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この10年、福島復興を振り返って ――NPO法人放射線安全フォーラムの公開講座―

 

 NPO法人放射線安全フォーラムは2021年3月28日に市民公開講座「福島復興に向けたこの10年」をオンライン形式で開催した。2011年3月の東日本大震災で起きた原子力発電所の事故から10年。これまでの時を放射線防護の専門家、福島の高校生、農学の専門家、風評被害の研究者がそれぞれ振り返り、今後の復興に寄せる思いを伝えた。

 

■10年という節目に専門家としてあらためて振り返る

 最初の講演者は、放射線防護の専門家の多田順一郎氏(NPO法人放射線安全フォーラム理事)。「専門家の反省」と題して、福島第一原子力発電所事故後の被災地で支援してきた経験を語りながら、放射線防護の専門家として当時どのようにすべきだったのか、これまでを振り返った。

 「福島第一原子力発電所の事故で放射性物質の汚染を受けた被災地では、放射線のために命を失った人も健康を損ねた人もいなかったが、放射線の健康影響への不安が直接・間接に2000人を超える避難関連死を引き起こした。人々の不安の原因は、日本の教育が長らく放射線に関する基礎知識を教えてこなかったことと、放射線防護の関係者が適切でわかりやすい説明をしてこなかったことにある」と多田氏。

 

多田順一郎氏(NPO法人放射線安全フォーラム理事)

 

 これまで放射線防護関係者の説明不足であった以下の項目に関して、歴史的背景に基づいて誤解の理由を説明した。

 

(a) 「どんなに僅かな放射線曝露でも受けた放射線の量に比例してがんや白血病のリスクがある」とするLNTモデル(線形閾値なしモデル)が、科学的結論ではなく、放射線防護の方策を立案するための方便に過ぎないこと

(b)いわゆる「公衆の線量限度の年間1ミリシーベルト」は、公衆にとっての安全と危険の境目ではなく、放射線施設の設置基準に過ぎないこと

(c) 低線量の放射線を受けてもいわゆる遺伝的影響は起きないし、まして、奇形や不妊を引き起こすことがないこと

 

 「事故後、文部科学省は小学生用と中高生用の副読本を刊行して、放射線教育の推進を図ったが、教育現場では、もはや放射線教育への熱意が冷めてしまったように思われる。人々を放射線への過剰な不安から解放するには、児童生徒たちが放射線に関する基礎知識を適切に学べる体制を維持する努力が必要だ」と訴えた。

 

 

■福島の高校生が福島を学び、つなげる

 高校生たちの発表もあった。登場したのは福島県立磐城桜が丘高等学校(福島県いわき市)の生徒3人と指導教諭の石井伸弥氏。「福島で学ぶ福島~高校生と教員の視点から~」という講演タイトルで、生徒たちが「福島探究ゼミ」という授業を通して学んだことを熱心に伝えた。

 

石井伸弥氏(福島県立磐城桜が丘高等学校教諭)

 

 石井教諭は、この授業を実践するにあたって「生徒たちが福島にいるさまざまな立場の人からいろいろな話を聞いて、その中で知識と知識が関わるようになり、人と人とがつながっていくことを実感してほしい」との思いを込めて指導。「生徒には、つなぐことこそが福島の未来をつくると感じてほしい」と期待したという。また、福島の高校生が福島第一原子力発電所事故後の福島を学ぶことで、自分がどんなことに興味を覚えるかなど、自己理解につながる可能性もあると語った。

 

 

■安全な食品でも価格が戻らない

 3番目に登壇したのは、農学が専門の田野井慶太朗氏(NPO法人放射線安全フォーラム理事・東京大学大学院農学生命科学研究科教授)。田野井氏は福島県伊達市や飯館村などで調査活動をしてきた実績を持ち、この日は「農業と食の安全を振り返る」と題して、福島第一原子力発電所事故が起きてから福島県内で食の安全がどのように守られようとしてきたかを話した。

 田野井氏はこれまでを振り返りながら農産物の検査結果について解説。全体的に見れば、多くの食品は安全の基準値をクリアしている。農産物の土壌を介した汚染も限定的だった。しかし、それらの食品は安全にもかかわらず、価格が15~20%減になっているとのこと。

 例えば、福島県の名産の一つである桃の価格は下がったままだという。また福島県の米は食味で高い評価を受けているが、その生産は20%ほど減ってしまい、回復できないでいるという。しかし、福島の特産の一つであるキュウリは、一時的に価格は下がったが、回復して現在では全国平均よりも高くなっているとのことで、同じ特産物でも明暗が分かれている。

 「価格が下がってしまう原因は『福島県産』という要素だけで、その味の良しあしは関係がない。消費者庁の調査を見れば、食品中の放射性物質を念頭に産地を気にする人は、2013年では30%いたが、その後は下がり続けて2018年では15%程度になっている」と田野井氏。実は流通業者が気にして福島県の農産物を避ける傾向があると指摘した。

 また田野井氏は、食の安全を確保するために生産者たちが多大な努力を払っていることにも言及。「事故直後から福島県の農家は『うちの農産物が基準値以上になってしまうと産地全体が出荷停止になる』というプレッシャーを日々感じながら農産物をつくり続けてきた。そのことをもっと理解してほしい」と訴えた。

 

田野井慶太朗氏
(NPO法人放射線安全フォーラム理事・東京大学大学院農学生命科学研究科教授)

 

 

■関心の低さが風評被害を生む

 

 最後の講演者は、社会心理学が専門の関谷直也氏(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター准教授)。「福島における風評被害」というテーマで、これまで実施してきたアンケートやヒアリングの意識調査などを踏まえて、福島第一原子力発電所事故による風評被害の対策ポイントを示した。

 「ある社会問題が報道されることによって、本来『安全』とされるものを人々が危険視し、消費、観光、取引をやめることなどによって引き起こされる経済的被害のことを、風評被害と定義することができる」と関谷氏。風評被害は、もともと原子力損害賠償法などで定義されていない経済被害をどのように補償すべきか議論するための言葉であったが、JCO臨界事故を契機に行政上認められるものとなった。つまり放射性物質による汚染の影響がなかったとしても、食品や商品などに経済的被害が起きることを風評被害として認められるようになったとのこと。

 

関谷直也氏(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター准教授)

 

 その中で食品の風評被害が生じる背景には主に三つの要因があるという。一つ目は、安心や安全を求める人々の心理。二つ目は、マスコミの報道による情報過多の状況。三つ目は代替品の有無。消費者が漠然と不安を感じる食品に対して、代替する食品があると風評被害が生じやすいとのこと。「例えば、米にはさまざまな産地があり、代替性が高い食品。消費者は他の産地の米が同じように買えるので、福島県産の米の価格は回復しないままになってしまいやすい。しかし、キュウリは東京などの卸売り市場で福島県産が主力になるときがあり、代替性が低い食品として価格が早めに回復するという現象が見られた」という。

 関谷氏が実施してきたアンケート調査の結果を分析したところ、福島県産の食品に対する不安がなくなったと回答した人たちの多くは、検査で放射性物質が検出されなくなったという事実を知ったとか、基準値を超えた食品は出荷されないという情報を得たという人でもあった。「食品検査が大きなポイントで、応援や広告などのイメージを用いた対策よりも、検査体制やその結果を事実として伝えていくことのほうが風評被害の対策として有効」と語った。

 

 

■復興の鍵の一つは「伝える」こと

 最後に講演者や参加者を交えたディスカッションとなった。まず座長を務めた高橋浩之氏(NPO法人放射線安全フォーラム理事長・東京大学大学院工学系研究科教授)が、この日の講演では「伝える」ことの重要性が多く語られていたと指摘。福島第一原子力発電所事故後の10年間を振り返ることで「何をどのように伝えるべきだったのか」を考えられるのではないかと問いかけた。

 

高橋浩之氏
(NPO法人放射線安全フォーラム理事長・東京大学大学院工学系研究科教授)

 

 

 放射線防護の専門家である多田氏は「私のような専門家はサイエンスとして正しいことを伝えるということに尽きる」と言い切る。仮に、専門家が正しいと思った選択や判断であっても、後にその間違いに気づいたときには「サイエンスとして正しいことを伝えることが専門家の責任。過ちを改めるにはばかることがあってはならない」と言い添えた。

 磐城桜が丘高等学校の石井氏は、生徒が発表するときは「その発言で傷つく人がいないか」と問いかけているとのこと。それを生徒たちが自ら判断できるようになるためにも、「多くの人に出会って、生徒が自分の考えを行ったり来たりさせながら方向性を見いだす経験が重要になる」と語った。

 農学が専門の田野井氏は、少数の農業従事者の声に耳を傾ける大切さを指摘した。「国民全体に占める農業従事者は1%程度で、どうしても農業従事者以外の99%の意見が強くなりがちだ。食品の安全基準については、厳しい基準値を求める声もあるが、基準値を厳しくすることで生産者の努力やストレスも増える。私は農学の専門家として、サイエンスとして正しいことを伝える一方で、私たちの食べものをつくっている少数の方たちの声にも耳を傾けてほしいと伝えたい」と語った。

 また、風評被害を研究している関谷氏は「検査のあり方やコストについて不合理なところはあると思うが、検査態勢や検査結果を伝えることの重要性は、あくまで人々への意識調査の分析から出てきた結果論であり、私はそこからしか読み解けない知見があると思っている」とのこと。例えば、食品のパッケージや包装に書かれている細かい成分表示について、読む人はほとんどいないが、その表示を見ることで安心を得る人は多いと指摘。「福島県外の人は検査態勢や検査結果のことをよく知らず、ぼんやりとした不安がきっかけとなって消費行動に結びついていく。だからこそ、その不安を低減させることに一番効くと思われる検査の態勢や結果を伝えるということがとても重要になってくる」と説明した。

 

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2020年度 放射線授業事例コンテストの受賞作品一覧を掲載しました

 

2020年度 放射線授業事例コンテストへ沢山のご応募をいただきありがとうございました。

受賞作品が決定しました! 審査結果をご覧ください。

 

2020年度 放射線授業事例コンテスト

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「放射線安全フォーラム 市民公開講座」開催のお知らせ

 

令和3年3月(情報提供:NPO法人放射線安全フォーラム)

 

2021年3月28日(日) に開催される放射線安全フォーラム 市民公開講座のお知らせです。概要は以下のとおりです。

 

【開催趣旨】

 東京電力福島第一原子力発電所事故から10年が経ちます。 この事故は、直接的な影響としての環境汚染、経済的損失だけではなく、政府及び専門家への不信感、コミュニティの分断、風評被害、さらなる過疎化・高齢化の進行など、多くの問題を社会にもたらしました。 これらの問題へ対処するために、この10年間、福島復興・再生にむけた多くの努力がなされました。 たとえば、環境モニタリング、除染、インフラ整備などが行われ、空間放射線量率の低下や、一部避難指示解除、JR常磐線の全線開通、商業・教育施設開設などが実現できました。
 一方、食品モニタリング、セミナー、PR活動などを通じて、福島県産品流通のための風評払拭の努力もなされました。 セシウムの取込抑制を配慮した計画的な栽培がなされ、現在では福島県産の食品摂取に伴う線量は低いレベルに抑えられております。 しかしながら、一部品目は、全国市場との価格差がある、出荷量が完全に回復していない、また輸入規制も継続している国もあります。  東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取組についても、4号機の燃料取り出し、高濃度汚染水の浄化処理等のように廃炉が進んでいる一方、原子炉から溶け落ちた核燃料の取り出し作業、ALPS処理水の取り扱いなどの課題も残っております。 その他、産業基盤の回復、フレコンバッグに入った除去土壌の扱い、帰還困難区域の解除など復興へ向けて多くの課題を解決していく必要があります。
 今回の市民公開講座では、原子力・放射線や農学などの基礎について学ぶと共に、東京電力福島第一原子力発電所事故からの10年間の取り組みを振り返り、当時の対応や福島復興における反省点も踏まえ、今後、専門家への信頼回復も含めて、どのような取り組みが必要かについて考える機会としたいと考えています。
 どうか多くの皆様方のご参加をお待ちしております。

 

【開催概要】

テーマ : 「福島復興に向けたこの10年」
日 時 : 2021年3月28日(日) 13:00 – 16:30
会 場 : オンライン(ZOOM)による開催
      お申込みいただいた方に開催URLをお送りします
定 員 : 100名
参加費 : 無料
申込期限 : 2021年3月22日(月) 17:00

 

【参加申込・詳細】

NPO法人放射線安全フォーラムの開催案内(https://www.rsf.or.jp/extension210328.html)をご覧ください。

 

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放射線教育授業実践事例46:福島県本宮市立白岩小学校

 

教科横断型の放射線教育を実践
=知識を活用できる力を育む=

 

 令和2年10月23日、福島県の本宮市立白岩小学校で放射線教育の実践事例が紹介された。当日は1年生と4年生のクラスの授業が公開され、単なる知識の獲得で終わらせない、子どもたちの知識の活用力を育もうとする、同校の取り組みの一端が披露された。

 

【白岩小学校】

 明治6年創立の伝統校。所在地の本宮市は福島県中通り中部に位置する。この地では古くから「珪石」(けいせき)」と呼ばれる白い石が多く産出され、そこから小学校に「白岩」の名が付けられた。教育目標は「かしこく、たくましく、共によりよく生きる白岩の子」。令和元年度から福島県教育委員会の「地域と共に創る放射線・防災教育推進事業」における放射線教育実践協力校の指定を受けている。2年目となる令和2年度では、「安全・安心な社会づくりに貢献できるこころ豊かな子どもの育成」を研究主題に設定。児童が学び得た知識・技能・物事の考え方などを自ら意思決定して、今後に生かせるように指導している。

 

■防災教育の中で放射線を学ぶ

 白岩小学校では、令和元年度に放射線教育実践協力校に指定される前から、全ての学年において継続的に放射線を学べる機会を設けてきたという。鈴木茂校長は放射線教育の意義について、「広島県民や長崎県民が原子爆弾に基づく平和教育の推進を責務としているのと同じように、福島県民は原子力発電所の事故を教訓としなければならない。学校教育として、放射線教育を推進していく必要がある」と語る。

 放射線の特性や有効利用、危険性などの知識のほか、危険回避や事故対応への技能の理解を深める学習も実践しているとのこと。さらに、原子力発電所の事故によって困っている人に対する思いやりや、風評被害を乗り越えてきたふるさとに対する誇りを学ぶ機会も意識的につくってきたという。

 ただ、放射線教育を単体で展開する中で、その知識を原子力発電所などの事故と結び付けるのは小学生にとって難しいところがあるとも感じてきたとのこと。「防災教育の中に放射線教育を位置付けることによって、子どもたちが抵抗なく放射線の学びに入っていけるようになるのではないかと考えています。その中に、放射線の有効活用や代替エネルギーの開発といった未来志向の議論など発展的な学習内容や活動も含めて計画したい」と鈴木校長。

 

今回は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点からオンラインによる発表となった。鈴木校長も校長室からオンラインで関係者や参観者にあいさつした。

 

■何ができるようになるのか

 研修主任の髙野舞子先生の話によれば、放射線教育実践協力校に指定された1年目は「教師が何を教えるかという視点が強くなり、知識・技能の習得にとどまってしまった」という。そこで2年目は、「資質・能力の育成」と「活用」に重点を置く方針に転換。「何ができるようになるのか」を意識して、これまでに身に付けた知識や技能を土台に、それらを活用していくことができる力の育成を目指してきたとのこと。

 各学年の授業では、学級活動を要として、社会科や道徳科、総合的な学習の時間などでも放射線を取り上げ、横断的な学びを展開。例えば、昨年度に学んだ放射線や原子力発電所の事故の知識を生かしながら、道徳科などで新型コロナウイルスの感染拡大の中でどのように行動すればいいかを考えたり、感染者の多い地域から帰省した人が差別された例について学び、なぜそのような差別が起きるのかを応用的に考えたりする授業をしたという。放射線教育の取り組みの成果を今後も生かすため、防災教育や道徳教育など他の「○○教育」や教科を横断的に関連させた「放射線教育年間指導計画」も作成している。

 

 白岩小学校では、放射線教育を中心にして関連する「○○教育」の位置付けを整理。上図は4年生の場合。(クリックすると図を拡大することができます。)

 

■放射線について「わかった!」ことを活用してクイズに

 1年生の教室では、学級活動の1コマとして「がっこうくいずたいかいをひらこう」(学校クイズ大会を開こう)という催しが開かれた。それまでに学校について調べたことなどを、3グループに分かれてクイズとして出題。他のグループの児童や参観の保護者が答えていく。グループごとにテーマがあり、そのうちの1つが放射線に関するものだった。

 放射線グループの1問目は「放射線は目で見ることができる? ○か×か」という問題。保護者も含めて全員が「×」に手をあげた。正解を告げられると、子どもたちは「イエーイ」と手をたたいて大喜びだった。続けて、「放射線は体を通り抜けることができる?」や「放射線を少しの量でも浴びると体に悪い影響がある?」という健康に関する質問。友達同士で話し合って○か×を検討。正答する度に喜びを体全体で表現していた。

 また、出題した子どもたちは、単に答えを言うだけでなく、「放射線を目で見ることはできません。音や匂いもしないそうです。見えないし、音もないのに、どうやってわかるのかなと、とても不思議だと思いました」とか、「放射線は体を通り抜けるけれど、悪いこともするそうで、気を付けなくてはならないと思いました」などと、自分の思いや考えをセットにして放射線の知識を解説していた。

 

1年生の授業「学校クイズ大会」。放射線に関するクイズもたくさん出た。

 

 給食で出される食材の放射能検査についてのクイズもあった。この問題の作成には、学校で毎回測定している放射能測定員に取材したという。その他、「モニタリングポスト」「除染」などの専門的な言葉を使って出題したり解説したり、ときには保護者の回答が割れる難問もあったりなど、小学1年生のクイズとは思えないレベルで大人も楽しめる内容になっていた。感想を求められた保護者の一人は「小学1年生の皆さんから放射線のことをクイズ形式で出してもらって、しかも解説もきちんとしていて『すごいな!』と感心しました」などと高く評価。子どもたちは満面の笑みを浮かべていた。

 担任の安藤絵美先生によれば、この学級活動で保護者を招いてクイズ大会を開こうとなったとき、子どもたちの方から放射線を取りあげたいという声が出たという。学級活動や生活科などいろいろな場面で放射線を学んでいく中で、「何も知らなかった放射線のことが『わかった』といううれしさとなり、それがクイズにして出したいという気持ちにつながったのではないかと思います」とのことだった。確かに子どもたちは知識を活用して、出題し解説できていた。

 

■学んだ知識や技能を災害時に生かせる力に

 4年生の教室では社会科の授業が公開された。「自然災害からくらしを守る」という単元の1コマで、その中で放射線について考える機会もうまくつくりだしていた。授業は、まずそれまでの学習を振り返ることから始まり、1年前の「令和元年東日本台風」がもたらした市内の水害の写真を見たりしながら、すでに学んだ地震の備えの重要さを確認。次に、原子力発電所の事故のときに役立つ避難グッズについてクラスで考えた。

 それまでの学びで得た知識から、「救急セット」「タオル」「レインコート」「ウエットティッシュ」「非常食」「水」「ブランケット」「笛」などの避難グッズが出た。担任の髙野舞子先生は選んだ理由もていねいに聞いていく。「レインコートは、放射性物質から身を守るために必要」など、子どもたちはこれまでに得た知識を根拠に説明し、防災グッズを選んでいた。

 

4年生の社会科の授業。正しい情報や知識に基づく行動の重要性にも自ら気付いた。

 

 高野先生が「これだけ避難グッズがあれば災害が起きても大丈夫だよね?」と、さらなる気付きを促すように質問を投げかける。すぐに「いいえ」「だめです」との声があがり、「正しい情報を手に入れるためにはラジオが必要」「普段からどんなことが起きるかを考えておく」など災害への備えについて指摘した。また、「自助、互助、共助、公助」という言葉や、放射線の知識の必要性に関わる話も出た。災害発生時はグッズの備えだけでなく、混乱状態では信頼できる情報や正しい知識に基づく行動も大切であると、自ら考えて気づくことができたようだった。

 担任の髙野舞子先生によれば、今年度は、特に定着が不十分だった放射線の性質や利活用について専門家を招いた講義や実験のほか、国語(戦争の物語)や社会(災害)、総合的な学習の時間(福島の復興)でも意識して取り上げるようにしてきたとのこと。「繰り返し、繰り返し、授業などで少しずつ種をまいていくことで、身に付けた知識や技能をいろんな場面で活用できるようになると実感しています」と高野先生。

 

放射線を学ぶきっかけの1つとして、廊下に放射線クイズが掲示されている。

 

■放射線教育で先生たちも教える力を高める

 鈴木校長は、放射線教育を実践するにあたって、特にカリキュラム・マネジメントに力を入れてきたという。放射線の知識・技能を習得して、自らの生活をより良くしていく実践的な態度を身に付けるなどの活用・探求につなげられるように、教育計画の改善を図り、特定の教科や学級活動などに限定することなく、横断的に放射線を関連付ける授業を進めてきたとのこと。特に、昨年度までの学びを活用する場面を意図的に設けるようにしてきたという。

 放射線教育に取り組むと、それを切り口にすることで、全体のカリキュラムの改善策を探ることができると鈴木校長。「今年度、新しい学習指導要領が小学校において全面実施となり、教員1人ひとりが広い視野と創造性をもって教育課程を編成する能力を高めていくことが一層求められるようになりました。放射線教育でなければできないわけではありませんが、1つの『○○教育』に、他の『○○教育』や各教科等の指導を関連付けると、より深められるということを経験的に学べる機会となると思います。この経験を自校の教育課程の編成や、放射線教育以外の教育計画を立案するときなどに役立たせることで、より充実した教育を児童に提供できるようにしたいと考えています」と今後の抱負を語った。

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放射線教材コンテストがFMラジオ番組で紹介されました。

 

令和3年2月(情報提供:復興庁)


当財団主催「放射線教材コンテスト」の入賞作品とその発表会の模様がFMラジオ番組「Hand in Hand」(TOKYO FM)で紹介されました。


[放送日時及び放送局]
・TOKYO FM 2月20日(土)AM 8:00~8:25
・ふくしまFM 2月21日(日)AM 9:30~9:55 他

番組を聴き逃した方は、ラジオ番組を無料で聴くことができるアプリ「radiko」のタイムフリーでお聴きください。
※タイムフリーは、過去1週間以内に放送された番組を後から聴くことのできる機能です。


復興庁HP「福島の今」では、放送の概要を動画などで紹介しています。是非ご覧下さい。
復興庁HP「福島の今」:https://www.fukko-pr.reconstruction.go.jp/2018/fukushimanoima/reports/report-24/

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“らでぃ”事務局電話応対休止のお知らせ

 

新型コロナウイルス感染症の国内発生状況や感染予防と安全確保の観点から、当面の間らでぃ事務局ではお電話による応対を休止させていただきます。お問い合わせにつきましてはメールフォームをご利用ください。お時間をいただきますがお返事いたします。

 

 

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2020年度放射線教材コンテスト「発表会」(オンライン)開催のお知らせ

 

 2020年度放射線教材コンテスト「発表会」は、コロナ禍のためオンラインにて開催することを決定いたしました。
 受賞した作品は、新学習指導要領での取扱いをはじめ、教育現場における放射線教育を取り巻く現状を鑑み、大学生等が意欲的に取り組んだ作品ばかりです。
 2020年度放射線教材コンテストの概要、受賞結果等については、こちらをご参照ください。
 皆様方におかれましては、年末のお忙しい最中とは存じますが、本コンテスト「発表会」を当日オンラインにて視聴いただき、今後の授業の参考として、さらには熱心に取り組んだ大学生等に応援をいただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 日  時:2020年12月27日(日) 13:30~15:30
 対  象:教職員、放射線教育に携わっている方であれば誰でも参加いただけます。
 視聴方法:Zoomウェビナーを用いたLive形式
 申込方法:1.お名前
      2.ご所属
      3.メールアドレス
      4.「個人情報のお取り扱いについて同意いたします」と明記の上
        radi-info@jsf.or.jp までメールをお送りください。
        後日、Zoomウェビナーの参加用URLをメール送信させていただきます。
        ※個人情報の取扱いについては、当財団ホームページをご参照ください。
        http://www2.jsf.or.jp/00_info/policy2.html

 

 参 加 賞:Amazonギフト券 1,000円(先着100名)
     ※開催当日、実際に発表会を視聴いただき、アンケートに回答いただける方限定とさせていただきます。

 

 問い合わせ先:公益財団法人 日本科学技術振興財団 人財育成部 放射線教材コンテスト係
        TEL. 03(3212)8504 FAX. 03(3212)8596 MAIL. radi-info@jsf.or.jp

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2020年度 放射線教材コンテストの受賞作品一覧を掲載しました

 

2020年度 放射線教材コンテストへ沢山のご応募をいただきありがとうございました。

受賞作品が決定しました! 審査結果をご覧ください。

 

2020年度 放射線教材コンテスト

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放射線影響協会が「放射線の影響がわかる本」の改訂版を公開しました

 

令和2年10月(情報提供:放射線影響協会)

 

 放射線影響協会(佐々木康人理事長)は、放射線や健康への影響を解説した「放射線の影響がわかる本」の改訂版を作成・ホームページで公開いたしました。

 放射線影響協会は、昭和35年(1960年)に財団法人として設立され、平成24年(2012年)に公益財団法人に移行し、本年9月で設立60周年を迎えました。協会は放射線影響等に関する知識の普及や調査研究、放射線業務従事者の被ばく線量登録管理事業や低線量放射線による人体への影響に関する疫学的調査などの活動を行ってきています。今般、設立60周年記念事業の一環で改訂版を公開いたしました。

 「放射線の影響がわかる本」は平成8年に発行されて以降、平成12年(2000年)に増補改定を行いました。平成23年(2011年)3月に発生した福島第一原子力発電所事故以降、放射線の健康影響への人々の関心が高まり、放射線・放射能に関する解説書が数多く出版されてきました。こうした背景を踏まえ、本書を新たに改訂し、公開したものです。

 放射線影響の研究は、近年、細胞や遺伝子の研究の発展に伴って生命の設計図と言われるDNAの研究が進展し、放射線によって傷つけられたDNAの修復や突然変異のメカニズムが徐々に明らかになってきています。また、放射線の影響と「がん」は切り離せない関係にありますが、「がん」についての研究は、遺伝子解析技術の発展に伴って飛躍的に進歩しています。

 今回の改訂では、こうした放射線影響やがんについての最新の研究成果を取り入れて、放射線影響についてこれまでに分かってきたことをできるだけ平易な言葉で紹介することとしました。

 本書は、第1章と第2章で放射線の正体や身の回りの放射線から受けるさまざまな被ばくについて、第3章から第7章で細胞や人体への放射線の影響、がんとは何か、がんはどのようにしてできるのか、がんや遺伝・妊娠・出産と放射線との関係について紹介し、第8章では第1章から第7章までの内容を要約して放射線影響について科学的に分かっていることをまとめました。第9章では放射線の利用と管理の現場における放射線防護の考え方を紹介し、第10章では放射線被ばく事故の事例を紹介しています。

 

今回の改訂では、より多く方々に読んでいただけるように、協会のホームページ上で公開する形を取りました。
http://www.rea.or.jp/wakaruhon/kaitei2020/wakaruhon_main_.html
本書が放射線の影響について、みなさまの理解をさらに深めていただくことにお役に立てれば幸いです。

 

公益財団法人 放射線影響協会
http://www.rea.or.jp/

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「みんなのくらしと放射線展(WEB開催)」のお知らせ

 

令和2年10月(情報提供:大阪府立大学)

 

【開催趣旨】

 毎年、夏休み親子イベントとして37年間にわたり開催している「みんなのくらしと放射線展」(主催:「みんなのくらしと放射線」知識普及実行委員会)を、今年はWEB上で開催しています。
 くらしの中の身近で役立っている放射線について、アルファ線、ベータ線といった線種にちなんだキャラクターが紹介します。
 「放射線キャラ診断」などゲーム感覚で放射線の種類を学べたり、「あなたに身近な放射線をさがせ!ゲーム」など大人から子供まで楽しく放射線について学べたりできるサイトとなっています。
 今ならサイト訪問の上、アンケートに答えていただくと、抽選でオリジナルキャラクター入りのグッズをプレゼントさせていただきます。
ぜひご覧ください。

 

 

詳細はこちら
https://housyasen-fukyu.com/event/

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「授業に活かせる放射線教育研修会【教員対象】」のお知らせ

 

令和2年10月(情報提供:関西原子力懇談会)

 

【開催趣旨】

 近畿大学原子力研究所と関西原子力懇談会の共催で毎年実施しています放射線教育研修会を、今年はオンラインで開催いたします。(zoom)

 近畿大学が保有する教育研究用原子炉(熱出力1W)の運転実習などを通じて、放射線教育にお役立ていただくことを目的として実施しているものです。

 カメラワークを駆使した原子炉映像の配信など、オンラインならではの臨場感ある研修会として、

 既に大学生向けにも実施し、好評を博している研修会です。

 例年2日間にわたって近畿大学の先生方からみっちり講義と実験が行われますが、今年は事前(事後)に教材を視聴いただき、オンライン研修会では原子炉運転・臨界実験等の視聴を中心に質疑応答も含め双方向での開催を予定しています。

 お誘いあわせのうえ多数のお申込みをお待ちしています。

 

【開催概要】

日 時: 第1回目 2020年11月 8日(日)10:30 ~ 16:45 <申込締め切り11月4日(水)>
     第2回目 2020年12月13日(日)10:30 ~ 16:45 <申込締め切り12月9日(水)>
     ※両日とも研修内容は同じです。

対 象: 小学校・中学校・高等学校等教員
     ※理科担当の教員以外の方、教員志望の学生や指導される先生のご参加も受付しています。

定 員: 50名/回 ※先着順

参加費: 無料

 

詳細・お申込みはこちら
http://www.kangenkon.org/kenshu/

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2020年度 放射線教材コンテストの追加募集を開始しました

 

2020年度 放射線教材コンテスト の追加募集を開始しました。締め切りは10月25日(日)です。

 

https://www.radi-edu.jp/contest

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2020年度 放射線教材コンテストの募集を開始しました

 

2020年度 放射線教材コンテスト の募集を開始しました。

 

https://www.radi-edu.jp/contest

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最優秀賞はWEBカメラを使って放射線を検出 ―2019年度 放射線教材コンテスト(2)―

 

 学生たちの熱のこもったプレゼンテーションがすべて終わると、審査員たちは別室に入り、すぐに審査が始まった。エントリーされた86作品の中で最優秀賞に選ばれたのは、九州大学大学院総合理工学府筑紫キャンパス(渡辺・金研究室)の大学院生が開発した教材「Webカメラを用いた放射線検出器の開発」だった。また優秀賞には、首都大学東京(現・東京都立大学)の学生たちが開発した教材「放射線を目で見てみよう」が選ばれた。どちらの教材もその画期性と波及効果の可能性の高さが多くの審査員に評価された。

 

■科学の面白さを感じるきっかけになれば

 午前9時30分から始まったコンテストは、昼までに全8チームのプレゼンテーションが終わった。別室での非公開の審査を経て、午後1時30分から表彰式がスタート。最優秀賞に選ばれたのは、九州大学大学院の学生たちの作品「Webカメラを用いた放射線検出器の開発」だった。応募代表者の佐藤光流さんが笑顔で賞状を受け取った。

 表彰式の後に感想を聞いた。佐藤さんは「放射線教育の教材として認められたことが何よりもうれしいです」と語った。一緒に開発してきた中野敬太さんは「この教材を通して、放射線に興味を持ったり、科学の面白さを感じるきっかけになったりしてくれたらうれしいですね」とコメント。同じく開発に携わった青木勝海さんは「高校生たちに、放射線を使った医療機器などの裏側には放射線計測などの工学の知識がたくさんあって、それをこの教材を通して少しでも知ってもらえたらと思っています。そしてその理解が広がることこそ福島の課題解決にもつながっていくと信じています」と、この教材に込めた思いを打ち明けた。

 

■自分たちの研究の面白さを伝えたい

 この九州大学大学院のチームが開発した教材は、2,000円ほどで売られているウェブカメラを学習者が自ら購入して分解し、その中にあるイメージングセンサーを利用して放射線を検出できるように改造していくというもの。そのデータをパソコンに取り入れ、この大学院生らが独自に作成したソフトウエアをダウンロードすると、数値化したり映像化したりできるようになっている。

 「もともとは、私たちの研究室を訪れる学部生や高校生に向けて、研究内容を伝えるために開発したものです。この自作ウェブカメラのノウハウとソフトウエアを提供すれば高校生用の教材にできると思い付きました。自分でつくれば、どうして検出できるようになるのか、原理がわかって放射線の理解が深まります。また、この検出器をつくって、私たちが提供するソフトウエアを使えば、高校生でもさまざまな実験ができるようになります」と、応募代表者の佐藤光流さんが笑顔で話してくれた。高校生たちは、分解・改造することに強い興味を示して熱心に取り組むことが多いという。

 6年ほど前から研究室の学生たちが自主的に開発し、先輩から後輩へと受け継がれ、バージョンアップを重ねてきたとのこと。特に、高校生や学部生が面白がってくれるように、ソフトウエアの機能を追加してきたという。「例えば、検出のカウント数を線量率に変換できるようにしました。その関係式を求めるために、わざわざ実験したりしました」と佐藤さん。中野さんも、先輩の開発した機能を活用して、鉛が放射線を遮蔽(しゃへい)する様子をイメージングできるようにしたという。「私たち3人以外にも、研究室の指導教員や学生たちが代々受け継いできたからこそ、ここまでつくりあげることができました」と青木さん。

 自分たちの研究や学んだことを伝えたいという熱意が、あの教材を生み出した。高校生たちは、検出器を自作していると、だんだんと放射線に興味を持っていくという。そんな感想をもらえると「とてもうれしくなります」と3人は語った。

 

 

最優秀賞を受賞した九州大学大学院の3人。左から中野敬太さん、佐藤光流さん、青木勝海さん

 

 

 

最優秀賞に選ばれた九州大学大学院の学生たちが開発した放射線検出器(左)

2,000円ほどのウェブカメラを学習が自ら改造して自作する(右)

 

 

■見えないものをどう見せるか

 優秀賞は、首都大学東京(現・東京都立大学)の学生たちの教材「放射線を目で見てみよう」となった。拡張現実(AR)を活用して、水や厚紙、鉛などさまざまな防護材が放射線をどれほど遮蔽(しゃへい)するかを擬似的に見せる教材を開発。放射線の種類もすぐに変えることができ、学習者は基本的な性質を短時間で体験的に学ぶことができる。

 応募代表者の西谷昌人さんは「中高生が見えない放射線を学ぶとき、どうすれば理解しやすくなるか。そのことをみんなで話し合って、可視化すればいいのではないかと思い至ったんです。以前、大学の授業でレントゲンを使う機会があって、ARを用いてエックス線をきちんと照射できているかを確かめたんですね。このやり方が教材にも使えるはずだと思いつきました」。審査員からは「身近ないろいろなものもバーチャルで見えるようにしてほしい。そうすれば、子どもたちが『ここからも放射線が出ているのだろうか』と疑問に感じながら調べられる」とコメントしていた。

 

 

優秀賞を受賞した首都大学東京(現・東京都立大学)の4人。左から廣岡佑弥さん、岡本眞璃さん、西谷昌人さん、吉田杏香さん

 

 

 

 

■教育的な波及効果が期待できると高評価

 コンテスト実行委員長の鈴木崇彦教授は、受賞した教材について次のように語った。「最優秀賞、優秀賞に選ばれた教材は、どの委員も高い評価をしていました。教育的な波及効果を期待できるものでした。『あれを測ってみよう』『これは放射線が出ているのだろうか』と実験がいろいろできる。そんな活動の中で、放射線に対する興味を深めたり、新たな不思議を見つけたりできるかもしれない。そんな可能性があることも高評価につながりました」

 また、今回のコンテストにゲームが多かったことについて、「それは、どのような教材なら学校で放射線教育が広められるかという観点や、教育現場でのアクティブラーニングで使える道具や教材が求められている現状を踏まえたのだと思います。どの教材も、とても良かったと思います」と評価。今後に向けては「放射線の人体影響を学べる教材がもっと出てきてほしいと願っています。多くの人にとって、放射線に対する関心は人体影響に関わるところにあります。生物から放射線を見るような教材をもっと開発してほしいですね」と期待した。

 

 

【2019年度 放射線教材コンテスト 受賞一覧】

 

<最優秀賞>
「Webカメラを用いた放射線検出器の開発」
九州大学大学院
佐藤光流、中野敬太 青木勝海
<優秀賞>
「放射線を目で見てみよう」
首都大学東京
西谷昌人、吉田杏香、岡本眞璃、廣岡佑弥
<全国中学校理科教育研究会特別賞>
「身近な地下水に含まれるラドンを調べよう」
東京学芸大学
岡田志織、小林郁巳
<日本理化学協会特別賞>
「ゲームで楽しく放射線防護「距離」の概念を導入する教育教材・演習法」
弘前大学
千葉 咲楽
<ディスカバリー・ジャパン特別賞>
「放射線による人体への影響を学べるコロコロクラッシャー」
帝京大学
鈴木晴菜、小山菜緒、齋藤しおり、榎本弥桜、江原芙美、尾高希咲、串田佳優、須永彩花、宮前琴葉
<放射線教育支援サイト“らでぃ”特別賞>
「デイラジ(daily radi)」
純真学園大学
長尾優花
<入選>
「ラジエーションカード~見えているものだけが世界の全てではない~」
鹿児島医療技術専門学校
有田実華、安山奈々穂、池田采音、田中里奈
「『ビーム・フセーゲル』でストップ放射線!」
帝京大学
渡邉拓也、田部井紀佳、中川 凌、日野俊平
「模型でわかる!放射線の発生原理」
茨城工業高等専門学校
石川桃子、川上舞子
「ペルチェ素子を用いた霧箱の作製」
愛媛大学大学院
宮内滉平、坪根虎汰

 

自作に工夫、学校でも使えるアイデア教材 ―2019年度 放射線教材コンテスト(1)―

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自作に工夫、学校でも使えるアイデア教材 ―2019年度 放射線教材コンテスト(1)―

 

 全国の大学生が放射線教育用のオリジナル教材をつくって競い合う「放射線教材コンテスト」(主催・公益財団法人日本科学技術振興財団)が、2020年3月15日、科学技術館(東京都千代田区北の丸公園)で開催された。ボードゲームや最新の拡張現実(AR)など、さまざまなアイテムや技術を用いて制作したアイデアいっぱいの教材について、学生たちはプレゼンテーションに懸命だった。

 

 

新型コロナウイルス感染症対策をとりながら開催された「放射線教材コンテスト」。

 

 

■全国から86作品がエントリー

 「放射線教材コンテスト」は、放射線の関連分野を専攻する専門学校生、大学生、大学院生が学校で学んだ知識を活用し、小・中・高校生向けに放射線教育の教材をつくり出して優秀作を競い合うというもの。

 前回は、入選者が児童や生徒の前で自作の教材を実演しながら、審査員が同時に評価をした。しかし、今回は新型コロナウイルス対策で、児童や生徒に演示することはせず、出場は審査員に対してプレゼンテーションをする形となった。

 エントリーしたのは86作品。その中から選ばれた8作品が、この日の決勝コンテストに臨んだ。北は弘前大学、南は鹿児島医療技術専門学校と、全国から多彩な顔ぶれが並んだ。

 

教材名 応募代表者名
(敬称略)
学校名
Webカメラを用いた放射線検出器の開発 佐藤 光流 九州大学大学院
ゲームで楽しく放射線防護「距離」の概念を導入する教育教材・演習法 千葉 咲楽 弘前大学
デイラジ(daily radi) 長尾 優花 純真学園大学
「ビーム・フセーゲル」でストップ放射線! 渡邉 拓也 帝京大学
放射線による人体への影響を学べるコロコロクラッシャー 鈴木 晴菜 帝京大学
放射線を目で見てみよう 西谷 昌人 首都大学東京
身近な地下水に含まれるラドンを調べよう 岡田 志織 東京学芸大学
ラジエーションカード~見えているものだけが世界の全てではない~ 有田 実華 鹿児島医療技術専門学校

 

 

■知っているゲームを生かし、親しみやすく

 コンテストで目立ったのは、ゲームの要素を取り入れた教材。遊び感覚で楽しむうちに、放射線の知識を自然に身に付けられると、制作した学生たちはアピールしていた。

 純真学園大学で放射線技術を学んでいる長尾優花さんは、ロングセラーのボードゲーム『人生ゲーム』をまねた放射線教育用の教材をつくった。プレーヤーがサイコロの出た目の数に従って自分のこまを進めていくと、止まったマスの中には日常で想定される生活シーンが書かれていて、そこで浴びる放射線の量に応じて「0.1mSv」「0.5mSv」「10mSv」と書かれた札を受け取っていく。例えば「幼い頃からの夢である、キャビンアテンダントになる。1年間で5mSv受ける」などと書かれていて、札を受け取ったり、ときには返したりする。

 制作者の長尾さんは、このボードゲームに『デイラジ(daily radi)』という名前を付けた。放射線を普段の暮らしで実感できる機会は少ないが、このゲームでプレイすれば日常生活のいろいろなところに放射線があるとわかる。「この教材は、子どもの面倒を見るアルバイトをしているときに思い付きました。子どもたちが楽しそうに『人生ゲーム』をしていたんです。この有名なゲームと同じつくりにしたら、子どもたちはルールを知っているのですぐにプレイできるし、放射線の難しいイメージも払拭できると思いました」と語っていた。

 そのほか、絵柄と文字の説明で放射線や元素などを学べるカードゲームをつくったチーム(鹿児島医療技術専門学校)や、4マスと16マスのボードを使った数当てゲームをすることで放射線防護の「距離」の効果を体験的に学習できる教材をつくったチーム(弘前大学)もあった。

 

 

人生ゲームのように遊んで放射線を学ぶ『デイラジ(daily radi)』。

 

 

■今までにない発想で教材をつくる

 東京学芸大学のチームは、地下水に含まれる放射性物質ラドンを気相に追い出して量を調べる実験方法を開発。ペットボトルと活性炭の入ったタバコフィルターなど、手に入りやすいものを活用して、中学生や高校生でも簡単に取り組める本格的な実験ノウハウを紹介した。

 帝京大学のチームは、放射線の人体影響をゲームで学べる教材『コロコロクラッシャー』を開発。台の上からボールを転がしてピンを倒すボーリングゲームで、ボールを放射線、プラスチック製のピンを人体に見立て、台を高くして傾斜をきつくすると、倒れるピンの数が増え、放射線のエネルギーによって人体に与える影響が異なることに自然と理解できるように設計されている。また、ピンの中には、がん細胞に見立てたピンも混ぜておき、ボールがこのピンを倒せばがん細胞が生まれてしまうというルールも設定。放射線の確率的影響についても考えさせられる工夫もしていた。

 帝京大学の別のチームは、市販のボードゲームを基本的にそのまま活用し、ルールだけを変えて教材に仕立て直した。『コリドール』というフランス生まれのボードゲームを使い、ルールを変更して、放射線に見立てた球から出るエックス線・アルファ線・中性子線に対して、鉛・水・紙になぞらえた遮蔽(しゃへい)板を使って防護しながら、自分のこまを進めていく。ゲームをしながらこのルールを覚えていけば、放射線の基礎知識を身に付けられる。プレゼンテーションの後の質疑応答では、審査員の一人は「子どもがまずこのゲームに取り組めば、どうしてエックス線を遮蔽(しゃへい)するには紙ではなく鉛でなければならないのか理解できるはず。その後の学習効果が高まるはずだ」と評価した。

 

 

ボーリングゲームで放射線の人体影響について学ぶ(「コロコロクラッシャー」)。

 

 

 

最優秀賞はWEBカメラを使って放射線を検出 ―2019年度 放射線教材コンテスト(2)―

 

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「令和2年度における教科書展示会」のお知らせ

 
令和2年度における教科書展示会が6月12日からの14日間を中心として、全国で開催されます。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/tenji/1414329_00001.htm

開催期間、展示される教科書等は、各教育委員会のホームページにてご確認ください。

なお、各都道府県の会場一覧は以下を参照ください。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/tenji/1359114.htm
(2020.6.12更新)

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放射線教育授業実践事例45:福島県南相馬市立太田小学校

 

当時と比べて「今の自分たち」を発信へ!
 =放射線や風評被害を学び地域の一員になる=

 

 福島第一原子力発電所事故があったとき、自分たちの住む地域で何があったのか。当時を知り、今に続く風評被害を理解し、それを解消するために自分は何ができるかを考えて取り組み、“自分ごと”として発信していく。そんな放射線教育の授業が福島県の南相馬市立太田小学校で実施されている。2019年11月、その授業の一コマが公開された。保護者や県内外の人たちが、南相馬の子どもたちを育てようと協力していた。

 

 

 創立は明治6年。田園風景の広がるのどかな農村地帯に建つ。校舎の裏に太田川が静かに流れ、そばには「相馬野馬追」で有名な太田神社がある。2011年の福島第一原子力発電所事故の影響で一時的に閉ざされ、134名の児童がこの学校を離れて学習することになった。2012年1月、避難指示が解除されて再開。現在の児童数は約50名。小規模・少人数であることを利点とした学校教育を進め、「進んで学ぶ子ども」「思いやりのある子ども」「たくましい子ども」の育成を目指している。

 

南相馬市立太田小学校

 

■今が「普通」で風評被害がわからない―高田昌幸校長

「福島第一原子力発電所事故の日が遠くなるほどに、小学生たちの記憶は少なくなっていきます。東北地方太平洋沖地震や福島第一原子力発電所事故が発生したとき、今の小学生は生まれたばかりか、まだ生まれていませんでした。福島県内でも、小学生にとって当時の様子や、その後に起きたことをほとんど知らないんですね。南相馬市の小学生たちも同様で、福島第一原子力発電所事故についてよく知らない児童も多くて、ましてや風評被害になるとほとんどわかりません。この地域は稲作が盛んなのですが、事故の影響でそのお米が安くなったり、売れにくくなったりして、今は家畜などに食べさせる飼料用米としてつくられていることが多くなっているんです」と太田小学校の高田昌幸校長は語る。

 子どもたちは東日本大震災前の記憶を持っていないため、今の状態を「普通」と思ってしまうところがあるようだ。「だからこそ、この地域で事故があった当時、どんなことがあり、その後、どんな風評被害が生じたのかを地域の方たちから直接話してもらうことが大事だと思っています。地域の方との関わりの中で、児童が地域の一員であることを自覚していって、現状をどのように変えていけばいいのかと考えていく。そんな授業をつくっているんです」

 この学校ではメディア学習にも力を入れている。取材などを通じて、地域の人たちと子どもたちがつながることで、郷土の歴史や文化、自然、産業など、自分が住んでいることに関わるいろいろなことを学び、映像に記録して発信してきた。

 放射線教育でも、子どもたちは単に放射線の知識や事故のこと、風評被害について学ぶだけではなく、最後は学んだことに基づいて表現する活動を積極的に取り組むことで、放射線教育とメディア学習の相乗効果を図っている。

 

高田昌幸校長

 

■地域の人が風評被害の今を語る 

 11月29日、全学年の授業が公開された。中でも、6年生の教室では、アドバイザーとして、南相馬市太田生涯学習センターの紺野昌良所長、太田小学校学校評議員の吉田弘美氏、放射線の専門家である鳥取大学の北実助教が招かれ、風評被害について自分は何ができるかを考えていく授業が実施された。指導者は、担任の熱海祐一郎先生。児童は8人。

 6年生は、これまでに学級活動を通じて、地域の「語り部」から事故で起きたことや、放射線の専門家から基礎知識などを学んできた。この日は4回目の授業。次の最終回では、みんなで風評被害を払拭するためのパンフレットをつくり、県内外に発信することになっている。今回は、アドバイザーなどから話を聞いて、パンフレットで発信する内容について考えていく。

 授業は前回の授業で話し合った風評被害の復習から始まった。「福島県ではどんなことがありましたか?」と先生が問いかけると、子どもたちが手をあげて「いじめがありました」「つくった食べ物が売れなくなってしまった」「観光客が減った」「漁獲量が減った」と振り返った。

 続いて、熱海先生が「それでは、この地域にも風評被害があるのでしょうか、あるとすればどんなものでしょうか」と児童に問いかけると、アドバイザーの紺野所長がゆっくりと落ち着いた声で話し始めた。

 「福島第一原子力発電所事故から4カ月後、この南相馬市で飼われていた肉牛から国の基準を上回る放射性セシウムが検出されました。その約2年後、試験的にお米をつくってみると、太田のお米からも放射性物質が検出されました。とてもショックでした。しかし、平成26年以降、基準値を超える放射性セシウムは検出されなくなりました。ホッとしました。でも、放射性物質が出ていないのに、米の値段は以前よりも下がったままで、スーパーでも陳列されないままになってしまいました。今、ここのお米はレストランや食堂など、産地が見えないところで多く食べられるようになっています」

 この話を受けて熱海先生が「この太田でも風評被害があるんですね」と語ると、子どもたちは小さくうなずいていた。その表情を確かめつつ、「この風評被害をどうすればなくせるかを考えましょう」と導いた。

 そして、かつてこのクラスでメディア学習を支援した大学生が寄せたメッセージを朗読。そこには「皆さんの元気の姿を見て、放射線への不安は吹き飛びました。みんなの頑張りが南相馬の復興につながると思います」という思いが綴られていた。熱海先生は「今の自分たちを伝えることが、説得力のある発信になりそうですね」とヒントを出しながら、「これから、放射線と今の自分たちの関わりについて話し合ってください」と告げ、グループワークの時間となった。

 

 

アドバイザーから福島第一原子力発電所事故が起きた当時の話を聞く。

 

■事故当時と今の自分を比べていく

 子どもたちはまず、アドバイザーが語る事故当時の話に耳を傾けた。南相馬市では、ほとんどの市民が避難したことや、残った人もしばらくは食べ物やガソリンがなくて困ったことなど、実体験をした人から話を聞くことで、子どもたちは当時の苦労の大きさを感じ取っていた。「その放射線の量は、やがて下がっていき、市民の人たちもここに少しずつ戻ってきました。だんだんと日常が戻り、今はみんなも知っている通り、南相馬市のどこに行っても安心な状況になっています」と明るい声で話が続くと、子どもたちにも笑みが浮かんだ。

 児童らはアドバイザーの話を聞きながら、話の節目で自分たちが気づいたことやわかったことを互いに確認。一人の児童が「放射線の量が今はかなり減ったことがわかりました」と発言すると、アドバイザーは「そう。当時、学校でも外での活動が許されなかったけれど、今はみんな外で体育ができたり、遊んだりできますね。それは、校庭の土や砂を入れ替えるなど、少しでも放射線量を減らそうと思って、みんなで努力したからなんですよ」と語った。子どもたちも「太田地区は避難指示が解除されていることや外でも元気に体を動かせるところであるとわかりました」などと呼応。少しずつ事故当時と今の自分を比べていった。

 そして、未来に向けた今の取り組みについて語り合う時間に。「新しい公園ができた」「復興に向けた施設がつくられている」「ケーキ屋さんなどのお店が再開している」など、気づいたことを話しはじめた。アドバイザーは「福島イノベーション・コースト構想」という国の事業の一環で「福島ロボットテストフィールド」が南相馬市につくられたことや、市も子どもの遊び場を積極的につくっていることを説明。「みんなが何の不安もなく、のびのびと体を動かすことができて、やがて未来を担っていってくれるといいなと思っています」と話していた。

 

アドバイザーの話を聞いて気づいたことや、グループ内で意見を交換したことを大きなワークシートに書き込んでいく。

 

■自分の身のまわりのことに目を向ける

 授業が終わりに近づき、グループ発表の時間となった。児童たちは「事故当時、地域や学校の放射線量は高かったけれど、今は放射線の量が減った」「当時は、南相馬の農作物や食品の一部に放射性物質が検出されて、心配されて食べられなくなったけれど、今は安全で、いろいろなものが食べられるようになった」「観光客は減ったけれど、ロボットテストフィールドや高見公園などが復興のためにつくられた」など、事故当時と今の違いを明確にしながら、今日の授業でわかったことを伝えていた。

 保護者らも熱海先生に促されて発表。「当時は、マスクやガラスバッジの着用がほぼ必須でしたが、今は放射線のことを気にせず毎日を過ごすことができています。また、当時は地元産の農産物を食べるのを控えましたが、今は測定済みのものが売られているので、安心して食べることができるようになりました。新しい品種もつくられています」と、子どもたちが気づいていないことに言及していた。

 最後に、家鳥取大学の北実助教は、どのグループ発表も、現在は元気に毎日暮らしていることを伝えていた点が共通していたと指摘。「実は、この点が県外の人が知らないところなんです。皆さんが元気で過ごしていることが県外の人に知られていないことに風評を生み出すきっかけがあるのかもしれません。皆さんにとって当たり前の日々を伝えることが、風評の払拭につながると思います」と助言した。

 授業を終えた熱海先生に、この日の授業を振り返ってもらった。

 「子どもたちが、自分と放射線との関わりについて考えることができたかなと思っています。風評被害についても自分ごととして捉え始めてくれるはずです。今回の授業では、パンフレットで発信する内容を考えたわけですが、県や市のパンフレットをなぞったものをつくっては意味がありません。自分たちだから伝えられるものを求めて、遠くにいる人の話を聞きながら、保護者や地域の人の話も聞いて、自分の身のまわりのことに目を向けてくれたらうれしいですね」

 

子どもたちと同じワークをした保護者も発表。

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クルックス管を安全に使って科学の歴史を伝える(NPO法人放射線教育フォーラム主催:令和元年度第2回勉強会)

 

 NPO法人放射線教育フォーラムは2019年11月24日(日)、「放射線教育フォーラム第2回勉強会」を東京慈恵会医科大学の高木2号館南講堂で催した。この記事では、勉強会で開かれた四つの講演のうち、放射線教育に関連する二つの講演を紹介したい。

 

 新しい学習指導要領の実施が迫り、中学校の理科では「静電気と電流」の単元で「真空放電と関連付けながら放射線の性質と利用にも触れること」となった。この勉強会でも、クルックス管が現代科学の進展に寄与した歴史を解説する講演からスタート。また、このクルックス管から放射線が漏れ出る可能性があるため、教育現場でクルックス管の実験を実施する際の安全確保のためのガイドラインを策定するプロジェクトの進行状況についての報告もあった。

 

 

■現代科学の基礎を作ったクルックス管

19世紀の後半、英国の科学者のウィリアム・クルックスが開発した実験用の真空放電管「クルックス管」は、エックス線の発見をもたらし、科学の進展を促した。京都大学名誉教授の柴田誠一氏は「X線発見から原子構造の解明へ」と題して、科学の歴史をたどりながら、現代科学の重要な基礎を築いたクルックス管の果たした役割について熱心に解説した。

 

 2019年はメンデレーエフの周期律の発見から150年目だった。「当初は元素の周期表の配列は困難を極めていた」と柴田氏。しかし、クルックス管などを用いた陰極線の研究の中で1895年にレントゲンがエックス線を、1897年にJ.J.トムソンが電子を発見し、その後に特性エックス線も発見されることで流れが変わったという。

 

 1913~1914年にモーズレーが特性エックス線のスペクトルで元素を系統的に調べる実験を実施すると、原子番号を実験的に決定でき、それが原子核の電荷数と同じであることが示された。「原子核の電荷が元素の性質を規定できることが明らかになって、周期表の配列も決められるようになった」と柴田氏。また、クルックス管によるエックス線の発見は、原子構造に関する研究にも発展し、ラザフォードの原子核の発見やボーアによる水素原子の構造の解明にもつながったとのこと。

 

 柴田氏は「今の我々が当然のこととして享受している科学的基礎の中には、このエックス線の発見がきっかけになって明らかになったものが多くある」と強調。会場にいる学校の先生たちに向けて、これまでのクルックス管の実験に加えて「現代の生活を支えている科学技術の基本の多くがこのクルックス管によってわかったということを理解しておいてほしいし、これを用いて生徒にもぜひ放電現象を見せて、どうしてこのようなことが起きるのかを考えさせるきっかけをつくってもらいたい」と語った。

柴田誠一氏

 

■暫定ガイドラインの実効性を検証

教育現場でクルックス管を安全に運用できるガイドラインを策定する「クルックス管プロジェクト」。これを立ち上げて中心的に取り組む大阪府立大学放射線研究センターの秋吉優史准教授が進捗状況を伝えた。

 秋吉准教授は、学校の理科室にあるクルックス管からエックス線が多く放出されている場合があると指摘。その上で、「低電圧で確実に安全なクルックス管に買い替えることが理想。もし予算の関係でクルックス管を買い替えられなくても、誘導コイルの設定やクルックス管からの距離、放電時間の短縮などの運用を行うことでエックス線の量を少なくすることができる」と助言。関連の知識を正しく持って使うことの重要性とガイドラインを参考にする必要性を説いた。

 

 現在、教育現場の第二次調査として、暫定ガイドラインの実証実験を学校で取り組んでいるとのこと。学校関係者の希望者には測定機器としてガラスバッチを郵送。2019年8~10月には、検証を実施。学校で暫定ガイドラインに沿って使用してもらい、8月に測定した27校の92本のクルックス管については「暫定ガイドラインを適用すると、クルックス管から漏えいするエックス線の量が極めて低いことが、多くのクルックス管で確認することができた」という。また、教科書会社に対して、教師用の指導書に今後完成するガイドラインを掲載するように依頼し、「すべての会社が掲載を認めてくれた」とも報告した。

 

 講演後の質疑応答では、中学校の先生から「クルックス管からエックス線が出ていること初めて知った」という声が出ていた。別の中学校の先生からも「羽根車を回すタイプのクルックス管からは高いエネルギーの放射線が出ているイメージがあるが、実際はどうなのか」という不安の声も聞かれた。秋吉氏は、「羽根車を回るのは『ラジオメーター効果』と呼ばれる現象によるものであり、クルックス管から出る陰極線エネルギーとは関係ない。このクルックス管から出てくるエックス線の量は羽根車がないクルックス管から出る量とさほど変わらない」と答えた。

 

秋吉優史氏

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放射線教育授業実践事例44:福島県河沼郡 湯川村立笈川小学校

 

ふるさと米への思いを深めながら学ぶ放射線
 =風評被害を知ることが郷土愛につながっていく=

 

 令和元年11月15日、湯川村立笈川小学校(福島県河沼郡)において、5年生が「総合的な学習の時間」に4月から取り組んだ学習の成果を県内外の人たちに発表した。授業のテーマは「湯川米のおいしさの秘密をつたえよう」。子どもたちは「秘密」という言葉に風評被害を乗り越えた郷土への思いを込めていた。

 

湯川村立笈川小学校(福島県河沼郡)


 

 明治6年(1873年)に創立された伝統校。140年以上、地域の子どもたちがここで学び育った。現在は新しい学習指導要領の下、家庭や地域と連携して「郷土愛、湯川愛」を育んでいくことを重点に置いた教育に取り組んでいる。令和元年度、福島県の「地域と共に創る放射線・防災教育推進事業」の実践協力校となった。
 この小学校がある湯川村は、すり鉢状に広がる会津盆地の中心に位置し、その平地には田んぼが広がる。周りの山々から流れ込む水と肥えた土で育てられた「湯川米」は、会津地方では美味として知られている。

 

■子どもたちにここで何があったのかを伝える
 東日本大震災から9年近くがたち、小学校では震災後に生まれた子どもが多数を占めるようになった。震災の前に生まれた高学年の児童も、幼すぎて当時のことは覚えていない。記憶が遠ざかるにつれて、放射線教育の必然性が見えにくくなる。特に、会津地方は事故が起きた原子力発電所から遠く離れ、直接的な影響がほとんどなかった。笈川小学校の髙原昇校長は「震災が起きてすぐのときでも、『南会津で放射線教育をする必要があるのか』という保護者の声の方は多かったんです」と打ち明ける。
 

笈川小学校 髙原昇校長

 

「報道などで、県外に避難した福島の子どもがいじめられていると報じられるようになりました。南会津の子どもも県から一歩出たら『福島県から来た』となり、『放射線がうつるから来るな』などと理不尽なことを言われるかもしれない。でも、そう言われたとしても、「違うよ、放射線はうつらないんだよ」としっかり伝えることができるだけの知識を身につけさせることが、私たち教員や大人の使命なのではないか。そう考えて、放射線教育の必要性を保護者に訴えて、当時は懸命に取り組んでいたんです」(髙原校長)

 ただ、今、放射線教育のあり方が問い直されていると髙原校長。

「あれから9年、放射線教育の何が今大切なのか。今年度(令和元年度)、本校が実践協力校となり放射線教育に改めて取り組むにあたって、私たち教職員はそこをもう一度考えることから始めました。そのとき『やはり我々は福島県人であるということから出発しよう』『この東日本大震災、福島第一原子力発電所事故を決して風化させてはいけない。伝えていく義務がある』と確認したんです。ここの地域は事故の直接的な影響はほとんどありませんでしたが、風評被害といったらすごかった。このことは決して忘れてはなりません。子どもたちにしっかりと何があったのか、事実を伝えて、その中で放射線の知識を子どもたちに教えていく。これが一番大事ではないかと教職員で再認識して、今必要な放射線教育を模索しながら取り組んできました」(髙原校長)

 

■調べていく中で風評被害の実態を理解する授業 

公開されたのは5年生の授業。1年をかけて郷土について学ぶ「総合的な学習の時間」の中の1時間。全体のテーマは「湯川のよいところをみつけよう」で、先生の指導の下、子どもたちが自ら地域の良さを見つけて学習を進めていく。特徴的なのは、その過程で放射線も学んでいくところ。「学習活動を単なる点の集合ではなく、一つの線にしてストーリーにしていくんです」と髙原校長。

 児童の能動的な意欲を引き出すアクティブ・ラーニング型の授業を通して、子どもたちは湯川村の基幹産業である「米」について、実際に稲作を体験しながら、いろいろと調べていったとのこと。その過程で風評被害がこの地にもあったことを知り、放射線についての学習へと展開していったという。

 今回の発表は、一つの山場。これまでに学習した成果を県内外の人たちに伝え、次の課題を見つけてさらに学習を進めていく。

 


発表の様子

 

■専門家を招いて放射線について学ぶ
 午後1時50分。あいさつの後、「湯川村の有名なところについて発表します」という児童の第一声から授業が始まった。まず、4月の授業で描いたというイメージマップを使って、この地域の名所旧跡や村のゆるキャラなどを紹介。そして、湯川村の一番の名産は米であると説明しながら「私たちはこの『湯川米』についてもっと調べたいと思いました」と続けた。

 


発表の資料

 

 子どもたちが協力して湯川米について調べたことを発表。その中で、一人の児童が「このとき、農家の人に話をいろいろと聞いたのですが、東日本大震災で原子力発電所の事故があり、湯川米が売れなくなってしまって、とても困ったという話を聞きました」と、学習中の出来事を語った。

 どうしてそんな事態になったのかを理解できなかった子どもたちは、放射線についても調べることにした。担任の先生が専門家を招き、そこで放射線の基礎を学習。さらに子どもたちは、湯川村で生じた風評被害についても調査。「農家の方たちに話を聞くと、お米をつくっても『放射性物質が混じっているかもしれない』と言われ、買ってもらえなかったり、買ってもらっても安くされてしまったりしたそうです」と、暗いトーンで話した。

 また、「いつも食べてもらっている人からも『全量全袋検査をしているのはわかっているけれど、もし何かあったらどうしようと考えると不安になってしまう。だから食べられない』と言われたそうです」とも。子どもたちは、風評被害が生まれる複雑な実態についても学んでいた。

 なお、湯川米の放射性物質調査結果では、これまで一度も検出されていない。(湯川村ホームページhttp://www.vill.yugawa.fukushima.jp/soumu/shinsai.html

 

■郡山市で新聞を配布して取材も
  この風評被害が生じたときに、国や県、村はどのような対応をとったのか。子どもたちはこのことについても調べた。「国は売れなくなった福島県の米を買い取ってくれたそうです。福島県は田んぼに塩化カリウムを入れて、放射線が米に混ざらないようにしてくれたそうです。村の人たちは、田んぼの土を深く掘って入れ替えたり、収穫した米は全量全袋検査をしたりして、東京に何度も行って『安全性が確かめられている』とアピールしたそうです。このような努力をたくさんすることで放射線による湯川米の不安が少しずつ減っていきました」

 子どもたちも、湯川米に対する風評被害についての取り組みを話し合った。いろいろな方法で湯川米のおいしさや安全性を伝えることが大切だという結論を得た。社会科見学で郡山市に行ったときも、湯川村の良いところや湯川米のおいしさについて書いた手づくりの新聞を市民に配った。

 最後に、今後も湯川米の良さを伝え続けることの重要さを確認して、全体の発表が終わった。

 

班ごとの発表の様子

 

 その後、班に分かれて、詳しく調べたことを来場者に説明。来場者からの質問にも対応していた。児童の一人は風評被害の話を農家から初めて聞いたときに「放射線と湯川米の関係がまったくわからなかったけれど、調べてみて『そうか』とわかりました」と話していた。また、別の児童は「本当のことをみんなに伝え続ければ風評被害はなくなっていくので、これからもいっぱい伝えていきたいです」と力強く語っていた。

 授業の終わり、担任の先生が「これからどうしたい?」と聞くと、子どもたちはすぐに「もっと伝えたい!」と大きな声で答えていた。次の課題は、自分たちが調べたことを広く発信することに決まった。

 

■難しい放射線の内容も学んだことで大人と話せた

 自分たちの地域のことを知りたい思う子どもたちの意欲を引き出しながら、放射線や風評被害の学びへとつながっていった笈川小学校の放射線教育。この授業を組み立てた担任の五十嵐純先生に感想を求めた。

「今回の授業では、とにかく子どもたちが知りたい、わかりたいと思ったことを調べるようにしました。だから、私から『そこは難しいからやめておこう』とは一切言いませんでした。正直に言うと、放射線の知識は小学5年生には難しかった。未消化の部分がかなり残ったと思います。ただ、そこもあえて挑んでみました。理解できない言葉はたくさんありましたが、それでも子どもたちは頑張って背伸びして大人と話すことで、今まで知らなかったことにいろいろと気づくことができたと思います」(五十嵐先生)

 髙原校長は、放射線や風評被害を学んだことが子どもたちの郷土愛を深めたという。 「子どもたちは、この授業で地域のいろいろな人たちの話を聞いて、この地の米に関わる出来事や人々の思いを知っていきました。今回の授業は『湯川米のおいしさの秘密をつたえよう』と題しました。あえて『秘密』という言葉を使った理由は、ここのお米がおいしいのは単に水や土が良いだけではなくて、風評被害などの苦労を乗り越えたんだという自負のようなものも子どもたちは込めているんです。この授業で、子どもたちの意識が回を重ねるごとに変わっていきました。いつも食べている地元のお米がより好きになって、この村のことをもっと好きになっていったようです」(髙原校長)

 子どもたちに、この地に風評被害があったことや、放射線の知識があればそれに対応できるということを下級生たちに教えたい気持ちも持ち始めているとのこと。放射線や風評被害を学びながら地域への思いを育み、そして受け継いでいく。そんな授業が会津で始まっていた。

教員向け研修会

放射線教育授業実践事例43:福島県三春町立三春小学校

 

小学1年生が放射線を身近に感じていく授業
 =まずそこにあると知ることから始める=

 福島県田村郡にある三春町立三春小学校では、この地域の特徴を生かしながら継続した放射線教育を目指し、全ての学年において放射線に関する授業を毎年実施している。令和元年12月6日、この授業の様子が公開された。1年生の授業では、子どもたちが紙芝居や実験などを通して、見えない放射線の存在を実感しながら、放射線の性質や利用法などを学んだ。

 

三春小学校_授業の様子

 

【三春小学校】 

三春町は、福島第一原子力発電所から直線距離で約48 kmに位置している。
 東北地方太平洋沖地震による当時の揺れは周囲に比べて比較的小さく、高い放射線量も記録されなかった地域である。
 三春小学校は、明治6年の創立。前身は江戸時代の三春藩の藩校で、「明徳堂」と呼ばれていた。現在の三春小学校の教育目標にも「『明徳の精神(くもりのないりっぱな徳性)』を基調とした未来に生きる人間性豊かな子どもの育成」とある。震災当時は、浜通りから避難してきた被災者を数多く受け入れ、現在も避難している児童が在籍している。中には、9年近くが経過し、三春町に定住することを決めた被災者も少なくない。
 福島県教育委員会の「地域と共に創る放射線・防災教育推進事業」の実践協力校である。

 

■放射線教育を継続して実施していく

 東日本大震災で生じた福島第一原子力発電所の事故から9年近くが経ち、小学校では震災後に生まれた児童の割合が高くなってきている。放射線を子どもたちにどのよう に教え続けていくかが課題となっている。
 「放射線教育というと、特別な教育というイメージや、一時的に取り組む教育活動というイメージがありますが、私はそうあってはならないと思っています。特に低学年の児童に放射線を教えることは難しいのですが、小さい頃から放射線を意識することはできますし、経験を通して知識を身に付けることもできます。強引な教え方になってしまうところはあるのですが、1年生から毎年2時間ずつ学びの時間をつくり、6年にわたって継続して実施しています。シンプルな取り組みでも、その積み重ねが、やがて中学校や高校で放射線を学ぶときに役立ち、知識を確実に身に付けることができます。そうなれば、何かあったときに適切な行動をとることも、正しく怖がることもできるようになっていくと思うんです。」(箭内校長)

 三春小学校の近くには、福島県環境創造センター交流棟「コミュタン福島」があり、県内の子どもたちを中心に放射線教育や環境教育が日々行われている。三春小学校では、「コミュタン福島」の協力を得ながら、放射線教育を積極的に推進している。

 

三春小学校_箭内校長

 

■読み聞かせで紙芝居の世界へ

 1年生の教室では「ほうしゃせんについてしろう」についての授業を行った。児童は、男子11人・女子12人の計23人。2012年4月から2013年3月に生まれた子どもたちで、震災を経験していない。放射線について初めて学ぶ授業であり、指導者は担任の赤沼佳子先生。福島県環境創造センターの3人のスタッフもゲストティーチャーとして招かれていた。
 授業は赤沼先生の紙芝居から始まった。ゆっくりとした口調で、「みんなが生まれる前のことなんだけど、とても大きな地震が起きました」と語りかけた。地震の絵をめくって津波の絵が出てくると、子どもたちから「あぁー」とつらそうな声がもれた。「この後、もっと大変なことが起きました」と続けると、児童の一人が「爆発!」と言った。「そう」と、赤沼先生は福島第一原子力発電所の事故を描いた絵を子どもたちに提示した。

 「ここから『放射性物質』というものがたくさん出てしまって大変なことになったんだけど、みんなは『放射線』という言葉を聞いたことがあるかな」との問いかけに、数人の児童が手をあげた。「どんなことを知っているかな?」と聞くと、子どもたちは「よくわからない」と言いながら首を横に振った。赤沼先生は「そうだよね。よくわからないよね」と言い、黒板に「ほうしゃせんってなあに?」と書き、「これが今日のめあてです」と言って、子どもたちと一緒に読み上げた。

 

三春小学校_赤沼先生

 

 「実は先生も、放射線のことを詳しく知らないの。そこで誰に聞いたらいいかなと考えて、今日は近くのコミュタン福島の先生たちに来てもらいました」と言って、スタッフを紹介した。そのうちの一人は三春小学校前校長の太田文枝さん。現在は、コミュタン福島にて、来場した子どもたちの学びを支援している。

 太田さんの上手な語りに、子どもたちはすぐに引き込まれていった。放射線が食べ物からも出ているという場面では、子どもたちは「えっ!」という驚きの声をあげた。また、放射線の性質を伝える場面では、聞こえない、見えない、匂わない、味もない、物を通り抜けるという特徴をもっていると教えられると、「ゆうれいみたい」というつぶやきが聞かれた。

 さらに、東日本大震災で生じた福島第一原子力発電所事故にも触れていった。外に出てしまった放射線を、小さなたき火と大火事に例えながら、放射線も人の手に負えないくらい大きくなると大変なことになってしまうと伝えていた。

 

三春小学校_教室の様子

 

■本当にあるかどうかを実験

 授業の後半は、放射線が本当に身近にあるのかを実験して確かめる時間となった。赤沼先生が「放射線が本当にあるかどうかを知りたいよね。でも、放射線は見えないし、聞こえないし、匂いもしないし、味もしないから、目の前にあってもわからないよね。もしかしたらコミュタン福島の先生ならわかるかもしれないので、お願いしてみましょう」と導くと、子どもたちは「あるかどうか教えてください」と声を合わせてお願いした。すると、コミュタン福島のスタッフが放射線の計測器を持ち上げ、「今日はこの放射線測定器(GM)を使って、みんなで放射線を測りましょう」と呼びかけた。そして、試料の「塩」「肥料」「御影石」「刻み昆布」「湯の花」を説明した。

 まずはバックグラウンドを30秒間測定した後、スタッフが「何個だったかな?」と尋ねると、子どもたちは「33個」と元気よく答えた。そして、子どもたちが試料の「塩」「肥料」「御影石」「刻み昆布」「湯の花」から出る放射線の量を測定器で測った。子どもたちは興味津々で、測定時間の30秒をみんなでカウントしながら、計測器のカウンターの数字が上がっていくのを一生懸命に数えていた。

 

三春小学校_実験の様子

 

 実験が終了すると、いよいよ最後のワーク。赤沼先生が「おうちの人に手紙を書いてほしいの」と言うと、一瞬、子どもたちは戸惑う表情を見せた。しかし、「先生も放射線のことがわからなかったように、おうちの人もわからないかもしれないよね。だから、今日、放射線についてこんなことがわかったよと伝えれば、おうちの人も放射線のことがわかるよね」と話すと、子どもたちは納得して、この授業で学んだことを言葉にしようと紙に向かって書き始めた。児童の一人は「ほうしゃせんはいろいろなところにあります。見えないけれど、どこかにあるんだなとおもいました」と書いていた。

 

三春小学校_手紙

 

■今日の授業が第一歩

 この公開授業には、近隣の小学校や中学校の先生たちが多く訪れた。授業の後には事後協議も行われた。冒頭、箭内校長のあいさつのあと、白岩新一教頭が三春小学校における放射線教育の学校テーマ「21世紀をたくましく生きる子ども育成~三春町に暮らす子どもならではの、持続可能な放射線教育~」について説明。その中で、福島県に生まれて育った子どもにとって、放射線教育は必要不可欠な学習内容であると捉えていることや、大震災が起きたときに放射線に対する十分な知識や経験が不足していたことが風評被害などの大きな不安につながってしまったと伝え、放射線教育の重要性を強調した。また、予測が難しい現代であっても確実に歩み、困難を乗り越えていけるようになるには、放射線教育などを通して自ら考えて判断し行動できる力を身に付けることが大事になるとも説明していた。

 その後、協議が始まり、授業を見ていた先生から意見が寄せられた。「専門的なところはゲストティーチャーに話してもらったのが良かった」「難しい単位の話をせずに、うまく測定器を使って放射線の量の多さや少なさを感じ取らせていた」という意見があった一方で、「試料が1年生には身近なものではなかった」「単に値だけをワークシートに書いていただけかもしれない。その値の意味をもう少し説明した方が良かったのではないか」という声も聞かれた。

 授業をした赤沼先生は、「今日の授業は、子どもたちにとって本当に初めての放射線の授業でした。何もわからない中で、放射線が見えないとか、味がしないとか、測定器を使えば放射線は測ることができるとか、何かしら子どもたちの頭の中に残ったかなと思います。事前にアンケートをとったとき、子どもたちは『放射線』という言葉以外はほとんど知っていることがありませんでした。それが、最後の保護者への手紙では、学んだことをいくつか書けていましたよね。放射線の授業は一回やったら終わりというものではありません。積み重ねていく中で確かな知識が身に付いていけばいいなと思っています。次はコミュタン福島へ行って、今日学んだ知識を深めたいと思っています。また、今後はいろいろな機会で放射線の授業で学んだことに触れて、『ここにも放射線があるね』と思い出させたいと思っています。放射線に関して継続的に触れていく学びが大事で、今日の授業がまさにその第一歩となっていたらいいですね」と感想を述べた。

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