的な学習の時間(4時間)は主体的に判断し、よりよく問題を解決するためのOUTPUT」「放射線に関しては専門家でも様々な見方や考え方がある。生徒たちの意見にも幅があっていいし、認めていきたい」と報告。授業におけるポスター作成および発表は「他人に説明するためには、稚拙でも自分なりに学び直し、まとめなければならない。学習内容の定着率向上を図るとともに、学び方を学ぶことことを重視した」と述べた。これに対して出席者からは「中学1年とは思えないほどのレベル」「授業の展開が参考になる」「多様性を認めるという姿勢が素晴らしい」といった声があがる一方、「1年生で終わるのは惜しい。2年3年と続けることで学びが深くなるのでは」という声も寄せられた。

 また、作成されたポスターの展示など環境創造センターとの連携を図る提案や、これからの放射線教育に関しては「自然放射線の存在とともに、放射線量についての感覚、相場観を身に付けることが大切だ」という意見も出された。

 

 

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放射線教育授業実践事例26:福島県飯舘村立臼石・草野・飯樋小学校

 2015年12月3日(木)、福島県飯舘村立臼石・草野・飯樋小学校では、3年生の学級活動の時間(45分)を使って福島県教育委員会が作成した学習教材(DVD)を活用した放射線教育の授業を公開した。テーマは「ほうしゃせんから自分の体を守るには?」。

 

臼石・草野・飯樋小学校

 明治時代に飯舘村に創立された3校だが、2011年の原発事故により計画的避難区域に指定されたため、隣町の川俣町に仮設校舎を建て、3校が同じ校舎で学習している。児童数は3校合わせて155名。JR福島駅から東南に車で約40分の距離にある。

 

 

基礎的知識をもとに情報を正しく整理し、自分で判断して答えられる福島人になってほしい

●臼石・草野・飯樋小学校  大内雅之 校長 

 

 

 震災当時は南会津の学校にいた大内氏は、平成27年4月に校長としてここに赴任したという。ここでの状況を尋ねると、事故から4年を経過したせいなのか、「保護者や児童たちからは空間線量についての問い合わせや不安の声は1件も上がっていませんが、情報としてなるべく細かく流すようにしています」とのこと。しかし、登下校にスクールバスで約1時間ずつをかける児童が多く、運動不足になりがちなため、なるべく体力向上のための活動をするように心がけているという。そして、放射線問題については、「放射線についての基礎的な知識を身につけ、適切な行動をとることができる。たとえ、いろいろ言う人がいても、それに対して情報を正しく整理し、自分で判断して答えられる、自信をもった福島人になっていってほしい」と熱く語り、そのための放射線教育にしていきたいとのこと。

 

 

副読本とDVDを活用して「放射線から身を守る方法」を考えさせる

●授業者  長谷川和美、鈴木真実子、蓑野和枝の3教諭

 

 

 授業は、2年生時での学習の復習から始められた。「放射線とは?」に対しては、「見えないバイキン」「自然にもともとあったバイキン」といった答えが出てきた。また、「放射性物質とは?」に対しては、多くの児童が「よくわからない」とのことだった。

 そこで、「小学生のための放射線副読本」(文部科学省)を見せながら、放射線について再学習。電球とその光を例にして放射線と放射性物質の違いなどを説明した。

 そして、原発事故で避難している人がいるが、なぜ避難しなくてはならなかったのか問うと、「放射線にあたると病気になるから」「いっぱい浴びると体に毒だと父さんが言っていた」などの答えが返ってきた。そこで、今度は福島県教育委員会の作成したDVDを視聴させ、震災と原発事故を振り返りながら、放射線から自分の体を守るためにはどうしたらよいか、というめあてを共有した。

 

 

 まず、外からの放射線を受けることを少なくするため、電球からの光を放射線に見立て、光にあたらない方法を考えさせるため、実験をしてみることにした。その結果、児童からは「隠れる」「避難する」などの考えが出され、「さえぎること」「離れる」ことが有効で、加えて「光にあたる時間を短くする」ことが大切なことを学ばせ、さらにDVDの視聴により再確認させた。

 

 

 次に、「体の中を守る」ためにどうしたらよいか問うと、「うがいをする」「マスクをする」などの考えが示された後、福島県では、食品の放射線を測っていることやお米は全袋検査しているから心配いらないが、制限された水や食品を食べないことが重要であることを説明。

 授業のまとめとして、副読本を使用し、「放射線から身を守る方法」と「放射性物質から身を守る方法」を確認させ、それぞれに有効な方法を3つずつ書き出させることで理解を深めるようにした。そして、今日の授業を通して、「身を守るために自分はどういうことをやろうと思ったか」書かせると、児童からは「手洗いやマスクで除菌する」「放射線が出るものには近づかないようにする」などの発言を得て、終了させた。

 

 

 

事後研究会

 授業終了後に開かれた事後研究会には、見学に訪れた多くの先生方が参加された。授業者を交えての質疑応答では、放射線を「バイキン」と表現していた児童がいたことについて、「そのままにせず、生活に役立っている側面も教えたほうが良い」。また、「病院などにある放射線のマークがどういうマークなのか知りたい、といった疑問には応えてあげたい」といった意見も出されるなど活発な研究会となった。

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放射線教育授業実践事例25:福島県郡山市立富田中学校

 2015年11月25日(水)、福島県郡山市立富田中学校では、2年生の総合的な学習の時間を使って「福島第一原子力発電所の廃炉や復興に向けた取り組みについての現状と今後の見通しについて知り、将来にわたって自分たちができることは何かを考えることで、将来に夢や希望をもつことができるようにする」ことをねらいにした授業を公開した。

 

富田中学校

 人口数約33万の郡山市の富田町に、生徒数597名で1986年に創立した富田中学校は、創立30周年を迎え、現在は24学級655名の生徒数を誇る(2015年11月現在)。JR郡山駅から北西に4km、東京電力福島第一原子力発電所からは約60km離れている。

 

 

放射線教育も切り替えの時期になってきている

●郡山市立富田中学校  佐藤卓弘 校長 

 

 震災時は郡山市内の別の中学校にいたという佐藤氏は、「当時は、よく分からない中で直接的な放射線に対する恐怖や、いかに子供たちを避難させるか、守るかといったことに重点を置いていた」と言う。しかし、約5年が経過し、「今は保護者や地域の方々も含めて、放射線への恐怖はだんだんと表面には出て来なくなってきているように思う」とのこと。それは、「例えば、線量計・フィルムバッチを付ける率が下がってきていることなどからも言える」として、「放射線教育も放射線の科学的なこと以外にも、原発事故や放射線や社会的被害の道筋が風化していかないようにするための取組が重要になってきていると思います」と語る。

 

 

福島第一原子力発電所の廃炉に向けた今を知り未来を考える

●園部至哉 教諭

 

 授業は、まず、放射線の種類や霧箱実験、そして放射線の遮へい、健康への影響などについて、昨年の授業の復習から始めた。そして、教員たちが福島第一原子力発電所やその周辺自治体を見学した模様を写真を見せながら説明。

 見学用のバスに乗り、無人の商店街などの事故当時のままの風景や汚染土置き場、そして福島第一原発構内、汚染水貯蔵タンク群など。さらに福島第二原発の炉心真下などの見学写真をプロジェクターで見てから、今日のテーマ「震災からの復興について考えよう」ということで、まずは外部講師として招いた東京電力・復興本社の青木氏を紹介。

 

 

 青木氏は、福島第一原発1〜4号機の現状、汚染水の増加を少なくするための凍土壁や汚染水を浄化してからの海洋への放水など、廃炉に向けた取り組みを説明。

 次に、やはり東電から、廃炉作業現場で実際に働いている作業員の方がマスクに防護服を着て登場。防護服やマスクを説明をしながら、夏場の現場での苦労などについて紹介。また、生徒の何人かに実際に防護服を試着させた。さらに、もう一人の担当者から、廃炉に向けた工程や現場作業者の半数は福島県出身者であることなど、作業者の廃炉に向けた思いなどを語った。

 生徒にそれまでの感想を書かせると、「地元の方たちの熱い思いが伝わりました」などの感想が述べられた。

 

 

 次いで、日立GEニュークリアエナジーの技術者が登場し、廃炉の現場で活躍する遠隔ロボットを実際に動かして見せながら説明。さらに、どのような勉強をするとこうしたロボットなどの開発に携わることができるか説明し、生徒たちの将来に資するよう、また復興に欠かせない先端技術への興味・関心を持てるように語った。

 

 

 

 こうした外部講師の説明を踏まえ、教諭は「福島の復興に向けて君たちができること」ということで、①廃炉について ②除染土の管理・処理 ③風評被害 についてグループ討議させ、発表させた。「食べ物の検査を確実に行い、安全なことを積極的にアピールする」「廃炉について募金する」などの感想が述べられた。

 最後に、教諭が「廃炉まで、まだ40年もかかることから、これから社会に出て行く君たちは、今後ロボット開発や原発に関わっていくことあるからも知れないから、今からいろいろと考えることが大事だ」とまとめ、今日の授業の感想を書かせ、「作業現場には福島県の人が多いことや、復興に向けて前進していることが分かったし、いろいろ知らないことが知ることができてよかった」という生徒の発表で終了させた。

 

 

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平成27年度放射線教育フォーラム第2回勉強会

 

平成28年1月(情報提供:NPO法人放射線教育フォーラム)

 

NPO法人放射線教育フォーラムでは、来たる2月28日(日)に東京・西新橋の慈恵医科大学において、「これからの放射線授業実践をみすえて」と題したフォーラムを開催するとのことです。概要は下記のようになっていますので、奮ってご参加されてみてはいかがでしょうか。

 

平成27年度放射線教育フォーラム第2回勉強会「これからの放射線授業実践をみすえて」

 

【開催概要】

日 時: 2016年2月28(日) 12:30 〜 16:30 

会 場: 東京慈恵会医科大学 高木2号館南講堂(東京都港区西新橋3-25-8)

趣 旨: これからの放射線授業実践をみすえた3つの重要テーマによる講演を揃えた。

    ① 放射線記述が30年ぶりに復活した中学校教科書が福島での原子力災害を踏まえて

      改訂され、来年度から授業で使われようとしている。昨年11月の公開パネル討論

      では新しい理科教科書による放射線授業の在り方が討論されたが、これをもとにし

      て中学校3年間にわたる放射線授業モデル計画案を提案する。

     ② 米国など先進国における科学技術人材育成のプログラムとして最近注目を集めて

      いるSTEM(Science Technology Engineering Mathematics)教育は小中高生が

      魅力を感じる切り口でも開発され、放射線授業でも様々な実践が試みられている。

      今回は次期学習指導要領の方向性も踏まえて講演していただく

    ③ 東電福島第一原子力発電所事故の後、放射線に関する様々な情報が溢れ、時として

      誤解と混乱が生じた。あれから5年が経過した今、冷静に振り返って、汚染、被曝、

      食品基準などを含めた福島や諸外国の現状と課題についてご講演いただき、今後の

      放射線授業への活用を討論する機会としたい。

 

資料代: 1,000円    懇親会参加費: 1,500円

主 催: NPO法人放射線教育フォーラム

共 催: 東京慈恵会医科大学アイソトープ実験研究施設 

 

【プログラム】

12:30 開会挨拶 放射線教育フォーラム理事長         長谷川圀彦

12:35講演1  STEM教育改革の観点と放射線教育

          ―次期学習指導要領の方向性を踏まえて―

            静岡大学教授            熊野善介

13:25トッピクス  日本発113番元素     

            理研 仁科加速器研究センター    柴田誠一

13:40講演2  福島原発事故から5年 ― 放射線問題の現状と課題 ―

             元日本原子力研究開発機構      河田東海夫  

                (休憩15分)

14:45講演3  中学校理科教育における放射線モデル授業計画の作成について

             放射線教育フォーラム   高畠勇二 宮川俊晴

15:35総合討論

16:30閉会      懇親会(17:00〜18:30) 

 

●参加申し込み等の詳細は、NPO法人放射線教育フォーラムのホームページ http://www.ref.or.jp/ をご覧ください

 

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放射線教育授業実践事例24:福島県南会津町立舘岩中学校

 2015年11月17日(水)、福島県南会津町立舘岩中学校では、1年生の学級活動(50分)を使って「放射線に対する意識を高め、基礎知識を身につけ郷土で生きる力を育む生徒の育成」をテーマに公開授業を実施した。

 

舘岩中学校

 福島県西南部に位置する南会津地方4町村のひとつ、南会津町の舘岩地区にある。全4学級、生徒数34名(2015年11月現在)。首都圏からは、JR東北新幹線「那須塩原」から車で約2時間、日光にも近い山深い町にある。東京電力福島第一原子力発電所からは約140km離れている。

 

放射線に対する意識は低かったが徐々に理解が深まってきている

 

●南会津町立舘岩中学校  坂口 伸 校長 

 

 「本校は、福島第一原子力発電所から遠く離れた南会津地区に位置することもあり、浜通り地区、中通り地区に比べると放射線影響は小さいことから、教師や生徒たちの放射線・放射能に対する意識は低かった」と震災時には田村市の学校にいて2年前に赴任してきた氏は、驚いたと言う。そこで、同じ福島県民として欠かせない「放射線に対する意識を高め、正しい放射線の知識を学習するとともに郷土で安心して暮らせるよう放射線教育を推進してきた結果、徐々に理解が深まってきている」と語る。

 

自分たちが住む地域の放射線量などから身を守る方法を学ぶ

 

●大竹 伸 教諭

 

 冒頭、過去2時間にわたる放射線学習の復習(放射線の性質、外部被ばくと内部被ばく)から始め、本日の授業のねらい「放射線から身を守るための方法を知ろう」を提示。キーワードを「時間、遮へい、距離」とした。

 そして、まず、4人一組の4グループに分かれて、測定器「はかるくん」を使用して学校内の放射線を測ることから始めた。

 


 

 その結果をグループごとに発表。その結果、0.1μSv前後であったこと、校舎の中と外では中のほうが低いという結果から、舘岩地区の放射線量は福島県内でも低いことを理解させた。

 

 次に、ラジウムセラミックボールを使用し、測定器との間にコンクリートブロックを置いて線量の違いを調べ、ブロックを置くことで線量が下がった理由について、グループ討議させ発表。放射線は「遮へい」することができることを理解させ、生徒たちが住む舘岩地区の放射線量がなぜ低いかについて推測させた。生徒たちからは「山に囲まれていたし、福島第一原発から距離も遠かったため」「遠かったため、風で放射能が流れてこなかった」等の考えが示された。

 


 

 その後、原発事故当時の新聞記事見出し「一時帰宅 2時間以内」を例にして、一時帰宅に2時間以内という時間制限を設けたのはなぜだったか、グループ討議・発表させた。「長時間いると放射線量が高くて外部被ばくするから」「2時間以内なら基準以下だから」「長くいると体に害が出るから」などの考えが出た。

 以上を踏まえて、「放射線から身を守るための方法」のまとめとして、①(放射性物質から)離れる ②(放射線を)遮る ③(放射線を受ける時間を)短くする ことが大切だということを学習させた。そして、以上の点をまとめた福島県教育委員会が作成した学習教材(DVD)を視聴し、再確認。授業の感想を記入させ終了した。

 


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放射線教育授業実践事例23:福島県西白河郡西郷村立羽太小学校(2015.11)

 2015年11月16日(月)、福島県西白河郡西郷村立羽太小学校では、5年生の総合的な学習の時間を使って、「放射線と共に生きる、放射線の正しい知識を身につけよう」をテーマに放射線教育の公開授業を実施した。

 

 

羽太(はぶと)小学校

 1875年に開校。「西白河郡」は福島県と栃木県の県境に位置し、阿武隈川の上流域にあたる「西郷(にしごう)村」に本校がある。児童数は67人(2015年11月現在)。JR「新白河」駅からタクシーで約15分。東京電力福島第一原子力発電所からは約80km。

 

「知る」「向き合う」「共に生きる」という段階的な教育を実施

 

●羽太小学校 西牧泰彦 校長

 

 「西郷村は比較的放射線量が高く、この3月31日まで1日4時間の屋外活動制限が設けられていました。そのため体育などは配慮をしながら行ってはいましたが、やはり児童の運動能力や体力の伸び悩みがあるのではないかと感じています。また、制限が解除された今でも、児童には草むしりや花壇の手入れをする時はゴム手袋やマスクをして活動するよう指導しており、児童もそれが当たり前で、日常の習慣というふうに捉えていると思います。そんな状況の中でも、放射線への意識も次第に薄らいできています。しかし、廃炉までには30〜40年かかるわけで、児童には「放射線と共に生きる」という意識や行動を植え付けていく必要があり、特に義務教育においての放射線教育は大切なことだと思っています。本校では1、2年生には「放射線を知る」、3、4年生には「放射線と向き合う」、5、6年生には「放射線と共に生きる」というテーマを設けて段階的な教育を行っています。放射線を正しく知り、正しく怖がること。それがやがて大人になって、社会に出た時に役立つのではないかと思っています」。

 

1、2年生に放射線について教えてあげよう、を切り口に

 

●指導:仁科恵子 教諭

 

 5年生の総合的な学習の時間を使って放射線教育が行われた。まず、全校児童を対象に行われた放射線に対するアンケート調査の結果を貼りだし、特に1、2年生と5、6年生での違いを児童に尋ねた。「(1、2年生は)放射線のことを知らない」「放射線から身を守る方法を知らない」という声があがる。「じゃあ、あなたたちは教えてあげられる?」という仁科教諭の提案から授業はスタート。

身を守る方法の他、放射線は何に使われているか、体に入るとどうなるか、原発って?など、今まで学習してきたことのキーワードを提示した後、「1、2年生に放射線について何を伝えたいかを考えて、調べよう」を課題にしたワークシートを配布。福島県教育庁が放射線教育のために作成した学習教材DVDを見せるとともに、児童は手もとにある放射線の副読本3冊を活用して課題に取り組んだ。

 


 

 そして、キーワードごとに児童ひとりひとりの発表。「どんなふうに説明すればいいかも考えて」という指導を受けて、他の児童からは「その言葉は難しくて伝わらないよ」の声。たとえば放射線の有効利用であるレントゲンやCTスキャンの話では、「体を切らないでも体の悪いところがわかるので、正確な治療ができる」に言い換えた方が良いなどの意見交換が活発に行われた。

 


 

 最後に教諭が「放射線はいいもの?悪いもの?」と問いかけると、「どっちも」「悪いことの方が多い」「わからない」という声。「もう少し詳しく調べて、1、2年生に放射線の正しい知識を伝えていこうね」というまとめで授業は終了した。

 

 

放射線教育はまだまだこれから、という熱い講義が続く

 

●講義:吉川武彦(福島県教育庁義務教育課指導主事)、西牧泰彦(羽太小学校 校長)、仁科恵子(同教諭)、藤岡達也(滋賀大学教育学部 教授)

 

 公開授業終了後、参観した他校の教師や関係者が集った研究協議会が体育館で行われた。

 まず、福島県教育庁の吉川氏が、「4年半経った今でも福島に対する風評や中傷は根強く、将来のことも考えると福島の子どもたちには放射線教育はまだまだ必要だし、これからはその中身も考えていかなければならない」と語り、県の放射線教育の変遷や方向性について説明を行った。

 続いて、羽太小学校の西牧校長と仁科教諭が登壇。放射線への意識が薄れていると述べた西牧校長は、西白河郡の小学校校長が福島第一原発と第二原発に視察を行ったことに触れ、その時耳にした放射線量や目にした光景から放射線教育は必要だと実感した、と述べた。仁科教諭は「低学年の児童にわかりやすく教えるために考えることで、自らの放射線に対する知識も高まり、それが大人になった時にも役立つのではないかと思う」と語った。

 新潟県において柏崎刈羽原発の事故を体験し、防災教育や環境教育、ESD(持続発展教育)に詳しい藤岡氏は「放射線に関しての知識の啓発は、子どもたちだけでなく、保護者をはじめ地域全体に必要で、それができるのは学校教育。先生方の役割は大きい。また、先行きが不透明な時代にあって、生き抜く力の育成も必要。知識だけでなく、それをもとに判断し、行動する力がこれからは大切になってくる。ESDのすべてに放射線教育は関わってくると思う」と語った。

 

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放射線教育授業実践事例22:福島県伊達郡川俣町立川俣南小学校

 2015年11月13日(金)、福島県伊達郡川俣町立川俣南小学校では、3年生の総合的な学習の時間、4年生の道徳の時間を使った放射線教育の公開授業を実施した。研究主題は「確かな知識と助け合う心・郷土愛をもち、自分の生き方を考えることのできる児童の育成」。

 

川俣南小学校

 

 1985年に開校。福島県北部「伊達郡」の南東に位置する「川俣町」にある。児童数は126人(2015年11月現在)。被災した同町の山木屋小学校の子どもたち28人も校舎を同じくして学んでいる。JR「福島」駅からタクシーで約30分。東京電力福島第一原子力発電所からは約40km。

 

 

「故郷は川俣なんだ」と将来自信をもって言えるように

 

●川俣南小学校 佐藤 勉 校長

 

 3.11当時は別の小学校で教頭をされていた佐藤氏。「当時は屋外制限があって、外で遊べない、運動ができない。それが辛かったですね。心身ともに子どものことがとても心配でした。川俣南小学校には今年赴任したばかりですが、現在は落ち着きを取り戻し、子どもたちものびのびと活動をしています。一方で、小学校では3.11を知らない子どもたちも増えています。依然として風評被害や言われなき中傷もある中で、私たちは、子どもたちが将来社会に出て行った時に「自分の故郷は川俣なんだ」と自信をもって言えるようになってほしいと願っています。そのためにも放射線教育は学校活動の中で、あらゆる側面から繰り返し行うことが必要だと思っています。ひるまず、あなどらず。むやみに放射線を怖がるのではなく、正しい知識と理解をもって正しく怖がる。ある物事にとらわれて、動けなくなってしまうようではいけないと思うんです。特に小学生は、ある物事を強調しすぎると、それにとらわれてしまう傾向があるので、子どもたちの発達の段階に合わせた教育も必要じゃないかと考えています」。

 

 

地域の名産「川俣シャモ」を題材に放射線を学ぶ

 

●指導:小野 啓 教諭

 

 3年生の総合的な学習の時間を使って放射線教育が行われた。この時間では以前から地域の名産である「川俣シャモ」の生産者を訪ねて見学学習などを実施しており、今回の授業では、これまでの学習を振り返ることから始まった。「原発事故の前の状態を取り戻したい」「みんなに安全でおいしいシャモを届けたい」という生産者の思いを確認しながら、そのために「敷いてある籾殻や餌にこだわる」「外には出さず広い小屋で育てる」「通常の倍である112日間飼育する」「放射性物質の検査をする」などの工夫や取り組みを行っていることを確認した。

 

そして、小野教諭が「私たちにお手伝いできることが何かあるだろうか」と問いかけ、その一例として「川俣シャモ」を全国にPRするためにポスターを作ってはどうかと提案。「とってもおいしいよ!川俣シャモ」と書かれた自作のポスターを取り出し、子どもたちに意見を聞いた。「それじゃ伝わらないよ」という声を受け、ワークシートに自分なりのキャッチコピーを考えさせた。「なぜ、おいしいのか」「なぜ、安全なのか」が必要だということを考えさせながら、最後は子どもたちがそれぞれ考えたキャッチコピーを発表して授業が終了した。

 

 

震災後の心温まるエピソードから思いやりの心を育てる

 

●指導:菅野一恵 教諭

 

 続いて、4年生の道徳の時間を使った公開授業が行われた。まず、震災時の避難所の写真などを見せ、人々の様子やその時の気持ちなどを子どもたちに尋ねるところから授業は始まった。続いて、東日本大震災後に実際にあったクリスマスにまつわるエピソードを菅野教諭が紹介。これは、京都の小学生がサンタさんにあてた「(震災にあった子どもたちに比べ)私だけプレゼントをもらうのはずるい気がする。私はいらないから東北の子どもたちにたくさんプレゼントをあげてください」という手紙を見たお母さんが、何枚かのお札とともに福島県庁に手紙を送ったという話が基になっており、県庁では相談の結果、サンタからということで避難している子どもたちに絵本を届けている。

この話を紹介した菅野教諭は子どもたちに、少女の気持ち、絵本を受け取った子どもたちの気持ちについて問いかけ、グループごとに話し合いを行わせた。さらにワークシートを配り、自分がこの少女のように誰かのために何かをしてあげたいと思った経験、何かをしてあげた経験を記入させ、発表させた。最後に菅野教諭は、詩人・宮澤章二さんの「思いは見えないけれど、思いやりは見える」というフレーズが印象的な「行為の意味」という詩を紹介し、授業を終えた。

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放射線教育授業実践事例21:福島県いわき市立小名浜第一小学校

 2015年10月29日(木)、福島県いわき市立小名浜第一小学校では、6年生の学級活動(45分)を使って「放射線から身を守るためにできること」をテーマに公開授業を実施した。

 

小名浜第一小学校の概要

 沿革をみると明治5年(1872年)に遡り、明治6年を学校創立としている歴史ある小学校で、福島県浜通り南部にある「いわき市」の最南端に位置する「小名浜」地域の小高い山の中腹に建つ。全14学級、児童数は約292人(取材時)。JR常磐線「いわき」から2つ前の「泉」駅からタクシーで約15分。東京電力福島第一原子力発電所からは約50kmとのこと。

 

学校内の様々な箇所の放射線量を公表することで理解が促進

 

●小名浜第一小学校 田村尚 校長 

 

 「福島第一原発事故直後は、マスコミ報道などもあり、児童や保護者の皆さんには不安が広がり、校庭での活動を自粛するなど、対応に苦慮した。しかし、学校内の様々な箇所で放射線量を測り、それを公表することを続けてきたことによって、徐々に理解されるようになり、今では不安視されることはほとんどなくなってきた」という。また、「放射線の授業を積み重ねることによって、理解が深まってきていると自信をもっている」とのこと。

 そして、「今日の公開授業のように、距離をおいたり、遮へいすることによって受ける放射線量を減らすことができるという原則的なことを教えたり、データで示したりしていきたい。そして、多量の放射線を受けると人体に様々な影響を及ぼすことがあるが、上手に利用していくこともできるということを学ばせていきたい」と今後の放射線教育の抱負で締めくくった。

 

放射線から身を守るための3原則を遮へい実験から学ぶ

 

●石塚美千留 教諭


 

 まず、前日に校長先生と「放射線」について学習した「放射線とはどんなものか」(性質、身近な利用例、危険性など)を児童たちに聞きながら確認した。その後、放射線とはどんなものかを、分かりやすくまとめた3分程度のビデオを鑑賞し、再度、復習。そして、放射線から身を守るために3つのこと(放射線を出すものに近づかない、放射線を出すものを覆う、放射線を出すものを払う)を思い出させた。そこで、これらのことを確かめるため、実際に実験をすることにした。

 

 実験からは、放射線医学総合研究所の職員4名が入り、

①自然の放射線の量をはかる②遮へい板をおくと放射線の量はどのように変わるか③線源からの距離が変わると放射線の量はどのように変わるか、など実験内容について説明。放射線と放射能についての違いなどを解説した後、実験に移った。

 実験は、4人一組の6グループに分かれ、それぞれに用意されたGM管式サーベイメータの使用方法を習ったうえで、まず、自然の放射線量を、教室の真ん中や窓際、廊下などで計測。次に、机上で、アクリル、アルミニウム、鉄、鉛の遮へい板を使って、線源から出て来る放射線をそれぞれの遮へい板を測定器と線源の間におくことによって、どう変化するかを調べた。

 

 

 

 

 

 さらに、測定器を線源から離すことによって、線量はどう変化するか調べ、グラフにまとめた。そして、上記①〜③についての結果を児童たちに聞いて、実験のまとめとした。

 最後に、教諭が授業のまとめとして、放射線から身を守るためには、「遮へいする」「距離を離す」「時間を短くする」ことが大切であることを確認して授業を終了した。

教員向け研修会

放射線教育授業実践事例20:福島県いわき市立小名浜第一中学校

 2015年10月27日(火)、福島県いわき市立小名浜第一中学校では、3年生の学級活動での公開授業を実施。いわき明星大学特任教授の石川哲夫氏が「科学的な理解をすすめる放射線教育」と題した講義を行った。

 

 

小名浜第一中学校の概要

 1947年に開校。福島県浜通り南部にある「いわき市」の最南端に位置する「小名浜」地域の小高い丘の上に建つ。1年生8クラス(特別支援学級1クラス含む)、2年生7クラス、3年生6クラスで、生徒数は約600人。JR常磐線「泉」駅からタクシーで約15分。東京電力福島第一原子力発電所からは約50km。

 

 

正しい情報、正しい判断、正しい行動ができる人間に。

 

●小名浜第一中学校 鵜沼淳校長

 

 もともとは理科の教師で、3.11当時は別の中学校にいたという鵜沼氏。「以前からエネルギー教育の一環として放射線教育は行っており、放射線は身のまわりに存在するものという話はしていたが、事故の直後は放射線の値が高く、さすがに不安でした。特に保護者の不安感は大きく、放射線は“ゼロ”にしなければという気分が蔓延していて非常にやりづらかったことを覚えています。ただ、今日講演してくださる石川先生らの測定結果から、それほど値は高くはないと。いわき市は幸い順調に値は下がっていったというのが実感です。その年の夏には市の方針で部活動を再開しました。運動部も安全に気をつけながら、外で活動を始めました」という。

 「その後はさらに放射線教育に力を注がなければならないと感じました。この学校に着任して2年目ですが、“正しい情報、正しい判断、正しい行動”ということを常に生徒たちには話しています。ただ怖いと思うのではなく、正しく怖がってほしい。そのためには放射線に関する知識が必要で、今回の公開授業もそのためには非常に有意義だと思っています」と語った。

 

 

「科学的な理解をすすめる放射線教育」をテーマに90分

 

●石川哲夫氏(いわき明星大学特任教授)

 

 

 5、6校時(90分)を利用して、石川氏は、パワーポイントで作成したスライドをもとに、放射能測定器や霧箱などの実験などを交えながら下記の項目について語った。

1)東京電力福島第一原子力発電所事故概要(IAEA報告書)

2)自然界の放射線

3)放射性物質・放射能・放射線の理解

4)アルファ線、ベータ線、ガンマ線の特性

5)ヒトの放射線含有量

6)放射線飛跡観察霧箱装置の仕組み

7)放射線の利用

8)放射線から身を守る三原則

9)今後の廃炉対策

 

 

実験や生徒たちのロールプレイイングでは拍手や歓声が・・・


 

 (1)では、なぜ事故が起きたのかをIAEA(国際原子力機関)調査団の報告から説明。最後にエネルギー問題にも触れ、3.11以降主力となっている火力発電の資源はほとんど外国頼みであり、そのために多くの税金が使われていること、隣国中国では原子力発電所を増やしており、やがて世界最大の原発大国になることなどを事実として述べた。

 (3)では、生徒にキャッチボールをさせて、放射性物質・放射能・放射線の違いを説明。ピッチャーが放射性物質だとすれば、ボールを投げる力が放射能、ボール(放射線)を受けるキャッチャーが人だと例えた。

 (2)と(4)では、サーベイメーターを使って講義を行った。(2)では、スーパーなどで売られている身のまわりの食品を測定。検知音が鳴るが値としては安全で、食品には自然の放射性物質が含まれていることにも触れた。 (4)では、放射線の透過力を測定器で実験。鉄板やコンクリートによって測定器の音がしなくなり、ガンマ線を遮ることができることがわかると会場の生徒たちからは「おーっ」という声とともに拍手が起きた。

 (6)では2つの霧箱を作成し、放射線の飛跡を生徒たちに代わる代わる見てもらった。また、それは飛行機雲の生成原理と同じであることも付け加えた。

 放射線教育に必要な事柄をすべて盛り込んだような内容だったが、生徒たちを参加させることで飽きさせず、講義を終えた。私情を交えず、事実のみを淡々と語り、最後は「エネルギー問題や、いまだ方法が確立していない廃炉のこれからを決めるのは、君たちなんだよ。だから基礎の知識をしっかり学んで正しい判断ができるようになってほしい」と語りかけた姿が印象的だった。

 

教員向け研修会

公開パネル討論 今やる、放射線教育Ⅲ(NPO法人放射線教育フォーラム主催)

公開パネル討論 今やる、放射線教育Ⅲ (NPO法人放射線教育フォーラム主催)

 

 2015年11月23日(月・祝)、東京慈恵会医科大学高木2号館南講堂において、NPO法人放射線教育フォーラム主催のシンポジウム「今やる、放射線教育」が昨年に引き続き開催されました。今回は中学校を対象に、実践報告や講演、そしてパネル討論がありました

 

午前の部では、各地域で放射線教育に取り組まれている5名の中学校教諭による実践事例の報告がありました。

 

実践報告①

●牧野 氏(東京都豊島区立池袋中学校主幹教諭)

「意思決定の場面設定によって科学的な思考力を高める授業実践」

 

 中学3年生の「科学技術の発展」6時間を使って、「日本の今後のエネルギーについてどうあるべきか考える」をテーマに実施。ディベート手法を用いた話し合い活動を通じて、科学的な根拠に基づく意思決定を行わせる場面を作った。具体的には、生徒を4チームにして各発電方法を振り分け、2チーム対抗で弁論や尋問を行わせ(残りのチームは審判)、勝者を決めさせた。こうした手法を導入することにより、個々で集めた情報をチームで吟味する過程で誤った情報は淘汰され、メリットやデメリットを科学的に正しく判断できたことが大きい、とした。そして最後に個人の意思決定の場面である作文を書かせたが、科学的な根拠に基づいて深く考え、結論がひとつの発電方法に収束せず、多様な結論が出されたことは大きな成果だとした。

 

実践報告②

●大沼康平 氏(山形大学属中学校 教諭)

「山形市における中学校の実践事例について」

 

 今、将来を担う子どもたちに求められているのは、放射線が危険か安全かといった二元論的な考え方ではなく、自分たちの力で状況を変えたり、自らの命を守る術を身につける素地を育むことだとの考えから、中学2年生の「化学変化と原子・分子」を学習した後に、9時間の放射線教育に関する授業を実施。「1.放射線についての課題を見つける」「2.学校内の放射線の測定をする」「3.放射線を霧箱で観察する」「4.放射線から身を守る方法を考え、実験を通して確かめる(3時間)」「5.放射線の利用について考える」「6,これまでの学習を振り返り、レポートにまとめる(2時間)」を実践した。特に4に関しては班ごとに実験計画を立てさせ、実験を行い、結果を交流させたことにより、深い学びにつながったとした。事前に行った放射線に関するレディネス調査からは、正しい知識に欠け、自分の意志で考えていないと感じられるとしたが、実践後はそれが大きく変容したと評価し、今後も工夫を重ねて放射線教育を行っていきたい、と結んだ。

 

実践報告③

●佐々木清 氏(福島県郡山市立郡山第六中学校 教諭)

「『人と人とのつながり』を大切にした放射線教育と郡山市放射線教育推進委員会の取り組みについて」

 

 放射線教育の研究・公開を進めてきた福島県からは佐々木教諭が登壇。基礎知識の習得から、科学的な探求を行う放射線授業を経て、現在は1年生の「大地の成り立ちと変化」で地震災害における放射能汚染という視点から2時間、2年生の「動物の体のつくりと働き」で放射線による人体への影響と防護という視点から2時間、3年生の「科学技術と人間」で福島第一原子力発電所の廃炉作業の現状という視点から3時間実施していると報告。いずれも生徒が主体となって生徒間で話し合いをさせているとした。その中で、食育を切り口に養護の先生といっしょに行った免疫力の理解の授業、廃炉作業を行っている作業員の方を迎えての授業に触れ、特に後者は現実問題として今なお放射線で苦しみ続けている福島県民にとって「人と人とのつながり」が必要だと考え、授業に組み込んだとした。教諭はさらに福島の現状、福島で推進している教育や教材等に触れながら、「福島に来ていただければ、福島の復興がおわかりいただけると思います」と結んだ。

 

実践報告④

北畑謙一 氏(大阪府中学校理科教育研究会 研究委員)

「大阪府における放射線教育〜各学年の放射線学習の実践例〜」

 

 自治体によっては放射線教育に対して慎重なところがあると前置きしたうえで、大阪の取り組みについて紹介。氏は生徒に科学的な根拠に基づいた意思決定ができる力を身につけさせるためには3年間で系統立てて学習させる必要があると考え、指導計画と評価計画を提案。研究協力校で授業実践を行った。1年生では「光と音」で目に見えない光線の存在である紫外線をブラックライトを使っての実験で確認させ、「火山と地震」では放射能をもった鉱物と集塵機で集めた塵を含んだろ紙を線源に、霧箱を使っての実験を行った。2年生では「静電気と電流」で放電管から出ているX線の確認とその性質などを学ばせ、3年生では「科学技術と人間」で放射線の種類、利用・影響、半減期、防護、エネルギー資源の開発と有効利用を、実験や調べ学習、話し合いなどで学ばせたとした。これにより、負のイメージが多かった生徒たちが興味関心を高め、理解を深めたとし、3年生では科学的根拠に基づく意思決定ができる生徒が見られた、とまとめた。

 

実践報告⑤

羽澄大介 氏(名古屋市教育センター 指導主事)

「中学校理科エネルギー資源(放射線を含む)の指導の在り方についての考察」

 

 冒頭、「ある事柄をわからせるためには、身につけさせたい知識の全体における意味と位置づけを捉えさせるように留意する必要がある」ことに触れた。その上で、新学習要領で放射線学習が復活したが教員に知識や経験が乏しいこと、また、わが国がエネルギー資源小国であるという現実について述べた。そのうえで、新学習要領に沿った各教科書の記述を紹介しながら、たとえば「放射線が物質を透過する性質」を教える前に、原子の構造、さらには原子と原子核の大きさの違いをイメージさせることが重要とした。また、「エネルギー資源」についても同様で、教科書にただタンカーの写真の載せるだけでなく、東京タワーほどもあるこのタンカーが運ぶ原油がわずか半日で消費されること、わが国のエネルギー自給率が4%(※教科書上の数値)であることを関連づけて教えなければ、本当の狙いを子どもたちに理解させることはできない、とした。名古屋市教育センターでは、初任者研修会において、こうした考えのもと「エネルギー資源」や「放射線」に関する研修を実施していると報告。数年後を見すえて、よりよい指導のきっかけ作りになればと述べた。

 

講演

畠山正恒 氏(神奈川県聖光学院中学・高等学校 教諭)

「新教科書による授業づくりを考える」

 

 最近確信を持ったこととして、生徒がデータをグラフ化できない、グラフを解析し、物事を判断する力が弱い点を指摘。これは教員が多忙なせいもあるが、日本の教育の「教養教育が大切であるという視点がない」「教育成果を判断するには時間がかかるという考えがない」点も問題だとした。また、社会人になって求められるのは「変化(データ)を読み解いて意思決定すること」で、それが日本や個々人の将来にも関わってくると指摘。そのうえで放射線教育には「量的概念の育成」「量の変化がわかるようになる」「データで判断できるようになる」ことが必要と提示。氏自身の授業として、中学3年生に「炭素14」を例に「原子核・原子番号・質量数の復習(化学)」「β崩壊(物理)」「炭素14の成因(物理)、宇宙線(地学)」「変化のしかた(数学)」「結果から得られたもの(歴史)」と展開し、さらにこれらを地震のマグニチュードの説明と関連づけ、グラフ作成や解析などを通して教えていると報告した。氏は、対数は自然科学・工学を解決する道具であることを教え、グラフの作成・解析に関しては訓練すべきものであることを強調。一方、新教科書は量が多く内容も総花的で、重要な部分とプラスアルファを特に若手の教員が区別できず、生徒の実態を無視した授業になる恐れがあると述べた。

 

パネル討論

「今やりたい放射線の授業づくりを考える」

●ファシリテーター:高畠勇二 氏(全国中学校理科教育研究会顧問)

 

 実践報告および講演を行った6氏が登壇。高畠氏の進行のもと会場の参加者とともにパネル討論会が行われた。

 3年生の受験期に放射線が登場する新教科書について「1、2年生でも放射線教育は可能か」については今日の実践報告が参考になるとし、会場の中学校教諭からは「3年の10〜11月に原子の構造として取り組み成果があった」という意見も出た。高畠氏は「今回の改訂を難しいと見るか、新たな第一歩と見るか」と述べ、畠山氏は「エネルギーのところに放射線が出てくることが間違い。“宇宙は放射線にあふれている”というところから始めてほしい」と語り、北畑氏も「自然放射線についてはもっと生徒に発信していかないといけない」とした。会場からは「これを第一歩にワクワクするような理科の項目になれば」という声があがった。

 

 また、学校教育におけるリスク・コミュニケーションについても討論され、佐々木氏は「安全、安心という言葉は難しい。安全には基準があり、評価できるもので、リスクが伴う。対して安心は個人の価値観によって変わる」と語り、「安心は安全のうえに信頼を築かなければならず、絶対安心というものはないんだと生徒に伝えている。これからは、相手の立場になって、粘り強くリスク・コミュニケーションをとることが大切」とした。羽澄氏も「現状は、鉄道事故を起こさないためには鉄道を動かさなければいい、と言っているようなもの」と語り、高畠氏も「子どももYESかNOかを知りたがる。リスク・コミュニケーションが浸透するには時間がかかる」と述べた。さらに「これからは現場の先生と専門家が手を携えて放射線教育に取り組むべきだ」と語った。

 

教員向け研修会

放射線教育と人材育成に関する総合講演会(電気学会主催)

 2015年9月18日(金)、東京大学工学部11号館講堂において「放射線教育と人材育成に関する総合講演会」(電気学会 原子力・放射線の知識と防護技術の普及とその手法の開発に関する技術調査委員会 主催)が開催されました。同委員会は原子力・放射線の知識や技術の普及、共有を目的に、2014年から活動を開始しています。2部構成で行われた今回のプログラムの中から、第1部の「小中高における学校教育」の概要をご紹介します。

 

講演(1)

「福島教育委員会の活動」

● 鳴川哲也氏(福島県教育庁義務教育課指導主事)

 

 冒頭、夏休み前にある県の男性から「福島から子どもたちが遊びに来るのはいいが、靴には放射性物質がついている。きれいな靴を履いてくるように指導してほしい」という電話があったというエピソードを紹介。そんな中で福島では独自の放射線教育推進事業を行っているとし、2011年度から作成している放射線等に関する指導資料についての説明があった。毎年改訂を行うごとに内容は充実させており、2014年度には現場の声に応えて学習教材DVDも作成したと報告。本年度も「指導資料や実験器具などを活用した協力小中学校による授業公開」を引き続き行うとともに、「指導者研修会の開催」、「各地区で研究協議会」を柱に、こうした活動を通して「学校全体で組織的、計画的に取り組むこと」、「中学校卒業時点で、他者に科学的な根拠をもとに情報発信できる力をつけさせること」が重要だと語った。さらに、放射線教育の基礎知識とともに、たとえば道徳の時間での心の教育なども必要だとし、さまざまな側面から放射線教育を実践し、福島から全国、全世界に発信していきたいと結んだ。

 

 

講演(2)

「日本原子力産業協会の教員支援活動」

● 木藤啓子氏(一般社団法人 日本原子力産業協会 人材育成部)

 

 まず当協会が1956年から原子力・放射線利用の推進を目的に「人材育成」、「地域連携」、「国際協力」の3事業を柱に活動していることを紹介。中でも産官学連携の原子力人材育成ネットワークについて言及した。2010年に他の団体とともに立ち上げたこのネットワークは、原子力の安全確保の土台である人材育成などを目的にしたもので、大学や研究機関、企業、国など71機関で構成され、国内、海外で活動を展開。小中高校において放射線・原子力の基礎をわかりやすく正確に伝える活動を支援することを目的とした初等中等教育支援分科会においては、3.11以降、新たに教育支援活動に関する情報の収集・発信活動を開始したと述べた。知識も経験も少なく、戸惑う教育現場が多い中、理科教員の支援、放射線教育についての支援などを、現場の声を汲み上げながら行っていることを報告。活動イメージとしては、教育現場や大学や企業、国などを結ぶ「放射線教育支援地域コーディネーター」だとし、今後もさまざまな交流を行いながら、知見を積み重ね活動を広げていきたいと語った。

 

講演(3)

「日本原子力学会の教育支援活動〜初等中等教育の教科書におけるエネルギー・原子力・放射線関連記述の調査と提言〜」

● 工藤和彦氏(九州大学 名誉教授)

 

 続いて、日本原子力学会で初等・中等教育小委員会委員長を務める工藤氏が登壇し、教育支援活動の一環である「教科書調査活動」について語った。当初は大学の原子力教育の検討を目的としていたが、チェルノブイリの事故を受けて、初等中等教育段階における原子力教育の調査も開始。当時の高校の教科書には誤解や科学的根拠のない記述などが見受けられ、改善を求めたとした。以降も調査を継続、報告書を作成し、文科省や教科書協会、メディアなどに提出してきたが、こうした活動が実を結び始めた中、3.11以降にはまた誤った記述などが多く見られるようになったと報告。「原子力発電所は、日本では法律などによって臨海部の人口の少ないところに建設することになっている」、「急性障害が生じない量の放射線でも、がんや遺伝的障害が発生する可能性がある」などの記述を紹介しながら、これらを「非難するのではなく、より良い教科書にするための参考にしてほしいと願い活動をしている」と述べ、「声高に主張するのではなく、理解し納得していただくために根気よくやっていきたい」と結んだ。

 

教員向け研修会

エネルギー・放射線教育に関する研修会(資源エネルギー庁主催)

 2015年9月18日(金)、東京大学工学部11号館講堂において「エネルギー・放射線教育に関する研修会」が前日17日(木)に引き続き開催されました。冒頭、主催の資源エネルギー庁より、電力ガス事業部 原子力立地・核燃料サイクル産業課原子力広報官の須山照子氏から「エネルギー政策の主要課題」の簡単な説明があった後に講演に入りました。

 

講演(1)

「理科教育からの発展〜新たな取り組みを〜」

● 村石幸正氏(前東大付属中等教育学校副校長)


 村石氏は、以前から広島・長崎への根強い差別を感じていたものの、ある文章に出会うまでは漠然と「ある程度の奇形児の出現率の増加があったのではないか」と考えていたこと、また、宿泊研修で広島に行った生徒たちが、原爆の影響をすべて放射線のせいだと思い込んでいたことが、放射線教育を始めるきっかけだったと述べた。さらに、「人は多かれ少なかれ環境に左右される。ゆえに学校と家庭が連携することが大切」だと指摘。特に3.11直後は情報が錯綜し、「不安が燃え上がってしまうぎりぎりの状態だった」と表現。同校では以降、放射線に関する正しい知識を普及させていくために、PTAのホームページや全国配布の広報誌「ぎんなん」などを通し、同校卒業生による知見などを積極的に取り上げ、生徒のみならず父兄に対しても情報を発信していると報告した。

 

報告(1)

「グループ発表」

● 萱野貴広氏(静岡大学教育学部教務職員)

● 勝川健三氏(弘前大学教育学部准教授)

● 齋藤由美子氏(島根県教育委員会教育庁教育指導課指導主事)

● 佐々木康栄氏(青森県教育委員会学校教育課指導主事)

 

 前日の最後に行われた研修会参加者によるグループディスカッションのまとめの報告が4氏から行われた。「初めて体験することなので試行錯誤が続いているが(何を言わんとするかが分かりずらい、例えば今回の参加者が初めての経験なので、・・・・・)、今後は科学的に考え、判断する力を育てていくことが大切」で、そのためには「今は理科にまかせがちだが、それ以外の教科や分野で放射線教育を展開すること」、「エネルギー事情や福島の現況など社会的状況を指導者は自分のこととして理解・咀嚼し、放射線教育においてはその狙いを明確化すること」などが重要だと報告。「授業で何をどのように伝えていけばいいのか、教える側が自信を持って行うための研修の場や学習プログラムが必要」という具体的な意見も出た。さらに「放射線教育は日本全国の児童・生徒のみならず、父兄に対しても展開していくことが必要」で、「県全体で放射線教育に取り組んでいる福島から他県が学ぶことは多く、その知見や蓄積の発信を期待したい」という意見が印象的だった。

 

講演(2)

「放射線教育の現場から」

● 阿部洋己氏(福島県双葉郡富岡町立第一中学校 校長)

 

 福島の現状として、原子力発電所に近い地域では避難などによって授業は仮設の教室で行い、児童生徒数も減少し続けていると報告。その中で、地元や避難先との連携、少人数での授業を活かした魅力ある学校づくりを考えているとした。また、来年4月には環境創造センター内に、原子力発電所の事故や放射線について学べる研修室、実験室を備えた交流棟がオープンする予定であることを報告。今後も原子力発電所の廃炉作業などを注視しながら、福島県ならではの放射線教育を推進していく、とした。さらに、根強い風評を払拭するためには「全国での放射線教育」が必要だとし、その際には「放射線は自然界に存在しているもの」ということの指導、いざという時のための防災教育を繰り返し行うことが大切だとした。最後に、会場において配布された福島県教育委員会が作成した放射線教育のための指導資料やDVDについての説明があった。

 

 

講演(3)

「理科と他教科との連携の可能性を探る」

● 藤本登氏(長崎大学教育学部教授)



 今世界で、持続可能な未来の実現に必要な知識、技能、価値観などを身につける教育・学習「ESD」が求められているが、日本ではまだ実践できていないと指摘。エネルギー問題、放射線の問題に関しても今後は、学校、家庭・地域、自治体や国などが連携し、保育・幼稚園から社会人まで、さまざまな分野で知識や能力を高める必要があるとした。たとえば小・中学校などにおいては理科だけでなく他教科でも実施するべきで、「放射線を浴びるとがんになるという一方で、なぜがん治療に放射線を使うのか」、「放射能の生物学的半減期は、代謝や栄養素にも関係する」と考えれば、他教科でも可能だと語った。また、その際には、日本は島国であり、送電線で他国とつながっているドイツのようなエネルギー政策はできないことを前提とすることが重要だ、とした。最後に教育(education)の語源は「educe(潜在能力を引き出す)」であり、教師は教え込むのではなく、あくまでも「主体的な学びや活動」を引き出すことが必要であると結んだ。

 

パネルディスカッション

情報を発信する立場として、エネルギー、放射線教育のこれからを考える」

● コーディネーター:飯本武志氏(東京大学環境安全本部准教授)

● 野坂真理氏(フリーアナウンサー)

 

 情報を発信する立場として我々はどのようなことに注意すべきかについて、青森を中心にフリーアナウンサーとして活躍している野坂氏が「私は自分が集めた情報を咀嚼したうえで語る、押しつけないということに注意している」と語り、参加者に対しては「難しい言葉は一般の人には思った以上に伝わらない。それと、危ないか危なくないかは必要だが、それとともに“なぜか”をわかりやすく伝えてほしい」と述べた。続いて、エネルギー、放射線教育の今後の展開について質疑応答が行われた。前日講演を行ったいわき明星大学の石川氏からは「聞いたことは忘れる。体験したことは覚える。児童を参加させるような工夫が必要」と述べた。同じくいわき明星大学の東氏は「原子力発電所とエネルギー問題、放射線教育はつながっている。時間に制限がある中でも、そのことに配慮し、工夫して伝えていかなければならない」と語った。

 

講演(4)

エネルギー、放射線教育を進めるうえで大切にしたいこと」

● 清原洋一氏(文部科学省初等中等教育局 主任視学官)

 

 最後に、福島県とともに放射線教育を推進している清原氏が登壇。まず、日本人の控えめな性質もあるものの、「指導に自信がない」と答える教師が他国に比べて多く、同様に「ダメな人間だ」と考えている子どもたちが多いことを指摘。社会環境が激変する中、知識や技能に、今後は主体的に考える力、状況に応じて判断する力を加えた「社会を生き抜く力の育成」が重要だとし、そのためには「自立」、「創造」、「協働」という3つの理念の実現が不可欠だとした。また、教育の現場では、学習の狙いや内容も、目の前にいる子どもたちの状況とともに見直す必要があり、教科の学習の中での位置づけや学校の教育全体としてのまとまりなどを考慮し計画的に実施していくべきで、何よりも子どもたちの疑問や気持ちに寄り添うことが大切だと結んだ。

 

教員向け研修会

エネルギー・放射線に関する研修会(主催 資源エネルギー庁)

 

エネルギー・放射線に関する研修会 (主催 資源エネルギー庁)

 エネルギー・放射線教育に関する情報交換と皆様とのネットワークの充実を目的に、資源エネルギー庁主催による研修会が下記のように実施されます。今後の放射線教育のためにも、ご参加されてみてはいかがでしょうか。

 

主 催 資源エネルギー庁

共 催 文部科学省平成25-27年度科学研究費補助金基盤研究(B)

日 時 平成27年9月18日(金)9:15〜12:10

場 所 東京大学工学部11号館講堂(文京区本郷7-3-1 東大正門横)

参加費 無料

申込方法 事前申し込みの必要はありません。当日、直接会場にお越しください。

 

[内容]

≪9:15〜9:20≫ はじめに

     資源エネルギー庁

≪9:20〜9:30≫ 理科教育からの発展、新たな取り組みを考える

     前東大付属中等教育学校副校長 村石 幸正氏

≪9:30〜10:00≫ エネルギー、放射線教育の現場での悩みと展望

     参加者より発表

≪10:00〜10:30≫ 放射線教育の現場から

     福島県富岡第一中学校長 阿部 洋己氏 (前福島県教育委員会放射線教育担当指導主事) 

≪10:30〜11:00≫ 理科と他教科との連携の可能性を探る

     長崎大学教育学部教授 藤本 登氏

≪11:10〜11:40≫ パネルディスカッション

  「情報を発信する立場として、エネルギー・放射線教育のこれからを考える」

     コーディネーター  飯本 武志氏(東京大学環境安全本部准教授) 

     パネリスト

               野坂 真理氏(フリーアナウンサー)

               阿部 洋己氏(福島県富岡第一中学校長)

               藤本 登氏 (長崎大学教育学部教授)

               村石 幸正氏(前東大付属中等教育学校副校長) 

≪11:40〜12:10≫ エネルギー、放射線教育を進める上で大切にしたいこと

     文部科学省初等中等教育局主任視学官 清原 洋一氏

 

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運営・お問い合わせ先 (公財)日本科学技術振興財団

    エネルギー・放射線に関する教員セミナー事務局

       担当 掛布、井畑、大平

          03-3212-8504

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教員向け研修会

北から南から福島を踏まえた放射線教育の全国展開Ⅲ〜新たな中学校放射線授業への展望〜(日本アイソトープ協会主催)

 2015年7月10日(金)、日本アイソトープ協会による「第52回アイソトープ・放射線研究発表会」が開催され、その一環として、東京大学弥生講堂において「北から南から福島を踏まえた放射線教育の全国展開Ⅲ〜新たな中学校放射線授業への展望〜」と題して実践事例紹介、講演とパネル討論が行われました。

 

実践事例(1)

「長崎市の中学校における実践事例について」

● 前田幸司氏(長崎市立東長崎中学校)

 

 全国の4人の教諭が、放射線教育の実践事例を報告。まず、長崎県の前田氏が、2014年度に行った中学3年理科の単元「地球の明るい未来のために〜自然と人間と科学技術〜」での実践事例を紹介した。「義務教育の最後に、すべての生徒に、これからどう生きていくべきかを考えてほしい」という願いを込めて全6時の授業を実施。第1時は「私たちのくらしとエネルギー」、第2時は「電気エネルギーのつくり方」として火力発電と水力発電、第3〜4時は原子力発電をテーマに、その長所と短所、しくみなどとともに、放射線とは何か、放射線の体への影響なども取り上げた。さらに第5時では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを、第6時ではまとめとして「これからのエネルギーについて〜ベースロード電源をどうするか」「地球温暖化」などについて授業を行ったと報告。これらの授業は3学期の1月下旬から2月上旬に行われ、難しい面もあったが、真剣に耳を傾けている生徒が多く、手応えを感じたとした。

 

実践事例(2)

「東京都の中学校における実践事例について〜義務教育で放射線を学ぶことの意味〜」

● 青木久美子氏(世田谷区立千歳中学校)

 

 エネルギー・環境教育については教科書に採り上げられる前から行ってきたと言う青木氏は、福島第一原子力発電所の事故直後、生徒の興味や関心に応える根拠を示すことは難しかったとしたうえで、新聞の記事を使って授業を行い、自分の考えを持たせたいという狙いからレポートを書かせたり、また、2年生では粒子などを学習する時期に合わせて、放射線の測定と遮蔽について実験を行った、とした。現在は理科の授業で放射線教育を行っているが、世田谷区立の中学校の指導者にアンケートを実施したところ、「身近な放射線量の測定」のような実験や観察の実施は約3割だったと報告。今後は、実験機器などの整備はもちろんのこと、放射線教育のデータベース化、教諭のスキルアップ研修などの拡充が求められるとした。最後にエネルギー・環境教育について、中学校では生徒たちに自分で調べ、資料を読み取り、多様な考え方や内容について検証できる力を持たせ、義務教育から送り出す必要があると結んだ。

 

実践事例(3)

「桑折町の中学校における実践事例について〜放射線について正しい知識を身に付け、科学的根拠をもとに判断し、行動できる生徒の育成〜」

● 齋藤勇雄氏(福島県伊達郡桑折町立醸芳中学校)


 放射線教育を独自に推進する福島県から齋藤氏が登壇。「いまだ食や日常生活の不安は払拭されていない」としたうえで、放射線教育に対する関心度や知識量は生徒の個人差が大きく、当事者意識が全体的に低い、と報告。教える側も理科担当以外の教員の戸惑いが大きい、とした。そこで同校では、理科と他教科の教師が連携するTeam Teachingで指導。たとえば技術・家庭科と食の視点から「内部被ばく」について、社会科と「新しいエネルギー」について、学級活動では「福島で生きる」をテーマに地元の現状と生活のしかたについて、保健体育科では「放射線が関わるストレスへの対処」について授業を実施。それぞれの専門性を活かしたことで自信を持って指導ができ、学習効果も高まったとする一方、放射線への意識が風化する中で、こうした授業を継続していくことが重要だとした。

 

実践事例(4)

「徳島県の中学校における実践事例について」

● 紅露瑞代氏(徳島県立城ノ内中学校)


 中高一貫校である城ノ内中学校から、紅露氏が登壇。福島第一原子力発電所を中心とする福島の現状を視察する研修会に参加し、義務教育を通じて放射線の理解を深め、科学的に思考・判断する力を育てる重要性を実感したとした。そのうえで同校の「中学校学習指導要領理科改訂前後での指導計画の比較」を報告。平成20年度の3年生対象のカリキュラムでは「暮らしに役立つ科学技術」という視点から、近くにある火力発電所の見学や、発電所による出前授業などエネルギー資源に関するものに加え、京都議定書などを踏まえた環境に関する授業などを実践したことを報告。平成27年度に3年生に行う予定の指導計画では、1、2年生で学んだ「地震が起きるしくみ」「電子の存在と発電」などをベースに、「放射線の性質」「放射線の測定」「放射線の遮蔽実験」「放射線の利用」などの授業がカリキュラムに組み込まれているとし、これにより、生徒ひとりひとりが課題を見つけ、それを解決する力を育てたい、とした。

 

講 演

「新しい中学校理科検定済教科書に見られる放射線記述の傾向」

● 畠山正恒氏(聖光学院中学校高等学校)


 私立聖光学院の地学教員である畠山氏から、2016年度から使用される新教科書についての問題提起があった。まず、中学校の理科の教科書のページ数は1割程度増え、本文以外の注釈も増えていると報告。また、各分野とも高校へのつながりが重視され、防災・減災教育と放射線教育への対応が図られているが、その一方で、理科の授業時間数は変わらず過酷な授業が予想されると語った。さらに放射線の位置づけは、どの教科書でも原子力発電からの派生事項として記述され、電磁波としての放射線や放射性物質といった物理的・化学的な見方で記述されていないと指摘。このままでは「わからない理科」が蔓延し、高校での理科の忌避、消極的な回避につながるとし、全体を見渡すと科学教育のピンチと表現。理科を暗記項目にしないためには教員や生徒への継続的なサポートが必要だと結んだ。

 

パネル討論

ファシリテーター:高畠勇二氏(エネルギー・環境理科教育推進研究所)

 

 上記5氏とともに、全国の学校などで放射線の出前授業や研修会を行っている高畠氏が登壇。新教科書を踏まえ、放射線教育の(1)今後の指導法と補助教材、実験教材(2)Team Teachingのあり方(3)外部支援のあり方と可能性について、会場とともに討論を行った。指導方法としては教科書をベースに、「エネルギー」「復興」「科学技術」を視点としたものが考えられるが、限られた時間の中では精選していかなければならない、とした。学習教材については、本サイト「らでぃ」をはじめ、会場からの紹介(下記参照)があったほか、今後は地域の特性を考慮した「ご当地教材」の開発も必要だという声も上がった。また、「中学生に対してはどのレベルで?」という質問に対しては、最低限「自然放射線の存在」というものをスタート地点にするのがいいのではないか、とした。最後に「福島の経験をどう活かして、どう世界に貢献するか」が日本の課題とし、そのためにも義務教育の役割は重要だと結んだ。

 

※アイソトープ協会「放射線教育における参考テキストまとめ」

http://www.jrias.or.jp/seminar/cat8/804.html

※独立行政法人 科学技術振興機構「放射線ってなあに?」

http://sciencewindow.jst.go.jp/kids/02.html

※福島県教育委員会作成の放射線教育のためのDVDの内容がYou Tubeにアップされる予定

教員向け研修会

第12回 日本放射線安管理学会 6月シンポジウム(日本放射線安全管理学会主催)

 2015年6月19日(金)、東京工業大学大岡山キャンパス西8号館10階会議室において、日本放射線安全管理学会主催の「第12回 日本放射線安全管理学会 6月シンポジウム」の2日目が開催され、高校生と専門家による特別セッションなどが行われました。

 この特別セッションの模様をご紹介しましょう。

 

特別セッション

高校生と専門家が語る放射線

 

高校生による放射線に関する研究発表①

「放射線に対する戸山生の意識調査と霧箱を用いた放射線の測定」

東京都立戸山高等学校(指導:小林一人教諭)

 

 戸山高等学校から3人の生徒が代表して発表を行った。放射線に関する情報が錯綜する中で、生徒の意識が多様化していることに興味を持ち、まず自校の生徒にアンケートを実施。その結果、放射線への関心が正しい知識につながるものではないことがわかり、今後は安全対策の啓蒙を含めた活動を行っていきたいとした。さらに、霧箱を使って放射線を数値化できないかと考え、戸田式卓上霧箱を用いてその様子を動画撮影、画像解析ソフトで研究を行った。試料はα線とβ線を出すユークセン石と、半減期の短いラドンガスの2種類用意し、前者からは放射線の長さが、後者からは放射線の量が測定できるのはないかの仮説をもとに実施。課題は多いものの、改善点をもとに計測すれば、霧箱によって放射線の性質を数値化することは可能ではないかと結論づけた。出席者からはアンケートの取り方や分析方法、グラフの見方に関するアドバイスがあった。

 

高校生による放射線に関する研究発表②

「間放射線測定器で中高生が学ぶことができた広島・福島」

奈良学園中学校・高等学校(指導:工藤博幸教諭)

 

 2002年から広島における環境放射線量と被爆地への偏見の現況について調査を行っている奈良学園中学校・高等学校から、4人の生徒が発表を行った。先輩達の技法をもとに、2011年から福島における放射線量の経年変化という自然科学的側面と、人の心情という社会的側面から調査を実施。放射線量の計測はGM計数管とシンチレーションタイプを用いて福島市内と阿武隈川河川敷で行った。その結果、除染が進む市街区では年々放射線量が低減し、現状では関西のレベルまで低減していることを確認。非除染地域の草むら部分ではやや低減、阿武隈川周辺では川の洗い流しと除染による低減が見られるとした。また、2011年からJR福島駅前において対面式聞き取り型のアンケートを実施。甲状腺がんの報道から子どもへの遺伝的影響への不安が増加したが、自分自身の健康や食品への不安は減少しているとした。JR奈良駅前でも同様のアンケートを実施したが、福島産や東北産のものへの忌避率が依然根強いことから、これらの誤解を解消するべく活動を続けていくと結んだ。出席者からは草むらでの測定方法のアドバイス、奈良県における福島産の流通などについて質問があった。

 

高校生による放射線に関する研究発表③

「国内海外の高校生と共に考えた放射線教育・福島での取り組みから」

●福島県立福島高等学校(指導:原尚志教諭)

 

 「福島の正しい現状を知り、それを国内外に発信する」ことを目的に活動を続ける福島高等学校からは、4人の生徒が登壇。2015年3月のフランスでの活動報告をもとに発表を行った。2014年6月、同校生徒をはじめ、福島県の4つの高等学校、県外の6つの高等学校の協力を得て、生徒の学校や家庭での個人線量の測定をD-シャトルを用いて2週間実施。また、海外では、フランス、ポーランド、ベラルーシの高校に同様の測定を依頼。合計216名の測定結果から、1年間の個人線量を算出し、学校、地域ごとの分布を箱ひげ図で示した。ここから、福島県内における年間線量の中央値は自然放射線値内にあり、国内や海外と比較しても決して高いものではない、とした。さらに、福島県産の食品が科学的にど安全と確認されているにもかかわらず、不安の声は依然として高く、価格の低迷や買い控えの悪循環が生じていることを報告。今後も放射線への知識を深め、福島の現状を少しでも広く発信していくと語った。

 

高校生と専門家による意見交換

● ファシリテーター:飯本武志(東京大学環境安全本部)

● 磯部久美(神戸学院大学研究支援グループ)

● 実吉敬二(東京工業大学 放射線総合センター准教授)

 

 

 最初に、発表を行った高校生同士の意見交換が行われた。アンケートの調査方法や放射線の計測場所の選定などについての質疑応答があり、高校生では活動にも限界があるため、学校同士の連携も必要という意見が出た。続いて、ファシリテーターである飯本氏とともに、専門家を代表して磯部氏と実吉氏が登壇。実吉氏は「専門家にもさまざまな意見があり、答えもひとつではない。実感を大切にした方がいいこともある」と話し、磯部氏は「自然界には放射線があり、人体にも放射性物質はあることを知らない人が多い。その点も踏まえ、放射線が人体にどれだけ影響があるかを調べてみれば安心感も違うのでは」「ラディと福島に設置されたリアルタイム線量計とでは空間線量の値が違い、不信感を持つ生徒も多い。しかし、それは性能の違いによるものなので、そういった点もアピールしていってほしい」と話した。また、教育現場からの声として、指導した3人の教諭からは「こういう活動を行っていると批判されることも多く難しい面がある」「放射線への理解を深め、それを教育に活かすためにも、リーズナブルで正確な線量形というものが必要」との意見が出た。最後に飯本氏が「専門家から見ればまだまだ未熟かもしれないが、彼らの知見や成果を共有する場を増やし、自由な発想を阻害しない環境をつくることも我々の大切な仕事」と語り、発表を行った高校生への盛大な拍手をもってセッションを終了した。

教員向け研修会

放射線教育と人材育成に関する総合講演会 (電気学会主催)

 

電気学会 原子力・放射線の知識と防護技術の普及とその手法の開発に関する技術調査専門委員会

放射線教育と人材育成に関する総合講演会

 

来たる9月18日(金)に、東京・文京区の東京大学において「放射線教育と人材育成に関する総合講演会」が下記の要領で開催されます。

入場は無料ですので、ふるってご参加されてみてはいかがでしょうか。

 

【開催の趣旨】

平成26年度より活動を開始した標記専門委員会は、「放射線・放射能に関する正確な知識を国民に普及させることが無用な混乱を防ぎ過度な対応の抑制につながり」、また「適切な防護技術を利用することで現場における無用な被ばくを防ぐことが重要である」(以上、当委員会の設立趣意書より抜粋)の2点に着眼し、以下の調査検討を行っています。

 

1) 国際的な原子力・放射線教育(一般国民向け、専門家育成)に関する動向と実践例を入手し整理すること

2) 震災前後の日本における原子力・放射線教育に対する国民、業界、政府等の考え方や対応、ツールやプログラムの変化について関係者間が情報を持ち寄り、精査すること

3) 放射線防護体系に関する枠組みを再検討する国内外の動きを調査し、現場における放射線防護技術の開発状況を調査、整理すること

 

本シンポジウムでは上記の1)と2)に関連した情報提供がなされます。本専門委員会の活動における情報収集の一環として位置づけると共に、関係者からのさらなる情報提供を求め、意見を聴取することを目的としています。

入場は無料です。多くの方のご参加をお待ちしています。

 

日時:平成27年9月18日(金) 13時〜16時半

会場:東京大学工学部11号館講堂

主催:電気学会 原子力・放射線の知識と防護技術の普及とその手法の開発に関する技術調査専門委員会

共催:応用物理学会放射線分科会放射線物理研究会、東京大学・科研費基盤(B)

後援:文部科学省(申請中)

司会:野坂真理(フリーアナウンサー)

 

[内 容]

開会挨拶  主催技術調査専門委員会・主査        飯本武志(東大)

13:05〜14:20 <第1部 小中高における学校教育> 

 1.福島県教育委員会の活動              鳴川哲也(福島県教育庁)

 2.日本原子力産業協会の教員支援活動         木藤啓子(日本原子力産業協会)

 3.日本原子力学会の支援活動  工藤和彦(日本原子力学会教育委員会初等中等教育小委員会)

14:30〜16:25 <第2部 社会人教育及び専門家の育成> 

 1.放射線取扱主任者・作業環境測定士等の育成     中村美和(日本アイソトープ協会)

 2.技術士の育成                   佐々木聡(日本技術士会原子力・放射線部会)

 3.被ばく医療専門家の育成              立崎英夫 蜂谷みさを(放射線医学総合研究所)

 4.医学物理士の育成                 唐澤久美子(医学物理士認定機構)

 5.海外若手専門家の育成               高野敦子(原子力安全研究協会)

閉会挨拶  主催技術調査専門委員会・幹事        島添健次(東大)

教員向け研修会

公開パネル討論「今やる、放射線教育Ⅲ」」(NPO法人放射線教育フォーラム主催)

 

公開パネル討論「今やる、放射線教育Ⅲ」(開催予告)― 新しい中学校理科教科書による授業づくりについて ―

 

NPO法人放射線教育フォーラムでは、2013年7月より、これまで5回のパネル討論を開催し、全国の実践者とともに、放射線授業のあり方を議論してきています。このパネル討論の6回目が11月に開催されるとのことです。今後の放射線授業のご参考に、参加されてみてはいかがでしょうか。

 

【趣旨】 

現行の中学校教育指導要領に基づく教科書による放射線授業が平成24年度に本格開始され、早や4年目に入った。来年度の教科書更新に合わせて、福島での原子力災害を踏まえた最初の教科書が全国5社からすでに発刊されている。各社とも放射線に関する記述はかなり充実している。そこで、今回の「今やる、放射線教育Ⅲ」では、全国から5名の実践経験者をお招きし、「新しい中学校理科教科書による放射線授業づくり」のパネル討論を実施、授業モデル案を提案する。

 

 

【開催概要】

日時: 2015年11月23日(月・祭日)10:00〜15:30

会場: 東京慈恵会医科大学高木2号館南講堂(東京都港区西新橋3-25-8)

交通: 都営地下鉄三田線の御成門駅から徒歩5分

募集人数: 100名   対象者: 教育関係者、専門家及び一般

参加費: 無料 資料代として1,000円(小・中・高校の先生は無料) 懇親会参加費:1,500円

主催: NPO法人放射線教育フォーラム  共催: 東京慈恵会医科大学アイソトープ実験研究施設

 

【プログラム】

10:00〜10:05 開会挨拶 NPO法人放射線教育フォーラム長谷川理事長

10:05〜12:00 実践報告 (5名、100分)

1.  東京都における中学校の実践事例について

   「意思決定の場面設定によって科学的な思考力を高める授業実践について」

    豊島区立池袋中学校 牧野 崇 主幹教諭

2.  山形市における中学校の実践事例について

    山形大学附属中学校 大沼 康平 教諭

3. 福島県における中学校の実践事例について

   「人と人とのつながりを大切にした放射線授業と郡山市放射線教育推進委員会の

    取り組みについて」

    郡山市立郡山第六中学校 佐々木 清 教諭

4. 大阪府における放射線教育について

    大阪府中学校理科教育研究会 研究委員会 北畑 謙一 中学校教諭

5. 名古屋市における実践事例

    「中学校理科 エネルギー資源(放射線を含む)の指導の在り方についての考察

       - 教員研修と過去の実践報告を基に -」

    名古屋市教育センター 羽澄 大介 指導主事

  座長: 宮川 俊晴(放射線教育フォーラム/日本原燃)

12:00〜13:00 昼食・休憩

12:30〜13:00 展示機材紹介コーナー (30分)

13:00〜13:40 講演「新教科書による授業づくりを考える」 (40分)

       聖光学院中学・高等学校 畠山 正恒 教諭(放射線教育フォーラム)

13:40〜14:00 休憩 (展示機材 紹介 コーナー(20分))

14:00〜15:30 パネル討論 「今やりたい放射線の授業づくりを考える」 (90分)

       実践事例発表者、講演者、会場参加者によるパネル討論

    ファシリテーター: 全国中学校理科教育研究会顧問 高畠 勇二氏

15:30 閉会   16:00 懇親会

 

●参加申し込み等の詳細は、NPO法人放射線教育フォーラムのホームページ http://www.ref.or.jp/ をご覧ください。

教員向け研修会

平成27年度放射線教育フォーラム 第1回勉強会(NPO法人放射線教育フォーラム主催)

 2015年6月21日(日)、東京慈恵会医科大学 高木2号館南講堂において、NPO法人放射線教育フォーラム主催の「2015年度放射線教育フォーラム 第1回勉強会」が開催され、3つの講演と総合討論が行われました。

 

講演①「中高生を対象とした放射線教育の国際的な取り組みと我が国の役割」

● 飯本武志氏(東京大学環境安全本部)

 

 2013年から始まった、国際原子力機関(IAEA)によるアジア・太平洋地区の「中高生のための原子力・科学技術教育プログラム及びツールの開発」について、日本から参画した飯本氏が報告を行った。このプロジェクトは日本、英国、米国などと、原子力エネルギー開発を進める計画のある国々が協働し、中高生を対象とした持続可能な教育プログラムを策定していこうというもので、「The WOW factor(ワオ!と言うような楽しい要素)」をキーワードにした、科学技術・工学・数学(STEM)教育を基盤とした取り組みだと報告。中でも日本は直近の東電福島第一原子力発電所の事故を受けての特別な状況にあり、その経験の共有や会議で紹介した教育ツールなどは高く評価されたとした。実際、フィリピン、インドネシアなど4ヶ国が、簡易測定器「はかるくん」や霧箱の組立キット、放射線副読本(英訳版)、教育用動画集(英字幕版)などを利用した日本提案の試験的プログラムを導入。その様子なども報告された。今後は各国ならではの開発を期待するとともに、知識や経験が豊富でコミュニケーション能力にも優れた専門家の育成が急務だとした。また、IAEAに対しては授業などで使うことのできる小線源のガイドラインの整備などを提言したことを報告。今後も関係者の連携を継続、強化して、前向きに取り組みたいと結んだ。

 

 

講演②「全国の児童生徒を対象とした放射線教育の現状と課題」

● 高畠勇二氏(エネルギー・環境理科教育推進研究所)

 

 2014年度より文部科学省の委託を受け、全国240余りの学校や教育センターで放射線の出前授業や研修会を行っている高畠氏から、その現状と課題について報告があった。まず、全国の中学校理科教員からなる任意研究団体を母体として立ち上げたエネ理研について紹介。福島第一原子力発電所の事故後、科学技術に対する信頼が喪失された今こそ理科教育の充実が必要と考え、活動を展開していると述べた。当初は先生も生徒も「放射線はよくわからないけど怖い」程度の認識だったが、活動を進める中で子どもたちの素直な反応を肌で感じ、成果を実感する一方、教育を担う先生方にはいまだに戸惑いが見られるとした。次に出前授業についての内容を動画を交えながら紹介。中学校では学習指導要領に基づき、2時限のうち1時限目は霧箱の観察などから始めるとし、その際には本来なら戸田式卓上霧箱を用いて自然放射線が飛ぶ様子を見せ、「放射線は福島から」という誤解を払拭し、正しい知識を広めたいとしたが、貸出の条件などから実現は難しいと述べた。放射線教育に関しての課題はまだまだ多いが、中でも教員の資質向上、リーダーの育成は運営面から欠かせないと指摘。最後に、放射線教育で大切なのは、結論を出すことではなく、自分の頭で考え、判断・行動する能力を育てることだと語り、講演を終えた。

 

 

講演③「検定申請された中学校教科用図書における放射線記述の傾向について」

● 畠山正恒氏(聖光学院中学校高等学校)

 

 教育の現場を代表して聖光学院の地学教員である畠山氏から、2016年度から使用される新教科書についての問題提起があった。まず、中学校の理科の教科書のページ数はどの版元も1割程度増え、本文以外の注釈も増えていると報告。その一方で、理科の授業時間数は変わらず、しかも3年生は高校受験優先で時間がとれないと語った。さらに放射線に関する記述も増えたが、3年生最後の単元であり、入試にも出ないことから教員・生徒ともに力が入らないと述べた。理科教科書の根本的な問題として、「なぜ放射線や放射線物質は原子力発電(エネルギー)からしか語られないのか」「教科書が資料集と化し、特に若い先生は内容をこなすだけで大事なものが見えなくなる」と指摘。放射線の記述が教科書に増えたことはチャンスではなく、全体を見渡すと科学教育のピンチとしたうえで、○理科教科書の内容から、科学の学び方を伝える指導法や教材の開発○物理・化学・生物・地学という分野にこだわらず、広く浅く学び、各分野の関連をつかめるような指導法の開発○基礎科学から応用化学への橋渡しをする教材の開発○特に若い先生への物心両面でのサポートなどを進めるべきだと結んだ。

 

 

総合討論

 講演を行った飯本氏、高畠氏、畠山氏が登壇。会場の参加者とともに総合討論が行われた。大人への啓発、現状の教育制度、授業で使う実験ツールの不足などについて意見交換が行われたが、その中でも、「エネルギーはどう考えても100年しかもたない。どこかで科学的にブレイクスルーをしなくてはいけないし、そういう人間を育てる教育が必要だと思う」(高畠氏)、「国際的な放射線教育の展開は、我が国の放射線教育関係者が長年に亘って培ってきたノウハウやツールを海外からの新鮮な目で再評価する機会でもあり、高く評価されたことは関係者の自信につながるはず。時間はかかるかもしれないが日本国内での今後の新たな展開にも期待している。目先の問題は多々あるが、教育はここ1、2年ではなく、百年先までも考え、持続性がなければならない。」(飯本氏)といった意見が印象的だった。

 

教員向け研修会

「放射線教育に関する学習指導案例等」(福島県教育庁)公開のご案内

 

 福島県教育庁では、放射線教育推進支援事業として、「平成26年度 放射線等に関する指導資料 第4版」を7月17日HPに公開しました。なかでも「Ⅳ 放射線教育に関する学習指導案例等」では、放射線教育に悩む先生方には、ワークシート例なども含まれていますので、学習指導にも有効に活用できるものとなっています。是非、参考にされてみてはいかがでしょうか。

[内容]

  はじめに
  Ⅰ 東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故に関する資料
  Ⅱ 放射線等に関する基礎知識
  Ⅲ 放射線等に関する指導についてのQ&A
  Ⅳ 放射線教育に関する学習指導案例等
  Ⅴ 平成26年度指導者養成研修会資料
  Ⅵ 喫緊の課題に取り組むための道徳教育・人権教育の在り方
  Ⅶ 参考文献 ※放射線教育用学習教材(DVD)のナレーション全文
  おわり 等

詳しくは、

福島県教育庁義務教育課のホームページ

http://www.gimu.fks.ed.jp/htdocs/?page_id=30

Ⅳ.放射線教育に関する学習指導案例等

http://www.gimu.fks.ed.jp/htdocs/?action=cabinet_action_main_download&block_id=75&room_id=1&cabinet_id=1&file_id=22&upload_id=192

をご覧ください。

 

教員向け研修会

「放射線・放射能に関連する学習指導用の資料・情報」(学校図書(株))のご案内

 

 教科書や教材・教育機器などでお馴染みの学校図書(株)では、ホームページの中学校理科のコーナーに、放射線に関わる学習指導用の資料・情報を掲出しています。大変わかりすく、また見やすく編集されていますので、学習指導にも、また知識の習得にもお役に立つものと思われます。一度、ご覧になられてみてはいかがでしょうか。

[内容]

 ①放射線とは何か

 ②身のまわりに存在する放射線

 ③放射線の人体への影響

 ④原子力発電と放射線

 ⑤放射線の利用

 ⑥放射線を調べる方法

 ⑦放射線・放射能・放射性物質の発見の歴史

 

詳しくは、学校図書株式会社のホームページ(中学校理科のページ)

( http://www.gakuto.co.jp/hirika/sidousiryo.html )をご覧ください。

 

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