教員向け研修会

ホーム > 実践紹介 > 教員向け研修会

教員向け研修会

第12回 日本放射線安管理学会 6月シンポジウム(日本放射線安全管理学会主催)

 2015年6月19日(金)、東京工業大学大岡山キャンパス西8号館10階会議室において、日本放射線安全管理学会主催の「第12回 日本放射線安全管理学会 6月シンポジウム」の2日目が開催され、高校生と専門家による特別セッションなどが行われました。

 この特別セッションの模様をご紹介しましょう。

 

特別セッション

高校生と専門家が語る放射線

 

高校生による放射線に関する研究発表①

「放射線に対する戸山生の意識調査と霧箱を用いた放射線の測定」

東京都立戸山高等学校(指導:小林一人教諭)

 

 戸山高等学校から3人の生徒が代表して発表を行った。放射線に関する情報が錯綜する中で、生徒の意識が多様化していることに興味を持ち、まず自校の生徒にアンケートを実施。その結果、放射線への関心が正しい知識につながるものではないことがわかり、今後は安全対策の啓蒙を含めた活動を行っていきたいとした。さらに、霧箱を使って放射線を数値化できないかと考え、戸田式卓上霧箱を用いてその様子を動画撮影、画像解析ソフトで研究を行った。試料はα線とβ線を出すユークセン石と、半減期の短いラドンガスの2種類用意し、前者からは放射線の長さが、後者からは放射線の量が測定できるのはないかの仮説をもとに実施。課題は多いものの、改善点をもとに計測すれば、霧箱によって放射線の性質を数値化することは可能ではないかと結論づけた。出席者からはアンケートの取り方や分析方法、グラフの見方に関するアドバイスがあった。

 

高校生による放射線に関する研究発表②

「間放射線測定器で中高生が学ぶことができた広島・福島」

奈良学園中学校・高等学校(指導:工藤博幸教諭)

 

 2002年から広島における環境放射線量と被爆地への偏見の現況について調査を行っている奈良学園中学校・高等学校から、4人の生徒が発表を行った。先輩達の技法をもとに、2011年から福島における放射線量の経年変化という自然科学的側面と、人の心情という社会的側面から調査を実施。放射線量の計測はGM計数管とシンチレーションタイプを用いて福島市内と阿武隈川河川敷で行った。その結果、除染が進む市街区では年々放射線量が低減し、現状では関西のレベルまで低減していることを確認。非除染地域の草むら部分ではやや低減、阿武隈川周辺では川の洗い流しと除染による低減が見られるとした。また、2011年からJR福島駅前において対面式聞き取り型のアンケートを実施。甲状腺がんの報道から子どもへの遺伝的影響への不安が増加したが、自分自身の健康や食品への不安は減少しているとした。JR奈良駅前でも同様のアンケートを実施したが、福島産や東北産のものへの忌避率が依然根強いことから、これらの誤解を解消するべく活動を続けていくと結んだ。出席者からは草むらでの測定方法のアドバイス、奈良県における福島産の流通などについて質問があった。

 

高校生による放射線に関する研究発表③

「国内海外の高校生と共に考えた放射線教育・福島での取り組みから」

●福島県立福島高等学校(指導:原尚志教諭)

 

 「福島の正しい現状を知り、それを国内外に発信する」ことを目的に活動を続ける福島高等学校からは、4人の生徒が登壇。2015年3月のフランスでの活動報告をもとに発表を行った。2014年6月、同校生徒をはじめ、福島県の4つの高等学校、県外の6つの高等学校の協力を得て、生徒の学校や家庭での個人線量の測定をD-シャトルを用いて2週間実施。また、海外では、フランス、ポーランド、ベラルーシの高校に同様の測定を依頼。合計216名の測定結果から、1年間の個人線量を算出し、学校、地域ごとの分布を箱ひげ図で示した。ここから、福島県内における年間線量の中央値は自然放射線値内にあり、国内や海外と比較しても決して高いものではない、とした。さらに、福島県産の食品が科学的にど安全と確認されているにもかかわらず、不安の声は依然として高く、価格の低迷や買い控えの悪循環が生じていることを報告。今後も放射線への知識を深め、福島の現状を少しでも広く発信していくと語った。

 

高校生と専門家による意見交換

● ファシリテーター:飯本武志(東京大学環境安全本部)

● 磯部久美(神戸学院大学研究支援グループ)

● 実吉敬二(東京工業大学 放射線総合センター准教授)

 

 

 最初に、発表を行った高校生同士の意見交換が行われた。アンケートの調査方法や放射線の計測場所の選定などについての質疑応答があり、高校生では活動にも限界があるため、学校同士の連携も必要という意見が出た。続いて、ファシリテーターである飯本氏とともに、専門家を代表して磯部氏と実吉氏が登壇。実吉氏は「専門家にもさまざまな意見があり、答えもひとつではない。実感を大切にした方がいいこともある」と話し、磯部氏は「自然界には放射線があり、人体にも放射性物質はあることを知らない人が多い。その点も踏まえ、放射線が人体にどれだけ影響があるかを調べてみれば安心感も違うのでは」「ラディと福島に設置されたリアルタイム線量計とでは空間線量の値が違い、不信感を持つ生徒も多い。しかし、それは性能の違いによるものなので、そういった点もアピールしていってほしい」と話した。また、教育現場からの声として、指導した3人の教諭からは「こういう活動を行っていると批判されることも多く難しい面がある」「放射線への理解を深め、それを教育に活かすためにも、リーズナブルで正確な線量形というものが必要」との意見が出た。最後に飯本氏が「専門家から見ればまだまだ未熟かもしれないが、彼らの知見や成果を共有する場を増やし、自由な発想を阻害しない環境をつくることも我々の大切な仕事」と語り、発表を行った高校生への盛大な拍手をもってセッションを終了した。

Copyright © 2013-2017 公益財団法人日本科学技術振興財団