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教員向け研修会

放射線教育授業実践事例12:北海道札幌市立宮の森中学校

放射線教育授業実践事例12:北海道札幌市立宮の森中学校

 中学校3年理科「エネルギー資源とその利用」の単元として次のような6時間扱いの指導計画のもとで、5時限目の授業「放射線の性質」が北海道エネルギー環境教育研究会の公開授業として11月26日に札幌市立宮の森中学校理科室で行われた。担当教諭は森山正樹氏で、対象は3年1組の生徒30名だった。

○指導計画
1時:生活を支えるエネルギー資源といろいろな発電方法
2時:放射線とは(霧箱実験)
3時:北海道の発電とエネルギー事情
4時:放射線の利用(放射線技師による講演)
5時:放射線の性質(簡易放射線測定器“はかるくん”、バリウム133)
6時:未来のエネルギー社会を志向する

○「放射線の性質」授業の流れ
授業の流れとして50分の中に「つかむ」(10分)、「探る」(25分)、「解釈する」(10分)「つなげる」(5分)を入れた。
【つかむ】
・大宮から仙台へ向かう新幹線内の放射線量を予想する。
・実際に教員が測った放射線量のグラフを見る。
・数値が変化する理由を考える。


<新幹線で測定した結果を説明>


<板書の様子>


<森山教諭が実際に測定した結果をグラフ化したもの>

 数名の生徒が黒板に自分で考えた予想のグラフを書き、その曲線の理由を述べた後、教員が実際に測定した結果(グラフ)を示し、トンネルに入ると数値が変化したことを明らかにし、次の学習課題を生徒に示した。
「トンネルを通過するとき、放射線量が変化するのはなぜだろうか」


【探る】
 簡易放射線測定器「はかるくん」を使い、グループごとに次の実験を行った。なお線源は日本アイソトープ協会から借りた「バリウム133」を使い、遮蔽物には岩や水(ペットボトル)を使った。また距離がわかるシートは事前に教員が作成し、準備した。
・放射線量と距離の関係を探る実験 ⇒グラフ化する。
・放射線量を遮蔽する(弱める)実験 ⇒放射線量の増減に着目する。

 講義の時と違って、実験になると生徒たちに笑顔が見られ、公開授業という緊張感を感じさせないほどリラックスし、グループ内で協力しながら、線源(バリウム133)の測定が始まった。


<距離の違いによる測定の様子>


<バリウム133>


<岩や水による遮蔽実験の様子>


【解釈する】
・実験から導き出した考えを交流する。
・新幹線内の放射線量の変化を説明する。
 ⇒放射線量は、線源からの距離が遠ざかるほど少くなり、岩石や水などにより遮蔽できることから、トンネル内では放射線量が変化することを説明できるのではないか、と森山教諭が生徒になげかけた。


【つなげる】
・放射線とどのようにかかわって暮らしていくべきか、これまでの学習を振り返って自分の考えをまとめる。


生徒の書いたワークシートより抜粋

<結論>
線源からの距離が大きくなるほど、線量率が小さくなっていった。その増え方や減り方には、特徴があり、放射線の計数率は、距離に反比例する。
<振り返り>
放射線とは、危険なものというイメージしかなかったが、講演会や先生の話を聞いて、「なかったら困るもの」という事がわかった。医療にも使われている事を初めて知った。しかし、害があるものではあるので、放射線の多い所には、あまり近寄らない。医療に使われているように、放射線を上手に使ってほしいと思った。

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