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教員向け研修会

放射線教育授業実践事例23:福島県西白河郡西郷村立羽太小学校

 2015年11月16日(月)、福島県西白河郡西郷村立羽太小学校では、5年生の総合的な学習の時間を使って、「放射線と共に生きる、放射線の正しい知識を身につけよう」をテーマに放射線教育の公開授業を実施した。

 

 

羽太(はぶと)小学校

 1875年に開校。「西白河郡」は福島県と栃木県の県境に位置し、阿武隈川の上流域にあたる「西郷(にしごう)村」に本校がある。児童数は67人(2015年11月現在)。JR「新白河」駅からタクシーで約15分。東京電力福島第一原子力発電所からは約80km。

 

「知る」「向き合う」「共に生きる」という段階的な教育を実施

 

●羽太小学校 西牧泰彦 校長

 

 「西郷村は比較的放射線量が高く、この3月31日まで1日4時間の屋外活動制限が設けられていました。そのため体育などは配慮をしながら行ってはいましたが、やはり児童の運動能力や体力の伸び悩みがあるのではないかと感じています。また、制限が解除された今でも、児童には草むしりや花壇の手入れをする時はゴム手袋やマスクをして活動するよう指導しており、児童もそれが当たり前で、日常の習慣というふうに捉えていると思います。そんな状況の中でも、放射線への意識も次第に薄らいできています。しかし、廃炉までには30〜40年かかるわけで、児童には「放射線と共に生きる」という意識や行動を植え付けていく必要があり、特に義務教育においての放射線教育は大切なことだと思っています。本校では1、2年生には「放射線を知る」、3、4年生には「放射線と向き合う」、5、6年生には「放射線と共に生きる」というテーマを設けて段階的な教育を行っています。放射線を正しく知り、正しく怖がること。それがやがて大人になって、社会に出た時に役立つのではないかと思っています」。

 

1、2年生に放射線について教えてあげよう、を切り口に

 

●指導:仁科恵子 教諭

 

 5年生の総合的な学習の時間を使って放射線教育が行われた。まず、全校児童を対象に行われた放射線に対するアンケート調査の結果を貼りだし、特に1、2年生と5、6年生での違いを児童に尋ねた。「(1、2年生は)放射線のことを知らない」「放射線から身を守る方法を知らない」という声があがる。「じゃあ、あなたたちは教えてあげられる?」という仁科教諭の提案から授業はスタート。

身を守る方法の他、放射線は何に使われているか、体に入るとどうなるか、原発って?など、今まで学習してきたことのキーワードを提示した後、「1、2年生に放射線について何を伝えたいかを考えて、調べよう」を課題にしたワークシートを配布。福島県教育庁が放射線教育のために作成した学習教材DVDを見せるとともに、児童は手もとにある放射線の副読本3冊を活用して課題に取り組んだ。

 


 

 そして、キーワードごとに児童ひとりひとりの発表。「どんなふうに説明すればいいかも考えて」という指導を受けて、他の児童からは「その言葉は難しくて伝わらないよ」の声。たとえば放射線の有効利用であるレントゲンやCTスキャンの話では、「体を切らないでも体の悪いところがわかるので、正確な治療ができる」に言い換えた方が良いなどの意見交換が活発に行われた。

 


 

 最後に教諭が「放射線はいいもの?悪いもの?」と問いかけると、「どっちも」「悪いことの方が多い」「わからない」という声。「もう少し詳しく調べて、1、2年生に放射線の正しい知識を伝えていこうね」というまとめで授業は終了した。

 

 

放射線教育はまだまだこれから、という熱い講義が続く

 

●講義:吉川武彦(福島県教育庁義務教育課指導主事)、西牧泰彦(羽太小学校 校長)、仁科恵子(同教諭)、藤岡達也(滋賀大学教育学部 教授)

 

 公開授業終了後、参観した他校の教師や関係者が集った研究協議会が体育館で行われた。

 まず、福島県教育庁の吉川氏が、「4年半経った今でも福島に対する風評や中傷は根強く、将来のことも考えると福島の子どもたちには放射線教育はまだまだ必要だし、これからはその中身も考えていかなければならない」と語り、県の放射線教育の変遷や方向性について説明を行った。

 続いて、羽太小学校の西牧校長と仁科教諭が登壇。放射線への意識が薄れていると述べた西牧校長は、西白河郡の小学校校長が福島第一原発と第二原発に視察を行ったことに触れ、その時耳にした放射線量や目にした光景から放射線教育は必要だと実感した、と述べた。仁科教諭は「低学年の児童にわかりやすく教えるために考えることで、自らの放射線に対する知識も高まり、それが大人になった時にも役立つのではないかと思う」と語った。

 新潟県において柏崎刈羽原発の事故を体験し、防災教育や環境教育、ESD(持続発展教育)に詳しい藤岡氏は「放射線に関しての知識の啓発は、子どもたちだけでなく、保護者をはじめ地域全体に必要で、それができるのは学校教育。先生方の役割は大きい。また、先行きが不透明な時代にあって、生き抜く力の育成も必要。知識だけでなく、それをもとに判断し、行動する力がこれからは大切になってくる。ESDのすべてに放射線教育は関わってくると思う」と語った。

 

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