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防災教育とともに考える放射線教育(福島県教育委員会主催フォーラム)中

 

子どもの発信力を身に付ける

=対話の仕掛けをつくる=

 

 福島県の放射線教育では、子ども自身が判断し、自分のことばで発信する力が求められている。正しい知識を持たないことがいじめや風評被害の一因。避難生活の課題を子どもたちはよく見つめていた。実践協力校で進めてきた教育の成果を子どもが聞き合い、積極的に質問していたが、そのように企画した主催者の願いは何であったのか。 

 

■自分の言葉で話す訓練

    質問に答えて活発な発表が続いたフォーラム

 

 「私たちはこれまでにたくさんのことを学んできたので、その知識を発信し、福島県民として自信を持って生きていきたいと思います」と力強く語った西郷第一中学校3年生の相山さん。

 「これから先、福島県の人に対して心ない言葉をかける人が、もしいたとしたら、僕は強い心で、勇気を持って、正しい知識を伝えます」と大きな声で宣言した行仁小学校の4年生の平山さん。「そのためにも、たくさんの人に放射線のことを知ってもらいたいし、教えたいので、僕はこれからももっと放射線のことを詳しく学習していきたい」と抱負を語った。「放射線が原因でのいじめや偏見などが起こらないよう、今回学習したことをもとに、多くの人に放射線のこと、福島県のことを正しく理解してもらいたい」と話した三春中学校の渡邉さん。

 子どもたちは共通して「福島県以外の人に放射線についての正しい理解」を求めていた。2016年に福島県から避難していた中学生が県外各地でいじめを受けて騒ぎになったこともあり、福島県教育委員会は、県出身の子どもが県外に出るようになった際にしっかりと自分の口で説明できるように指導していることが反映したようだ。

 

■コミュニケーション力と助け合う力

 

司会の阿部洋己先生(右)と池田麻美さん(左)

 

 「災害時は、自分の意思を伝え、他者の考えに耳を傾けるコミュニケーションが大切」と話した江名中学校3年生の佐河さんは、家族と防災について話しておくことや、自分の命を守る自助、他人の命を守る共助、そしてさまざまな機関と協力する公助の大切さを訴えた。

 司会の阿部先生と池田さんは、客席にいる子どもたちが寄せた「質問・疑問カード」を読み上げたりして、放射線・防災教育に取り組むにあたって、子どもたちや先生たちが何を考え、何を感じていたかを引き出していた。

 防災マップを作った明和小学校の菊地さんには「地図を作ってみて一番印象に残ったことは何ですか?」と聞き、菊地さんは「1年生が見ても分かるように、あまり文字を使わずに、なるべくマークを作って使うようにしたことです」と答えていた。上級生が下級生を思いやれるのも一つのコミュニケーション力だろう。

 西郷第一中学校の相山さんは「いじめられている人が近くにいたらどうしますか?」との質問に、「目を背けるのではなく、その人を助けてあげられるように努力して、無理であれば先生などに相談して救ってあげる」と答えた。

 

■子どもの質問を引き出す工夫

 司会の池田さんは、会場の子どもたちの質問・疑問カードを読み上げるとき、必ず名前と学校名も読んだ。すると呼ばれた子どもやその周りの友人たちが喜びの声を上げた。

子どもの質問を引き出す池田さん

 

その様子は他校の子どもたちを刺激し、さらに熱心に発表を聞いて、質問・疑問カードに向かって鉛筆を走らせていた。会場の一体感がだんだんと高まった。

 防災と放射線の両教育の相互に質問を出し合う場面もあった。江名中学校の発表に対しては、放射線教育の西郷第一中学校の生徒から「避難所運営で大切なことや大変なことは何ですか?」との質問に、江名中学校の佐河さんは「避難した人の年齢や状態はさまざまなので、まずそこを理解して、なるべくそれぞれの人に適した対応を取るように努めることです」と即答した。

会場からも次々に手が挙った。

 

 2人の司会者のコンビの良さは、実は池田さんは中学2~3年生のときの担任が阿部先生だったことに起因する。その縁で今回の役を引き受けることになったという。

 阿部先生は最後に「学んでいることによって、実際に自分たちの命が救われることがある。皆さんはいろいろな学びをし、いろいろなことを知ってもらう、いろいろな経験をして、将来に何かあったときに、自ら考えて判断して、行動できるという、まさに大人への第一歩を進んでいるのではないかと思います」と締めくくった。

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