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自作に工夫、学校でも使えるアイデア教材 ―2019年度 放射線教材コンテスト(1)―

 

 全国の大学生が放射線教育用のオリジナル教材をつくって競い合う「放射線教材コンテスト」(主催・公益財団法人日本科学技術振興財団)が、2020年3月15日、科学技術館(東京都千代田区北の丸公園)で開催された。ボードゲームや最新の拡張現実(AR)など、さまざまなアイテムや技術を用いて制作したアイデアいっぱいの教材について、学生たちはプレゼンテーションに懸命だった。

 

 

新型コロナウイルス感染症対策をとりながら開催された「放射線教材コンテスト」。

 

 

■全国から86作品がエントリー

 「放射線教材コンテスト」は、放射線の関連分野を専攻する専門学校生、大学生、大学院生が学校で学んだ知識を活用し、小・中・高校生向けに放射線教育の教材をつくり出して優秀作を競い合うというもの。

 前回は、入選者が児童や生徒の前で自作の教材を実演しながら、審査員が同時に評価をした。しかし、今回は新型コロナウイルス対策で、児童や生徒に演示することはせず、出場は審査員に対してプレゼンテーションをする形となった。

 エントリーしたのは86作品。その中から選ばれた8作品が、この日の決勝コンテストに臨んだ。北は弘前大学、南は鹿児島医療技術専門学校と、全国から多彩な顔ぶれが並んだ。

 

教材名 応募代表者名
(敬称略)
学校名
Webカメラを用いた放射線検出器の開発 佐藤 光流 九州大学大学院
ゲームで楽しく放射線防護「距離」の概念を導入する教育教材・演習法 千葉 咲楽 弘前大学
デイラジ(daily radi) 長尾 優花 純真学園大学
「ビーム・フセーゲル」でストップ放射線! 渡邉 拓也 帝京大学
放射線による人体への影響を学べるコロコロクラッシャー 鈴木 晴菜 帝京大学
放射線を目で見てみよう 西谷 昌人 首都大学東京
身近な地下水に含まれるラドンを調べよう 岡田 志織 東京学芸大学
ラジエーションカード~見えているものだけが世界の全てではない~ 有田 実華 鹿児島医療技術専門学校

 

 

■知っているゲームを生かし、親しみやすく

 コンテストで目立ったのは、ゲームの要素を取り入れた教材。遊び感覚で楽しむうちに、放射線の知識を自然に身に付けられると、制作した学生たちはアピールしていた。

 純真学園大学で放射線技術を学んでいる長尾優花さんは、ロングセラーのボードゲーム『人生ゲーム』をまねた放射線教育用の教材をつくった。プレーヤーがサイコロの出た目の数に従って自分のこまを進めていくと、止まったマスの中には日常で想定される生活シーンが書かれていて、そこで浴びる放射線の量に応じて「0.1mSv」「0.5mSv」「10mSv」と書かれた札を受け取っていく。例えば「幼い頃からの夢である、キャビンアテンダントになる。1年間で5mSv受ける」などと書かれていて、札を受け取ったり、ときには返したりする。

 制作者の長尾さんは、このボードゲームに『デイラジ(daily radi)』という名前を付けた。放射線を普段の暮らしで実感できる機会は少ないが、このゲームでプレイすれば日常生活のいろいろなところに放射線があるとわかる。「この教材は、子どもの面倒を見るアルバイトをしているときに思い付きました。子どもたちが楽しそうに『人生ゲーム』をしていたんです。この有名なゲームと同じつくりにしたら、子どもたちはルールを知っているのですぐにプレイできるし、放射線の難しいイメージも払拭できると思いました」と語っていた。

 そのほか、絵柄と文字の説明で放射線や元素などを学べるカードゲームをつくったチーム(鹿児島医療技術専門学校)や、4マスと16マスのボードを使った数当てゲームをすることで放射線防護の「距離」の効果を体験的に学習できる教材をつくったチーム(弘前大学)もあった。

 

 

人生ゲームのように遊んで放射線を学ぶ『デイラジ(daily radi)』。

 

 

■今までにない発想で教材をつくる

 東京学芸大学のチームは、地下水に含まれる放射性物質ラドンを気相に追い出して量を調べる実験方法を開発。ペットボトルと活性炭の入ったタバコフィルターなど、手に入りやすいものを活用して、中学生や高校生でも簡単に取り組める本格的な実験ノウハウを紹介した。

 帝京大学のチームは、放射線の人体影響をゲームで学べる教材『コロコロクラッシャー』を開発。台の上からボールを転がしてピンを倒すボーリングゲームで、ボールを放射線、プラスチック製のピンを人体に見立て、台を高くして傾斜をきつくすると、倒れるピンの数が増え、放射線のエネルギーによって人体に与える影響が異なることに自然と理解できるように設計されている。また、ピンの中には、がん細胞に見立てたピンも混ぜておき、ボールがこのピンを倒せばがん細胞が生まれてしまうというルールも設定。放射線の確率的影響についても考えさせられる工夫もしていた。

 帝京大学の別のチームは、市販のボードゲームを基本的にそのまま活用し、ルールだけを変えて教材に仕立て直した。『コリドール』というフランス生まれのボードゲームを使い、ルールを変更して、放射線に見立てた球から出るエックス線・アルファ線・中性子線に対して、鉛・水・紙になぞらえた遮蔽(しゃへい)板を使って防護しながら、自分のこまを進めていく。ゲームをしながらこのルールを覚えていけば、放射線の基礎知識を身に付けられる。プレゼンテーションの後の質疑応答では、審査員の一人は「子どもがまずこのゲームに取り組めば、どうしてエックス線を遮蔽(しゃへい)するには紙ではなく鉛でなければならないのか理解できるはず。その後の学習効果が高まるはずだ」と評価した。

 

 

ボーリングゲームで放射線の人体影響について学ぶ(「コロコロクラッシャー」)。

 

 

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