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教員向け研修会

放射線教育授業実践事例22:福島県伊達郡川俣町立川俣南小学校

 2015年11月13日(金)、福島県伊達郡川俣町立川俣南小学校では、3年生の総合的な学習の時間、4年生の道徳の時間を使った放射線教育の公開授業を実施した。研究主題は「確かな知識と助け合う心・郷土愛をもち、自分の生き方を考えることのできる児童の育成」。

 

川俣南小学校

 

 1985年に開校。福島県北部「伊達郡」の南東に位置する「川俣町」にある。児童数は126人(2015年11月現在)。被災した同町の山木屋小学校の子どもたち28人も校舎を同じくして学んでいる。JR「福島」駅からタクシーで約30分。東京電力福島第一原子力発電所からは約40km。

 

 

「故郷は川俣なんだ」と将来自信をもって言えるように

 

●川俣南小学校 佐藤 勉 校長

 

 3.11当時は別の小学校で教頭をされていた佐藤氏。「当時は屋外制限があって、外で遊べない、運動ができない。それが辛かったですね。心身ともに子どものことがとても心配でした。川俣南小学校には今年赴任したばかりですが、現在は落ち着きを取り戻し、子どもたちものびのびと活動をしています。一方で、小学校では3.11を知らない子どもたちも増えています。依然として風評被害や言われなき中傷もある中で、私たちは、子どもたちが将来社会に出て行った時に「自分の故郷は川俣なんだ」と自信をもって言えるようになってほしいと願っています。そのためにも放射線教育は学校活動の中で、あらゆる側面から繰り返し行うことが必要だと思っています。ひるまず、あなどらず。むやみに放射線を怖がるのではなく、正しい知識と理解をもって正しく怖がる。ある物事にとらわれて、動けなくなってしまうようではいけないと思うんです。特に小学生は、ある物事を強調しすぎると、それにとらわれてしまう傾向があるので、子どもたちの発達の段階に合わせた教育も必要じゃないかと考えています」。

 

 

地域の名産「川俣シャモ」を題材に放射線を学ぶ

 

●指導:小野 啓 教諭

 

 3年生の総合的な学習の時間を使って放射線教育が行われた。この時間では以前から地域の名産である「川俣シャモ」の生産者を訪ねて見学学習などを実施しており、今回の授業では、これまでの学習を振り返ることから始まった。「原発事故の前の状態を取り戻したい」「みんなに安全でおいしいシャモを届けたい」という生産者の思いを確認しながら、そのために「敷いてある籾殻や餌にこだわる」「外には出さず広い小屋で育てる」「通常の倍である112日間飼育する」「放射性物質の検査をする」などの工夫や取り組みを行っていることを確認した。

 

そして、小野教諭が「私たちにお手伝いできることが何かあるだろうか」と問いかけ、その一例として「川俣シャモ」を全国にPRするためにポスターを作ってはどうかと提案。「とってもおいしいよ!川俣シャモ」と書かれた自作のポスターを取り出し、子どもたちに意見を聞いた。「それじゃ伝わらないよ」という声を受け、ワークシートに自分なりのキャッチコピーを考えさせた。「なぜ、おいしいのか」「なぜ、安全なのか」が必要だということを考えさせながら、最後は子どもたちがそれぞれ考えたキャッチコピーを発表して授業が終了した。

 

 

震災後の心温まるエピソードから思いやりの心を育てる

 

●指導:菅野一恵 教諭

 

 続いて、4年生の道徳の時間を使った公開授業が行われた。まず、震災時の避難所の写真などを見せ、人々の様子やその時の気持ちなどを子どもたちに尋ねるところから授業は始まった。続いて、東日本大震災後に実際にあったクリスマスにまつわるエピソードを菅野教諭が紹介。これは、京都の小学生がサンタさんにあてた「(震災にあった子どもたちに比べ)私だけプレゼントをもらうのはずるい気がする。私はいらないから東北の子どもたちにたくさんプレゼントをあげてください」という手紙を見たお母さんが、何枚かのお札とともに福島県庁に手紙を送ったという話が基になっており、県庁では相談の結果、サンタからということで避難している子どもたちに絵本を届けている。

この話を紹介した菅野教諭は子どもたちに、少女の気持ち、絵本を受け取った子どもたちの気持ちについて問いかけ、グループごとに話し合いを行わせた。さらにワークシートを配り、自分がこの少女のように誰かのために何かをしてあげたいと思った経験、何かをしてあげた経験を記入させ、発表させた。最後に菅野教諭は、詩人・宮澤章二さんの「思いは見えないけれど、思いやりは見える」というフレーズが印象的な「行為の意味」という詩を紹介し、授業を終えた。

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