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教員向け研修会

放射線教育実践事例39:福島県立福島高等学校

 

国内外の高校生がフクシマの現状を直に学ぶ

 =次世代を担い交流―福島高校主催のワークショップ=

 

 福島県立福島高等学校が主催する「国際高校生放射線防護ワークショップ」(Radiation Protection Workshop in Fukushima 2018)が、8月5日から9日まで5日間の日程で開かれた。これは福島第一原子力発電所事故後の福島の復興や現状について夏に福島県内外の高校生が共に同県内を見学し体験的に学ぶもので、今年で4回目。県内からは福島高校、福島西高校、安達高校、安積高校、ふたば未来学園高校、県外からは都立戸山高校、広島大学附属高校、海外からフランス、台湾、フィリピンの高校から、合わせて52名の高校生が参加した。以下、福島高校の原尚志教諭がその様子をお伝えする。

 

■農水産業の現状と風評を学ぶ

 初日は、世界の放射線データを提供するプロジェクトを進めるボランティア団体「Safecast(セーフキャスト)」の指導を受けて、ほぼ1日をかけてガイガーカウンターを組み立てた。このガイガーカウンターはワークショップの期間中携帯し、福島県内の放射線の量を確認した。

写真1・風評の払拭について議論する参加者

 

 2日目と3日目は、福島県の農水産業の現状について学んだ。福島市内にある安斎農園を訪ねて、風評や今後の展望などについて話を聞いたのち、参加者が果樹から桃を収穫して味を楽しんだ。いわき市小名浜魚市場では、福島県水産海洋研究センターの研究員から、県産魚介類に含まれる放射性物質はすでに基準値を大きく下まわることなどの講義を受け、その後市場や検査室を見学。そしてアクアマリンふくしまに移動し、小名浜周辺の海水、海底土、魚のモニタリングの推移や、魚介の風評払拭などについて話を聞いたのち、学校ごとに討論を行い、震災後の福島の現状について疑問やアイディアを出し合った。

 

■福島第一原子力発電所の構内を見学

 4日目は福島第一原子力発電所、中間貯蔵施設、除去土壌再生実証事業を見学した。発電所では防護服を着用せずに見学できることにほとんどの生徒が驚いた様子だった。バスで津波被害状況の説明を受けながら構内を回り、特に原子炉建屋の見える丘の上では車窓に顔を近づけて建屋を凝視していた。

写真2・福島第一原子力発電所の構内をバス見学

 

 参加者は、連日,宿舎に戻ると、その日の体験の振り返りとまとめを行い、最終日のポスター発表に備えた。発表会は最終日の午後、東京・恵比寿ガーデンプレイスにて、学校ごとに作成したポスターを用いて一般公開で行われた。多くの生徒たちが「福島の現状を学ぶことができる機会をもっと多くの生徒に与えてほしい」との感想を交えながら、ワークショップで学んだ現在の福島の姿について説明していた。

写真3・学校ごとに発信するポスター発表

 

■事実を正しく理解し、未来を考える機会に

 広島大学附属高等学校の生徒を引率した平松敦史教諭は、ワークショップを終えて参加した同校高校生とご自身の感想を寄せてくれた。

 

【広島大学附属高校生徒の感想】

 「小名浜魚市場では、明確な安全性を示すデータが存在しているにも関わらず、風評被害が根強く残ったままで無くならないことを知り、とても心が痛みました」

                        

写真4・参加者全員で記念撮影

 

 「参加した高校生と意見を交換し合い、福島の姿について考えたことは、大きな刺激となりました。そして、改めて『良い未来を作るために私たちは今、何をすべきか』ということを考えさせられました」

 「このワークショップを通して、事実を正しく理解し、偏見を持たず、ひとりよがりな視点ではなく、様々な人と話し合い、協力し合うことで、白か黒かで解決できない様々な課題を一つひとつ乗り越えることは可能であると実感しました」

 

【平松敦史教諭の感想】

 今回のワークショップを企画してくださった福島県立福島高校の先生方をはじめ、関係のみなさまに心より感謝申し上げます。生徒の感想にみられたように、事実を知り、理解し、同世代と議論を深め、未来の担い手としての自覚をもつなど、1つ1つのプログラムを体験するたびに生徒が大きく成長することを実感できた非常に貴重な機会でした。このような素晴らしいプログラムが次世代の担い手の学びの場として、今後一層拡充することを願ってやみません。

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