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理科とエネルギー教育研修会

“理科の視点”で考えるエネルギー教育の授業づくり
〜新学習指導要領に対応した実践のポイント〜
(「理科とエネルギー教育研修会」:主催/東京都中学校理科教育研究会・東京電力株式会社)

 平成22年度「理科とエネルギー教育研修会」(主催/東京都中学校理科教育研究会・東京電力株式会社)が、11月27日に横浜火力発電所「トゥイニー・ヨコハマ」で開かれた。理科の視点から見たエネルギー教育のあり方や授業づくりへの理解を深めるもので、小・中学校の教員ら約70名が参加。基調講演と事例発表、選択制のワークショップなどで意見交換したほか、発電所内の見学も行った。当日の模様をピックアップして紹介する。

【基調講演】
「今回の小・中学校新学習指導要領改訂と理科教育」

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官
清原洋一 氏

“実感伴う理解”と“進んで探究する力”を育てる

 来年度から小学校で、平成24年度から中学校で全面実施となる学習指導要領では、改正教育基本法などを踏まえた内容の見直しが行われています。ここでは、理科に関わる部分の改善点を概観していきましょう。(講演の詳細は動画をご覧ください。)

 また今回の改訂の背景に、子どもや国民全般の「理科離れ」があることも見逃せません。理科の授業は他教科と比べて「おもしろい」と答える子どもは多いのに、学習内容が生活や自分の将来に役立つと感じていないことが大きな課題です。科学が身の回りのさまざまな場所で活用されている事実を知り、科学的な思考力や判断力は生きるうえで役立つことを実感させる必要があります。

 小・中学校の理科は、生涯にわたって科学に関心を持つ国民を育てるための出発点です。学校現場の先生方には、新学習指導要領の主旨を踏まえた、これまで以上に充実した実践を期待しています。

【事例発表】
「エネルギーの認識を深める放射線の学習」
〜新学習指導要領に沿った放射線教育の先行的実践〜

練馬区立中村中学校
永尾啓悟 教諭

出前授業で身近なエネルギーに目を向ける

 新学習指導要領では、中学3年・理科の学習内容に「放射線」が盛り込まれた。昭和44年以来およそ40年ぶりの復活で、ほとんどの教員にとって指導経験のない“新分野”とも言える。東京都中学校理科教育研究会では、放射線に関する指導ノウハウを蓄積し現場の実践を支援するため、当該単元の指導計画の立案と、授業実践による検証作業を行っている。永尾教諭の実践は、同研究会作成の指導計画を部分的にアレンジし、同校3年生で実施したものだ。

 単元は全6時間計画。第1時は導入として、産業革命以降の社会の変容とエネルギー消費の拡大、化石燃料の利用と弊害などを概観した。第2時は、電気エネルギーと自分たちの生活のつながりについて考えた。東京電力の講師による出前授業で、暮らしを支える電気の重要性や、電力の安定供給を目指す取り組みなどを学んだ。第3時では、手回し発電機による発電体験に続き、模型での実験も交えながらさまざまな発電方法のしくみを学習した。

豊富な実験・観察で放射線を体験的に学ぶ

 第4時以降は原子力と放射線に焦点を当てていく。原子力発電のしくみと特性を理解したうえで、放射線のイメージについて話し合った(連想するもの、放射線と放射能の違い、どんな場所にあるかなど)。続いて、簡易放射線測定器「はかるくん」を使って校内の自然放射線を測定。第5時は測定結果の比較考察とともに、花崗岩やカリ肥料など複数のサンプルで放射線量の違いを比べる実験や、霧箱での放射線の飛跡観察を行った。第6時は学習のまとめとして、新エネルギー利用の現状や将来像を見ながら、エネルギーの観点から自らの生活を振り返り、改善できる点などを話し合った。

 「放射線やエネルギー・環境問題への生徒の関心は予想以上に高く、題材として十分実践可能という手応えを感じた」と永尾教諭。一方で、生徒の好奇心が教科の学習範囲を超えて広がるため、指導や対応に苦慮する場面もあったと振り返る。今後も指導計画のブラッシュアップを重ね、「科学的で客観的な事実を理解したうえで、原子力や放射線の利用に対して自分なりの考えや立場を持てるような授業内容を目指していきたい」と語った。

【ワークショップ/施設見学】
「資源・エネルギーについての言語活動」〜利点や欠点を科学的に正しく判断するために〜

品川区立荏原第一中学校
牧野崇 主幹教諭

複数の視点で情報を吟味できるディベート活動

 新学習指導要領では、全教科に共通する重点項目として言語活動の充実を挙げている。科学的な思考力や表現力を高める理科的な言語活動のあり方を検討するため、牧野教諭は3年生第1分野「科学技術と人間」の単元で、ディベートや意思決定の場面を取り入れた授業を実践した。

 「風力・太陽光・火力・原子力の各発電のうち、どれが今後の日本にもっとも有効か」という課題を教諭から提示。クラスを4チームに分けて担当する発電方法を割り振り、討論に備えた調べ活動を行った。担当する発電方式だけでなく、反対尋問のため相手チームの方式の長所・短所も調べる。複数の情報源のデータを照らし合わせ、各自の持ち寄った情報を比較する過程を通じて、誤った情報が淘汰され、より客観性の高い科学的根拠を獲得する様子が見られたという。

 弁論や尋問の際にチームとしての意識決定が求められるため、どの生徒も課題意識を高めることができた。また、授業のまとめに各自の考えを作文にまとめさせたところ、ディベートの経緯を踏まえた多様な結論が出たという。

 教諭は、言語活動や意思決定場面の設定により「科学的な見方や考え方の深まりを見ることができたのは大きな成果」とする一方、ディベート活動の充実のためには、1・2年生段階からの実践の積み重ねが重要だと指摘した。

エネルギー教育実践のためのワークショップ

 新学習指導要領で導入される「エネルギー教育」の実践を行うにあたり、効果的な学習方法の一つとして実験が挙げられることから、企業や団体による実験のワークショップが展開された。

 今回の学習指導要領改訂で「放射線」の学習が復活したことを受け、日本科学技術振興財団の掛布智久氏が文部科学省が貸し出しを行っている簡易放射線測定器「はかるくん」の使い方や関連する実験を通じて「放射線」の学習展開について提案を行ったほか、ケニスや島津理化など教材メーカーによる実験機器を利用したエネルギー教育のあり方について紹介が行われた。

最新鋭の発電所で授業づくりのヒントを探す

 研修会のまとめとして、会場となった横浜火力発電所の施設見学を行った。同発電所は、液化天然ガス(LNG)を燃料とするコンバインドサイクル発電設備を持つ火力発電所。LNGを燃焼させてガスタービンを回し、その余熱でつくった蒸気で蒸気タービンを回転させる“ダブル発電”により、環境への負荷低減と高い熱効率を実現している。

 参加者一行は、中央操作室や巨大なタービンが並ぶフロア、高さ200mの排気塔にある展望室などを見学。施設の運用体制やコンバインドサイクル発電の技術的特性などについて質問し、ガイドの解説に熱心に耳を傾けていた。

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