教員向け研修会

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放射線測定器を手づくり、測定する (中部原子力懇談会主催:放射線ウォッチング)

 

 令和2年7月28日(火)、理科の教職員を対象とする「放射線ウォッチング」と題する研修会が、名古屋市科学館 理工館6F第1実験室で開催された。放射線の専門家による講義に始まり、実験・工作では手づくりで組み立てたガイガー・ミュラー計数管(以下、「GM管」と表現)による放射線の測定と霧箱での観察など、文字通り目に見えない放射線を「ウォッチ」する研修会となった。

 

手づくりGM管

 

■放射線をイメージする

 研修は、名古屋大学の森千鶴夫名誉教授による講義から始まった。レントゲン博士がエックス線を発見するまでのエピソードや放射線研究に関する歴史、電離作用をはじめとする放射線の性質などの幅広い内容について、終始丁寧な説明を受けることができた。

 

スライドを使った森先生の講義

 

 工作は、電子回路の組み立てからスタート。フイルムケース型のGM管に放射線(ベータ線)が入ると、電離作用によって電子回路に電気信号が入力されることになり、カウンタの数字が増えていく仕組み。自身の手で部品を一つひとつ組み上げていくことで、測定器の中身がどのようになっているのか、参加者はだんだんとイメージをふくらませていった。

 マントル(キャンプなどに使うランタンの芯)に塗布されたトリウムから出てくる放射線による電離作用で、電子回路に電気信号が送られると、ブザーが鳴り、同時にLEDも光り、液晶画面のカウンタの数字も増えていく。目には見えない放射線だが、ブザー音やLEDの光、さらにはカウンタの数の増加によって、参加者は管の中に入った放射線が“粒”としてイメージされ、その存在を意識できた瞬間であった。

 当初は7月28日から29日までの2日間かけて工作を行う予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、工作内容の一部を主催者側で予め仕上げた部品を用意するなど、時間を短縮した工作となった。とはいえ、参加者は回路の組み立てなど主だった内容を体験でき、できあがったGM管を前にして、達成感を感じている様子だった。

 

 

■「納得感」ある理解を授業に

 工作完成後は、できあがったGM管を用いた放射線の測定実験に移った。五感で感じることができない放射線だからこそ、理論が工作、実践につながり、さらに体験に基づいた「納得感」のある理解が求められる。

 遮へい実験では、参加者はGM管とマントルの間に、プラスチック板をはさみ、その枚数によって1分間あたりのカウント数を記録。プラスチック板の枚数が増えることによって、GM管に入る放射線(ベータ線)の量が少なくなることを確認した。また距離の実験では、GM管とマントルとの距離が離れるにつれて、放射線の量が少なくなっていくことを確認。参加者からは「授業の中で実施したい」という声が聞かれた。

 続く霧箱実験では、参加者は小型シャーレを用いた簡単な工作と放射線(アルファ線)の飛跡を観察した。霧箱の中で描かれた放射線の飛跡に、参加者からは驚きの声があがった。「2つの実験を組み合わせると放射線のイメージがさらにふくらむ」という参加者の声もあった。GM管の実験では定量的に、霧箱では定性的に、両面から放射線について学ぶことができた。

 

 最後に、講師と参加者で1日の工作や実験について振り返った。それぞれの参加者が、学校での授業において実験を活かしたいという思いを抱いたようだ。参加者から「放射線について、簡潔に生徒に説明するために一番重要なことは何ですか?」といった質問も出された。これに対して森先生は「実験で生徒の興味を引き出し、実験で扱っている放射線の種類と関連付けて説明すると理解が深まる。イメージをより明確にするためにも、できる限り生徒自身が実験に取り組める機会があるといい。ぜひとも増やしていきたい」と答えた。手を動かして学ぶことの可能性の大きさを示した研修会となった。

 

距離による減衰実験

 

講師を務めた4名の先生(左から名古屋大学名誉教授・青山隆彦氏、

同大学名誉教授・飯田孝夫氏、同大学名誉教授・森千鶴夫氏、

春日井市立松原中学校教諭・五井忍氏)

 

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