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エネルギー・放射線教育に関する研修会(資源エネルギー庁主催)

 2015年9月18日(金)、東京大学工学部11号館講堂において「エネルギー・放射線教育に関する研修会」が前日17日(木)に引き続き開催されました。冒頭、主催の資源エネルギー庁より、電力ガス事業部 原子力立地・核燃料サイクル産業課原子力広報官の須山照子氏から「エネルギー政策の主要課題」の簡単な説明があった後に講演に入りました。

 

講演(1)

「理科教育からの発展〜新たな取り組みを〜」

● 村石幸正氏(前東大付属中等教育学校副校長)


 村石氏は、以前から広島・長崎への根強い差別を感じていたものの、ある文章に出会うまでは漠然と「ある程度の奇形児の出現率の増加があったのではないか」と考えていたこと、また、宿泊研修で広島に行った生徒たちが、原爆の影響をすべて放射線のせいだと思い込んでいたことが、放射線教育を始めるきっかけだったと述べた。さらに、「人は多かれ少なかれ環境に左右される。ゆえに学校と家庭が連携することが大切」だと指摘。特に3.11直後は情報が錯綜し、「不安が燃え上がってしまうぎりぎりの状態だった」と表現。同校では以降、放射線に関する正しい知識を普及させていくために、PTAのホームページや全国配布の広報誌「ぎんなん」などを通し、同校卒業生による知見などを積極的に取り上げ、生徒のみならず父兄に対しても情報を発信していると報告した。

 

報告(1)

「グループ発表」

● 萱野貴広氏(静岡大学教育学部教務職員)

● 勝川健三氏(弘前大学教育学部准教授)

● 齋藤由美子氏(島根県教育委員会教育庁教育指導課指導主事)

● 佐々木康栄氏(青森県教育委員会学校教育課指導主事)

 

 前日の最後に行われた研修会参加者によるグループディスカッションのまとめの報告が4氏から行われた。「初めて体験することなので試行錯誤が続いているが(何を言わんとするかが分かりずらい、例えば今回の参加者が初めての経験なので、・・・・・)、今後は科学的に考え、判断する力を育てていくことが大切」で、そのためには「今は理科にまかせがちだが、それ以外の教科や分野で放射線教育を展開すること」、「エネルギー事情や福島の現況など社会的状況を指導者は自分のこととして理解・咀嚼し、放射線教育においてはその狙いを明確化すること」などが重要だと報告。「授業で何をどのように伝えていけばいいのか、教える側が自信を持って行うための研修の場や学習プログラムが必要」という具体的な意見も出た。さらに「放射線教育は日本全国の児童・生徒のみならず、父兄に対しても展開していくことが必要」で、「県全体で放射線教育に取り組んでいる福島から他県が学ぶことは多く、その知見や蓄積の発信を期待したい」という意見が印象的だった。

 

講演(2)

「放射線教育の現場から」

● 阿部洋己氏(福島県双葉郡富岡町立第一中学校 校長)

 

 福島の現状として、原子力発電所に近い地域では避難などによって授業は仮設の教室で行い、児童生徒数も減少し続けていると報告。その中で、地元や避難先との連携、少人数での授業を活かした魅力ある学校づくりを考えているとした。また、来年4月には環境創造センター内に、原子力発電所の事故や放射線について学べる研修室、実験室を備えた交流棟がオープンする予定であることを報告。今後も原子力発電所の廃炉作業などを注視しながら、福島県ならではの放射線教育を推進していく、とした。さらに、根強い風評を払拭するためには「全国での放射線教育」が必要だとし、その際には「放射線は自然界に存在しているもの」ということの指導、いざという時のための防災教育を繰り返し行うことが大切だとした。最後に、会場において配布された福島県教育委員会が作成した放射線教育のための指導資料やDVDについての説明があった。

 

 

講演(3)

「理科と他教科との連携の可能性を探る」

● 藤本登氏(長崎大学教育学部教授)



 今世界で、持続可能な未来の実現に必要な知識、技能、価値観などを身につける教育・学習「ESD」が求められているが、日本ではまだ実践できていないと指摘。エネルギー問題、放射線の問題に関しても今後は、学校、家庭・地域、自治体や国などが連携し、保育・幼稚園から社会人まで、さまざまな分野で知識や能力を高める必要があるとした。たとえば小・中学校などにおいては理科だけでなく他教科でも実施するべきで、「放射線を浴びるとがんになるという一方で、なぜがん治療に放射線を使うのか」、「放射能の生物学的半減期は、代謝や栄養素にも関係する」と考えれば、他教科でも可能だと語った。また、その際には、日本は島国であり、送電線で他国とつながっているドイツのようなエネルギー政策はできないことを前提とすることが重要だ、とした。最後に教育(education)の語源は「educe(潜在能力を引き出す)」であり、教師は教え込むのではなく、あくまでも「主体的な学びや活動」を引き出すことが必要であると結んだ。

 

パネルディスカッション

情報を発信する立場として、エネルギー、放射線教育のこれからを考える」

● コーディネーター:飯本武志氏(東京大学環境安全本部准教授)

● 野坂真理氏(フリーアナウンサー)

 

 情報を発信する立場として我々はどのようなことに注意すべきかについて、青森を中心にフリーアナウンサーとして活躍している野坂氏が「私は自分が集めた情報を咀嚼したうえで語る、押しつけないということに注意している」と語り、参加者に対しては「難しい言葉は一般の人には思った以上に伝わらない。それと、危ないか危なくないかは必要だが、それとともに“なぜか”をわかりやすく伝えてほしい」と述べた。続いて、エネルギー、放射線教育の今後の展開について質疑応答が行われた。前日講演を行ったいわき明星大学の石川氏からは「聞いたことは忘れる。体験したことは覚える。児童を参加させるような工夫が必要」と述べた。同じくいわき明星大学の東氏は「原子力発電所とエネルギー問題、放射線教育はつながっている。時間に制限がある中でも、そのことに配慮し、工夫して伝えていかなければならない」と語った。

 

講演(4)

エネルギー、放射線教育を進めるうえで大切にしたいこと」

● 清原洋一氏(文部科学省初等中等教育局 主任視学官)

 

 最後に、福島県とともに放射線教育を推進している清原氏が登壇。まず、日本人の控えめな性質もあるものの、「指導に自信がない」と答える教師が他国に比べて多く、同様に「ダメな人間だ」と考えている子どもたちが多いことを指摘。社会環境が激変する中、知識や技能に、今後は主体的に考える力、状況に応じて判断する力を加えた「社会を生き抜く力の育成」が重要だとし、そのためには「自立」、「創造」、「協働」という3つの理念の実現が不可欠だとした。また、教育の現場では、学習の狙いや内容も、目の前にいる子どもたちの状況とともに見直す必要があり、教科の学習の中での位置づけや学校の教育全体としてのまとまりなどを考慮し計画的に実施していくべきで、何よりも子どもたちの疑問や気持ちに寄り添うことが大切だと結んだ。

 

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