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公開パネル討論 今やる、放射線教育 (NPO法人放射線教育フォーラム主催)

公開パネル討論 今やる、放射線教育 (NPO法人放射線教育フォーラム主催)

 平成25年11月10日(日)、東京慈恵会医科大学高木2号館南講堂において、NPO法人放射線教育フォーラムが主催する表記のシンポジウムが開催されました。

第1部では、各地域で放射線教育に取り組まれている5名の先生による実践事例の報告がありました。

●宗像克典先生(中島村立吉子川小学校 教頭)
「福島県における小中学校連携による放射線授業の試み」

前任校は小中一貫校で、中学生が小学生に教える交流授業を普段から実践。これを放射線の授業でも展開したところ、中学生は「教える」ために積極的に学習に取り組むようになり、また小学生も分からないところは中学生に質問して教わり、共に学習への高い意欲付けがなされました。今後は、思考の履歴を活かした学習活動や生徒の変容の評価方法について工夫するとともに、現任校のある村内の幼稚園から中学までの、各学年に応じた計画的な学習を実践する予定とのことでした。

 

 

●原田忠則先生(広島市立江波中学校 主幹教諭)
「広島の中学校理科における放射線教育のカリキュラム」

過去の経験では、情報量が多すぎると生徒には知識が定着しなかったため、現在は放射線に関する事象を判断できる能力や態度の育成を目指し、情報を物語として整理して提示。例えば、放射線は6時限の電気エネルギーを題材にしたカリキュラム内で「透過」「自然放射線」に限定。そしてより深い理解のために、他の溶液や化学変化、遺伝等の単元で、「すきま」「原子」「DNAへの影響」の概念を理解させておくことも重要だと主張されていました。

 

 

●前田勝弘先生(長崎市立小ヶ倉中学校 教諭)
「長崎の小中学校における放射線教育」

二つの中学校の3年生理科の授業で放射線の授業を3時限ずつ実施。両校とも1,2時限目の放射線の性質、測定実習、霧箱観察は同じで、3時限目にA校では放射線の利用を、B校では健康被害を中心に実施したところ、授業後の放射線に対する生徒のイメージに差が表れました。授業内容は生徒に大きな影響を与えるため、今後、何時間の設定でどのテーマをどこまで扱うか、など課題はありますが、被爆地・長崎での放射線の正しい知識・理解のための学習の経験は、福島再生のヒントになると確信しているという言葉が印象的でした。

 

 

●畠山正恒先生(聖光学院中学校高等学校 教諭)
「日本の理科教育に欠けているもの – 私は放射線をどのように教えているか」

「放射線」については、物理・化学・生物・地学といった科目間をつなぐ絶好のテーマであることから、生徒の反応を見ながら柔軟にストーリーは変えつつ、太陽、宇宙構造、恒星の進化、放射、熱力学、化学結合・化学反応、岩石・鉱物というものを、それぞれに関連付けて授業を実施。これは私立の中高一貫校という特性を活かしてこその事例ですが、教科書で単元を教えるというものではなく、自然科学を体系的に教えることの重要性を説かれていました。

 

 

●平田文夫先生(北海道大学エネルギー教育研究会 統括幹事)
「教育課程に位置付けられたエネルギー環境教育パッケージプログラム – 小中学校での放射線教育の定着及び浸透を図るために – 」

エネルギー教育が学校教育になかなか定着・浸透しないため、当研究会で大学・教員・専門家の異分野が協力して、エネルギー環境教育用のパッケージプログラム及び指導資料を作成。これの小6と中3に放射線の単元があります。しかし指導者自身の知識や周辺の理解の獲得など、学校現場でのハードルはまだ高く、教員が信念を持って自らの授業を実践できるに至るよう、今後も継続的に、出前授業や研修会等を通じてサポートしていきたいとの想いを伺いました。

 

 

第2部では、宇野賀津子先生((財)ルイ・パストゥール医学研究センター、NPO法人知的人材ネットワークあいんしゅたいん)による、「低線量放射線の生体への影響と食の重要性」と題したご講演がありました。

福島原発事故後、宇野先生は免疫の専門家として、「放射線の影響を過小に言うも過大に言うも不正義!」の信念のもと、福島県内外で市民の皆さんに寄り添いながら、数多くご講演されています。その内容の一例として、放射線も老化や各種疾患、発がんの原因となる活性酸素を発生させるが、気をつけるべきは放射線だけではなくたばこや飲酒、肥満などもあること、被ばく以降の生き方で20年先、30年先は変わること、笑い・生き甲斐・抗酸化食品などによる免疫力アップでがんを克服できること、などを分かりやすくお話しいただきました。

 

 

第3部では、高畠勇二先生(練馬区立開進第一中学校校長、全国中学校理科教育研究会顧問)をコーディネーターに迎え、第1部の実践報告者5名および第2部の宇野先生をパネリストとしたパネル討論が実施されました。

全国各地から来られている会場の参加者から、放射線の授業の位置づけや数値の取り扱い、外部の協力についての質問や事例紹介、また福島が抱える現在のジレンマといった悩みなどが寄せられ、それにパネリストが答える形でさらに議論を深めていきました。

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