各地で行われている学習の事例や取り組みなどを取材して紹介しています。

放射線教育授業実践事例6:東京都港区立御成門中学校

放射線教育授業実践例6

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授業を終えて

放射線教育授業実践事例6:東京都港区立御成門中学校
大学教員による出前授業
講義と実験で放射線を知るきっかけづくり

人体への影響と修復のメカニズムを解説

 大学教員がゲストティーチャーとなり、中学生に放射線を指導する出前授業が、1月19日に港区立御成門中学校で行われた。
 都内の4大学で組織する「学際生命科学東京コンソーシアム」(お茶の水女子大学、学習院大学、北里大学、東京医科歯科大学)と港区教育委員会が連携し、6校の区立中学校で実施した。御成門中では3年生全員が参加し、放射線の基礎を学ぶ講義と実験を行った。

 授業の前半は、北里大学講師の坂本光氏が、放射線の種類や単位、自然放射線の存在、医療や産業での利用など、放射線に関する基礎的な知識を解説した。
 放射線による人体への影響については、しくみも含めて詳しく紹介。放射線を受けると細胞内の水の一部が活性酸素となり、遺伝子や細胞を傷つける。「鉄がさびるのと同じように、細胞もさびてしまう」と説明した。
 一方で、「人体には傷ついた細胞を元に戻す力がある。体内の活性酸素も、たんぱく質やビタミンなどによって消去することができる」と細胞の修復能力にも言及。まとめでは、「放射線をよく知らないまま、恐がったり恐がらなかったりすることが一番危険。まずは正しく理解することが大切」と呼びかけた。

授業風景1
<授業の様子>

測れる・見られるものとして向き合って

 後半は、お茶の水女子大学非常勤講師の森田由子氏の指導で、放射線の計測と観察の実験に取り組んだ。まずは環境放射線モニタで教室内のガンマ線を測定。複数回測った平均値をワークシートに記入し、身近な場所にも放射線が存在していることを実感した。

教室内の放射線量を計測
<教室内の放射線量を計測>

ワークシートに計測結果を記入
<ワークシートに計測結果を記入>

 霧箱での観察実験では、人体に影響のない放射線源(マントル)を入れた装置と空の装置を並べて、放射線の出方を比較した。「細い飛行機雲のようなものが、ひゅっと現れます」という森田氏の説明を聞いた生徒たちは、ペンライトを手に装置を注目。放射線の飛跡が現れると、「すごい」「見えた」と声を上げていた。

霧箱の実験装置
<霧箱の実験装置>

放射線の通った後に糸状の白い筋が出現
<放射線の通った後に糸状の白い筋が出現>

 「今日の実験のように、測ることも見ることもできるものだと知ったうえで、放射線と向き合ってほしい」と森田氏。生徒たちからは、「いままで放射線にはあまり目を向けていなかったが、今後はニュースなども注意して見ていきたい」といった感想が出ていた。

放射線教育授業実践事例5:鹿児島県鹿屋市立第一鹿屋中学校

放射線教育授業実践例5

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まとめ

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放射線教育授業実践事例5:鹿児島県鹿屋市立第一鹿屋中学校

校内研究授業
3年生・理科で「放射線」授業実践 「原子」の発展的学習として

 鹿屋市立第一鹿屋中学校(学校長:中川和喜代氏)ではこのほど、3年生理科「7科学技術と人間」のエネルギー資源の単元にて放射線の基本的な性質について実験をまじえて学ぶ授業を行った。

授業風景1
<授業の様子>

 授業を行った原口栄一教諭は数年前から放射線の学習に関する授業研究を進め、同学年の1年生・2年生の段階から、理科の単元で発展的な学習として、放射線を関連付けて授業を行ったほか、道徳の授業でも「放射線」を題材にした授業を行うなど、多様な場面で「放射線」を授業の中で取り扱った経験を持つ。

 原口教諭は今回の放射線の学習を単元の発展的学習として位置づけた。授業の導入では、1年時の火成岩の学習と2年時の原子の学習、そして2年時の道徳で学習した放射線の特徴を復習するところから始まった。原口教諭が理科ノートの空欄に当てはまる放射線に関する要点を生徒の反応を見ながら問いかけ、生徒達は学習時の記憶をたどりながら、発言し、理科ノートに記載していく。この一連の確認の中で原口教諭はこの放射線が人体へ影響を及ぼす説明の際、原口教諭は手作りのα線、β線、γ線、中性子線の模型とDNAの模型を用いて放射線がどのように、人体に影響するのかを解説した。

授業風景2
<放射線がDNAを傷つける様子を説明>

授業風景3
<原子力発電所の模型を用いた福島県第一原子力発電所の事故の説明>

 一通りの振り返りを終えた後、当授業のテーマは放射線の性質を調べることと、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故によって起こった放射線の汚染の広がりについて知ることを目標として伝えた。

 最初に取り組んだ実験は福島第一原子力発電所で起きた事故によって放出された放射性物質と放射線量の分布図に表示された数値を見ながら、各班に配られたバナナやナッツ、船底塗料などの試料(特性実験セット)から出ている放射線を「はかるくん」を使って計測し、試料から出ている放射線量は分布図の地域とどこが一番近いか、また、試料の中で一番放射線量が高いものがどれであるかを調べ各班に放射線を出す試料が配られた。

授業風景4
<特性実験セットでヒマワリの種の放射線の量を測る>

授業風景5
<福島県の放射性物質の分布図、自分たちが計測した放射線量を比較>

続いて、アウトドア用のランタンのマントルを放射線源に用いた、霧箱の実験で放射線の観察を行った。生徒は霧箱の中をさまざまな角度から覗き込み、ライトの位置を変えるなどしながら「見えた!」「見えない!」と声を上げ、放射線が描く白い飛跡を興味深く観察した。

授業風景6
<霧箱の観察の様子>

そして、2つの実験を終えて、時間に余裕がある班は理科室の中にある気圧計や電流計などを放射線試料に近づけ、数値的な変化が無いかを観察し、結果として専用の機械(=放射線測定器)でなければ放射線は測定できないことも体感した。

授業風景7
<放射線測定器「はかるくん」の他に気圧計・静電気チェッカーなどでも放射線による変化が確認できないかを観察>

各班がそれぞれ得た実験結果をホワイトボードに記入したものを黒板に掲示し、各班の実験結果を比較した。

授業風景8

 原口教諭は授業のまとめとして、実験で確認した放射線の特徴を福島県の人々が今、生活している状況にあてはめ、屋根に近いところの放射線量が高いことと、床に近いところの放射線量が高い理由を説明した。

授業風景9
<福島県の家屋の放射線の状況を説明する原口教諭>

そして、鹿児島県にある九州電力川内原子力発電所が同様の事故が起こった場合、鹿児島県でも同じような状況になることを説明した。

授業をすすめるうえで原口教諭は世間の情報・状況として確定していないこと(事実関係や国としての方針など)は基本的に賛成論も否定論も両方取り扱うことでバランスに配慮していると話す。また、授業中に使用したα線、β線、γ線、中性子線の模型やDNAの模型、チェルノブイリ原子力発電所の模型など、映像資料として出回っているコンピュータグラフィックやアニメーションでは伝わりにくいものがあるという観点から、手作りの教材を利用している。

放射線教育授業実践事例4:東京都練馬区立中村中学校

放射線教育授業実践例4

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5時間目
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6時間目
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まとめ

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放射線教育授業実践事例4:東京都練馬区立中村中学校
震災と原発事故を経て指導内容に変化

放射線の性質を実験で確かめる

永尾 啓悟教諭
<永尾 啓悟教諭>

 練馬区立中村中学校では今年度、3年生理科「科学技術と人間」の単元で、新学習指導要領の内容に沿って「放射線の性質と利用」を扱った。2011年12月13日に、東京都中学校理科教育研究会の公開授業として実施され、多くの教育関係者が見学に訪れた。
 指導した永尾啓悟教諭は前年11月にも、3年生の同単元で放射線の授業を実施している。震災と原発事故を経た今回の実践では、事前のアンケートで生徒の興味関心を把握し、指導内容を再検討した。単元は全6時間計画で、終わりの2時間を放射線の指導にあてた。

世論調査と生徒のアンケート回答を比較
<世論調査と生徒のアンケート回答を比較>

 1時間目は、生活を支える電力の重要性に目を向けさせ、エネルギーのベストミックスの一部として原子力が推進されてきた経緯を確認。世論調査の結果を比較し、原発事故を契機に国民の原子力への考え方が変化していることを読み取った。
 後半は、簡易放射線測定器「はかるくん」を使った実験で放射線の基本的な性質を学んだ。生徒たちはグループに分かれて機器を操作しながら、放射線源から離れるほど数値が下がることや、金属などの壁による遮蔽の効果を確かめた。
【写真下】

放射線の性質を調べる実験
<放射線の性質を調べる実験>

リスクと利益判断し、意思決定を

 2時間目の冒頭では、前時後半の実験を振り返りながら、放射線防護の三原則(線源から距離を取る、遮蔽する、受ける時間を短くする)を学んだ。
 続いて、生徒へのアンケートで関心の高かった「放射線から身を守る方法」を考えるため、除染の実験を行った。土の上にまいたカリ肥料を放射性物質に見立て、これまでに学んだ放射線の性質を想起しながら除染方法を検討。

放射性物質が降り積もる前の放射線量を測定
<放射性物質が降り積もる前の放射線量を測定>

放射性物質が降り積もった後の放射線量を測定
<放射性物質が降り積もった後の放射線量を測定>

表土を削って新しい土を加えたり、水を入れて土を洗ったりする方法の他、土の上に薄い銅板を敷き詰めたグループもあった。

放射性物質を水に沈める班
<放射性物質を水に沈める班>

土を新たに敷き詰める班
<土を新たに敷き詰める班>

銅板で地面を覆う班
<銅板で地面を覆う班>

各班の除染の結果を比較
<各班の除染の結果を比較>

 学習のまとめとして永尾教諭は、「原子力だけでなく、どんなものにもリスクと利益がある。両面を正当に評価することが大切。社会のさまざまなことを自ら判断して意思決定するとき、理科の授業で学んだことをぜひ生かしてほしい」と生徒たちに呼びかけた。

練馬区立中村中学校 永尾先生の昨年の授業はこちら

放射線教育授業実践事例3:福島県郡山市立明健中学校

放射線教育授業実践例3

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まとめ[5:24]
まとめ

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放射線教育授業実践事例:福島県郡山市立明健中学校

平成23年度明健中学校区小中一体・連携による都市型小中一貫教育授業研究会
生徒の高い関心に応え、1年生・理科で「放射線」授業実践

「地震・津波」の発展的学習として

 郡山市立明健中学校(学校長:伊藤 幸夫氏)ではこのほど、1年生理科で放射線に関する授業を行った。「地震の伝わり方と地球内部の働き」の単元(全7時間)のうち2時間を使い、放射線の基本的な性質や人体への影響を、実験をまじえて学んだ。

授業風景1

 指導した佐々木清教諭によると、夏休みの理科の課題(自由研究レポート)で、6割前後の生徒が放射線について調べてきた。「興味関心に応えるには1年生から取り上げる必要がある」と感じ、単元の発展的学習として位置づけた。
 授業の導入では、東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故の経過を、映像や写真を見ながら振り返った。また、佐々木教諭が測定した校庭の放射線量を示し、身近な放射線の分布の現状を確認。その際に「なぜ、校庭における放射線の量に違いがあるのか?」と生徒に問いかけ、生徒個人の考察を書き出した後、ペアで意見交換を行い、さらに班内で考察をまとめて発表した。

データを分析し判断する力を育てる

 続いて、夏休みの課題で放射線について調べた生徒のうち3名が発表。

授業風景2

発表者の女子生徒は、主な放射線の種類や特徴、放射能と放射線の違いなど基礎的な事項を押さえた。

授業風景3

 南相馬市やいわき市、郡山市の放射線量の変化をグラフにまとめた女子生徒は、「私たちは長期間にわたって放射線と向き合っていく必要がある」と述べた。

授業風景4

 同校の自然科学部に所属する男子生徒は、部の先輩とともに測定した、郡山市内の河川で行った放射線量の計測データを発表した。
それぞれの発表を通じて佐々木教諭は各発表のデータから読み取れること、予測できることを生徒各自が考察する作業を行った。

授業風景5

 後半は霧箱をもちいて放射線を観察する実験を行った。最初は放射線の分布の理由を考察した同校の校庭の土を用いた。校庭の土からは放射線の飛跡を確認できなかった。

授業風景6

続いてランタンのマントルをまきつけたネジを霧箱に入れた生徒たちは、「出てる出てる」と声を上げ、白い飛跡を興味深そうに観察していた。

授業風景7

 授業で発表した自然科学部の男子は、「震災後にインターネットなどで放射線のことを調べてきた。危険もあるけど、身の回りで利用されている分野もあるので、もっと知りたい」と話していた。
 「今回の災害を通じて、データを正しく分析し、自ら判断する力を育てる必要があると感じた」という佐々木教諭。「子どもたちは、苦しんでいるみんなのためにも放射線を学ぼうという意識を持っている。授業や教室掲示、日常の声かけなどで折に触れて情報を提供していきたい」としている。

放射線教育授業実践事例2:東京都八王子市立元八王子中学校

放射線教育授業実践例2

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※この授業は平成23年1月に実施されたものです。

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2時間目:放射線を見てみよう
導入[5:39]
導入
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まとめ[3:23]
まとめ
3時間目:放射線とは何か
導入[5:26]
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まとめ[2:35]
まとめ

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東京都中学校理科教育研究会
東京都八王子市立元八王子中学校の「放射線」研究授業

都中理(会長=高畠勇二氏・練馬区立豊玉中学校長)が取り組んでいる放射線教育研究授業が2011年1月20日、八王子市立元八王子中学校(校長:田中史人氏)で実施された。

授業の担当は井久保大介教諭。井久保教諭は放射線については知識が乏しかったと話すが、日本生産性本部エネルギー環境教育情報センター主催の「原子力・放射線に関する教育職員セミナー」に参加するなどして指導法を学び、「放射線の性質と利用」の授業を組み立てた。

 目標は3つ。

  • 自然放射線や身近な放射線物質について知る。
  • 放射線は粒子であり種類によって遮蔽できることを知る。
  • 放射線の様々な利用を知る。

 生徒には放射線に対して「目に見えない危険なもの」、「人体に害がある」というイメージが先行している。そこで、実験を通して正しい科学的知識を身につけてもらうことを授業の目的とし、以下のように3時間の指導計画を立てた。

1時間目:身近にある放射線 『はかるくん』を用い、自然の放射線量と身近な放射線物質の放射線量を測定する。
2時間目:放射線を見てみよう 霧箱を作り放射線の飛跡を観察する。
3時間目:放射線とは何か 映像や資料を見て放射線の性質を知るとともに放射線の遮蔽実験を行なう。

 1時間目は『はかるくん』で教室内の自然放射線量、昆布や湯の花など身の回りにある品々の放射線量を測定し、自然の中だけでなく色々な物質からも放射線が出ることを学んだ。そして2時間目が中理研の研究授業(3年生)として公開された。

研究授業「放射線を見てみよう」

 「今日は放射線を見ます。でも、放射線は音がしないよね。見えないし、臭いもしません。では、どうやって見るのか。霧箱を作って、放射線の飛跡を観察します」

 井久保教諭はこう切り出して授業を始めた。

 生徒全員にシャーレ、エタノール、ドライアイスなど霧箱の組み立てに必要な材料が配られ、教諭の説明に従って霧箱製作に取りかかる。線源にはユークセン石(ウランやトリウムなどの放射性元素を含む酸化鉱物)、昆布、ランタンのマントル(芯)の3種類を用意した。

授業風景1

 シャーレの中央に、ユークセン石を置いて実験開始。暗幕を引いて暗くした理科室で、生徒たちはシャーレにLEDライトを当てて目をこらす。しばらくして「おー」と声が上がった。シャーレの底に張った黒い画用紙上に、細くて白い飛跡が現れ消える。「すごい。花火みたいだ」。あちこちで歓声があがる。

授業風景2 授業風景3 授業風景4

 続いて昆布、マントルを使ったが、飛跡の出現にばらつきがあった。しかし、ユークセン石からの放射線は全員が自分の目で飛跡をしっかりととらえることができた。

 実験後は考察。生徒たちから「放射線は四方八方に飛んでいた」、「飛跡に細いもの、太いものがあった」といった観察結果が発表された。発表にうなずいていた井久保教諭、「放射線には色々な種類や性質があることが分かりました」とまとめ、「それについてはさらに勉強していきましょう」と授業を締めくくった。

授業風景5

◆教諭のコメント「生徒全員が飛跡を視認することを目標にしましたが、放射線量の多いユークセン石の観測を最初に持ってきたので授業がスムーズに運びました」

3時間目「放射線とは何か」

 2月上旬、2年生を対象とした授業があった。

理科室の黒板に「放射線の性質」と学習内容が大書されていた。学習の目標は「放射線の種類とその性質について知る」こと。その方法として放射線の遮蔽実験に取り組んだ。

 井久保教諭は、放射線にはユークセン石から出たα線、β線、γ線のほかにX線、中性子線があることを説明。これらの放射線量が放射先に置かれる材料によってどう変わるのかを調べます、と実験の意図を伝えた。

 線源にはトリウムを含む粉末の船底塗料を使用。これをアクリル、アルミニウム、ステンレス、鉛の4種類の材質で囲む四面体の中に置き、各面から5cm離れたところでそれぞれの線量を測定した。室内には自然放射線があるので、その数値も測る。船底塗料の放射線の測定結果から自然放射線の数値を差し引いて正味の数値を得るためだ。

 8班に分かれて実験開始。室内はピーピーという『はかるくん』の計測音があちらこちらで重なって響いた。

授業風景6

 実験終了。そして考察。「どの材料が一番、放射線を遮蔽できたかな」。井久保教諭の問いかけに、生徒たちから「鉛が一番」などと答えが次々と返ってきた。

 教諭は「α線は紙、β線はアルミニウム、γ線とX線は鉛あるいは厚い鉄板で遮蔽できます」と図示しながら説明したうえで、「中性子線は水、コンクリートで透過を防ぐことができます。考察に書き加えておいてください」と指示して授業を終えた。

授業風景7

◆教諭のコメント「2年生で学ぶのは放射線という言葉まで。3年生になって原子核について学ぶので、α線、β線は粒子、γ線とX線は電磁波であると学ぶことになります」

4時間目「放射線との関わり方」

 指導計画の締めくくりとなる授業(2年生)。黒板に書かれた学習内容は「放射線の利用」。目標は「放射線の利用方法とかかわり方について学ぶ」こと。

 放射線がいかに人間生活に役立っているか―の学習から入った。画像を使い、手のひらを撮影した世界初のレントゲン写真、CTスキャン(コンピュータ断層撮影)、空港などの手荷物検査装置などX線利用のほか、放射線を照射してジャガイモの発芽を抑えるなどの農業利用、脳の深部の病変部にγ線をピンポイントで照射するガンマナイフ治療などを紹介した。

授業風景8

 広範な技術利用をひととおり紹介したところで、井久保教諭は「CTスキャンは1回の照射でどれくらいの線量を放射しているだろう。調べてみてください」と問いかけた。生徒たちは配布されているプリントの資料に目をやる。手が挙がった。「6.9ミリシーベルトです」。「はい、そうですね。胃のX線検診だと1回あたり0.6ミリシーベルトが放射されますね」と教諭。

※この授業は平成23年1月に実施されたものです。

★井久保教諭に聞きました

―放射線授業の着眼点は
新学習指導要領では、エネルギーの中の放射線、原子力発電の副産物としての放射線として扱うと理解しています。一方、現状のカリキュラムには「イオンと原子の成り立ち」が入っていて、現行の教科書はイオンを学習したあとエネルギーに入る流れになっています。その間に挟む感じで扱いました。
原子にも構成要素として粒子があり、1時間目の授業は、それが飛び出してくるのだよ、という話から『はかるくん』を使いました。「放射線ってなんだ」と生徒たちが驚いたところで、すかさず「見てみよう」というふうにもっていきました。私の場合、粒子の概念から授業に入りました。
―全4時間の授業を終えた感想は
生徒たちには、放射線は私たちの身の回りでたくさん利用されていること、そして放射線は遮蔽できるという性質を学んでもらえれば良いと思います。 時間数としては4時間ではちょっと足りない。放射線の有効利用についての調べ学習、原子力発電所の構造に各1時間を充てるとして合計6時間は欲しいと思いました。

放射線教育授業実践事例1:練馬区立中村中学校

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導入[6:09]
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都中理研究会
練馬区立中村中学校の研究授業
「放射線の性質と利用」

研究授業の背景

 平成24年度から中学の理科教育に約30年ぶりに復活する放射線。現役教師のほとんどが指導経験の無い未知の教育内容だ。このため、東京都中学校理科教育研究会(会長=高畠勇二・練馬区立豊玉中学校長)は授業実践を重ねることで指導の目標とカリキュラムの確立をめざし研究を進めている。
 その一環として昨年11月15日、東京都練馬区立中村中学校で3年生を対象に単元名「放射線の性質と利用」の研究授業が行われた。
 担当は永尾啓悟教諭。大学では建築を専攻したという同教諭は諸資料にあたり、専門外の放射線について自ら学んだ。高畠会長がまとめた8時間の単元指導計画を6時間にアレンジし、科学技術発展の流れを追いながら、原子力を中心とするエネルギー教育のなかで放射線を取り上げた。

授業のようす

 永尾教諭は3年生176人を対象に、「放射線は怖いか、怖くないか」というテーマで事前にアンケートを取った。結果は「怖い」が90%、「扱いを間違えると怖い」が4%だった。このため、授業は放射線に対する漠とした恐怖感を取り除くことをねらいとした。
 授業ではまず、黒板に学校内6か所で行なった放射線の測定結果を張り出した。前回の授業で行なったもので、理科室0.055マイクロシーベルト、校庭0.038マイクロシーベルト…といった測定値が並ぶ。こちらは放射線がごく身近なところに存在することを知ってもらうおうというデータだ。
 永尾教諭は生徒たちにアンケート結果を示した。「みんなが怖いと思っている放射線はごく身近なところにあるんだね。なのになぜ怖いと思うのか。それは得体が知れないから。正体が分かれば、放射線を楽しく学べ、理解できるのではないかな」と語りかけ、2つの実験から放射線の性質を考察する授業へと進めた。

 実験Ⅰは放射線源からの距離によって放射線量が変わる実験。花崗岩、カリ肥料、塩、湯の花の4つに線源から、それぞれ5cm刻みで20cmまでの線量を測る。
 実験Ⅱは材質および壁の厚さと放射線量の関係を調べる実験。放射線を出すトリウムが入った粉末状の船底塗料を線源にしてアクリル、アルミニウム、ステンレス、鉛で壁をつくり、壁が無い場合、5mmの壁1枚、10mmの壁2枚の3ケースについて放射線の遮蔽能力を測った。

はかるくん
<"はかるくん"の数値を読み取り、平均値を算出>

授業で用いたプリント
<授業で用いたプリント>

 実験のかたわら、教室に置かれた霧箱をのぞいて放射線の飛跡を視覚でとらえる試みも行なった。飛行機雲のように白い飛跡が見えると、生徒から「見えた!」と歓声があがった。

霧箱観察の様子
<霧箱観察の様子>

霧箱で観察された放射線の飛跡(赤枠内)
<霧箱で観察された放射線の飛跡(赤枠内)>

 考察では、生徒たちが実験データを読み取り、「線源から遠く離れると線量は減少する」、「物質によって放射線の出る量が異なる」、「放射線を一番遮蔽するのは鉛」など、数字にあらわれた放射線の性質を指摘していった。

計測値から分かる放射線の性質を説明
<計測値から分かる放射線の性質を説明>

 生徒がひととおり放射線の性質を学んだところで、永尾教諭は放射線を遮蔽している実例として原子力発電所が炉心を中心に建屋まで5重の壁に囲まれ安全が保たれていること、生活の中で医療器具の滅菌、植物の品種改良、テニスラケットの強化など多分野にわたって放射線の照射が役立っている現実を説明し、「今日の授業で放射線の正体が見えてきたと思います。間違った情報も飛び交う世の中ですが、ものごとを客観的に正しく見られるよう科学的知識を身につけておくことが重要だと思います」と、授業を締めくくった。

授業後の研究協議

 中理研の高畠会長はじめ授業を参観した他校の教師10数人で行なった研究協議では、授業内容について以下のような感想や提案があった。

  • ◆1時間では内容が豊富すぎるのでは。実験を減らしてポイントを絞り、生徒たちに考えさせる時間を増やしても良かったかも。
  • ◆放射線の危険性の側面は避けて通れない。しかし、材質によって放射線量を減らせる点に注目すれば、利用上の安全性に目を向けられると思った。
  • ◆生徒たちは放射線の利用に関心がある。この項目をもっとじっくり扱っても良いのではないか。
  • ◆原子力発電所に触れていたが、自然界の放射線といきなり結びつけるのは少々飛躍があるように思う。原子力エネルギーとの関係はうまく整理する必要があると思った。

永尾教諭は「時間が足らず、つい駆け足になってしまう」と、内容豊富な放射線授業のむずかしさをのぞかせていたが、授業後に回収した生徒のワークシートからは、放射線に対するイメージがプラスに転じる変化がうかがえ、ねらいは達成されたとした。
 放射線だけに絞っても教えたい内容はきわめて豊富。まして膨大な内容を持つエネルギー学習のなかで、放射線をどのように位置付けて授業内容を組み立てるのか、これからも研究授業を通してブラッシュアップが続く。

(完)

理科とエネルギー教育研修会

理科とエネルギー教育研修会

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基調講演の視聴

前編[8:24]
前編
後編[11:39]
後編

“理科の視点”で考えるエネルギー教育の授業づくり
~新学習指導要領に対応した実践のポイント~
(「理科とエネルギー教育研修会」:主催/東京都中学校理科教育研究会・東京電力株式会社)

 平成22年度「理科とエネルギー教育研修会」(主催/東京都中学校理科教育研究会・東京電力株式会社)が、11月27日に横浜火力発電所「トゥイニー・ヨコハマ」で開かれた。理科の視点から見たエネルギー教育のあり方や授業づくりへの理解を深めるもので、小・中学校の教員ら約70名が参加。基調講演と事例発表、選択制のワークショップなどで意見交換したほか、発電所内の見学も行った。当日の模様をピックアップして紹介する。

【基調講演】
「今回の小・中学校新学習指導要領改訂と理科教育」

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官
清原洋一 氏

“実感伴う理解”と“進んで探究する力”を育てる

 来年度から小学校で、平成24年度から中学校で全面実施となる学習指導要領では、改正教育基本法などを踏まえた内容の見直しが行われています。ここでは、理科に関わる部分の改善点を概観していきましょう。(講演の詳細は動画をご覧ください。)

 また今回の改訂の背景に、子どもや国民全般の「理科離れ」があることも見逃せません。理科の授業は他教科と比べて「おもしろい」と答える子どもは多いのに、学習内容が生活や自分の将来に役立つと感じていないことが大きな課題です。科学が身の回りのさまざまな場所で活用されている事実を知り、科学的な思考力や判断力は生きるうえで役立つことを実感させる必要があります。

 小・中学校の理科は、生涯にわたって科学に関心を持つ国民を育てるための出発点です。学校現場の先生方には、新学習指導要領の主旨を踏まえた、これまで以上に充実した実践を期待しています。

【事例発表】
「エネルギーの認識を深める放射線の学習」
~新学習指導要領に沿った放射線教育の先行的実践~

練馬区立中村中学校
永尾啓悟 教諭

出前授業で身近なエネルギーに目を向ける

 新学習指導要領では、中学3年・理科の学習内容に「放射線」が盛り込まれた。昭和44年以来およそ40年ぶりの復活で、ほとんどの教員にとって指導経験のない“新分野”とも言える。東京都中学校理科教育研究会では、放射線に関する指導ノウハウを蓄積し現場の実践を支援するため、当該単元の指導計画の立案と、授業実践による検証作業を行っている。永尾教諭の実践は、同研究会作成の指導計画を部分的にアレンジし、同校3年生で実施したものだ。

 単元は全6時間計画。第1時は導入として、産業革命以降の社会の変容とエネルギー消費の拡大、化石燃料の利用と弊害などを概観した。第2時は、電気エネルギーと自分たちの生活のつながりについて考えた。東京電力の講師による出前授業で、暮らしを支える電気の重要性や、電力の安定供給を目指す取り組みなどを学んだ。第3時では、手回し発電機による発電体験に続き、模型での実験も交えながらさまざまな発電方法のしくみを学習した。

豊富な実験・観察で放射線を体験的に学ぶ

 第4時以降は原子力と放射線に焦点を当てていく。原子力発電のしくみと特性を理解したうえで、放射線のイメージについて話し合った(連想するもの、放射線と放射能の違い、どんな場所にあるかなど)。続いて、簡易放射線測定器「はかるくん」を使って校内の自然放射線を測定。第5時は測定結果の比較考察とともに、花崗岩やカリ肥料など複数のサンプルで放射線量の違いを比べる実験や、霧箱での放射線の飛跡観察を行った。第6時は学習のまとめとして、新エネルギー利用の現状や将来像を見ながら、エネルギーの観点から自らの生活を振り返り、改善できる点などを話し合った。

 「放射線やエネルギー・環境問題への生徒の関心は予想以上に高く、題材として十分実践可能という手応えを感じた」と永尾教諭。一方で、生徒の好奇心が教科の学習範囲を超えて広がるため、指導や対応に苦慮する場面もあったと振り返る。今後も指導計画のブラッシュアップを重ね、「科学的で客観的な事実を理解したうえで、原子力や放射線の利用に対して自分なりの考えや立場を持てるような授業内容を目指していきたい」と語った。

【ワークショップ/施設見学】
「資源・エネルギーについての言語活動」 ~利点や欠点を科学的に正しく判断するために~

品川区立荏原第一中学校
牧野崇 主幹教諭

複数の視点で情報を吟味できるディベート活動

 新学習指導要領では、全教科に共通する重点項目として言語活動の充実を挙げている。科学的な思考力や表現力を高める理科的な言語活動のあり方を検討するため、牧野教諭は3年生第1分野「科学技術と人間」の単元で、ディベートや意思決定の場面を取り入れた授業を実践した。

 「風力・太陽光・火力・原子力の各発電のうち、どれが今後の日本にもっとも有効か」という課題を教諭から提示。クラスを4チームに分けて担当する発電方法を割り振り、討論に備えた調べ活動を行った。担当する発電方式だけでなく、反対尋問のため相手チームの方式の長所・短所も調べる。複数の情報源のデータを照らし合わせ、各自の持ち寄った情報を比較する過程を通じて、誤った情報が淘汰され、より客観性の高い科学的根拠を獲得する様子が見られたという。

 弁論や尋問の際にチームとしての意識決定が求められるため、どの生徒も課題意識を高めることができた。また、授業のまとめに各自の考えを作文にまとめさせたところ、ディベートの経緯を踏まえた多様な結論が出たという。

 教諭は、言語活動や意思決定場面の設定により「科学的な見方や考え方の深まりを見ることができたのは大きな成果」とする一方、ディベート活動の充実のためには、1・2年生段階からの実践の積み重ねが重要だと指摘した。

エネルギー教育実践のためのワークショップ

 新学習指導要領で導入される「エネルギー教育」の実践を行うにあたり、効果的な学習方法の一つとして実験が挙げられることから、企業や団体による実験のワークショップが展開された。

 今回の学習指導要領改訂で「放射線」の学習が復活したことを受け、日本科学技術振興財団の掛布智久氏が文部科学省が貸し出しを行っている簡易放射線測定器「はかるくん」の使い方や関連する実験を通じて「放射線」の学習展開について提案を行ったほか、ケニスや島津理化など教材メーカーによる実験機器を利用したエネルギー教育のあり方について紹介が行われた。

最新鋭の発電所で授業づくりのヒントを探す

 研修会のまとめとして、会場となった横浜火力発電所の施設見学を行った。同発電所は、液化天然ガス(LNG)を燃料とするコンバインドサイクル発電設備を持つ火力発電所。LNGを燃焼させてガスタービンを回し、その余熱でつくった蒸気で蒸気タービンを回転させる“ダブル発電”により、環境への負荷低減と高い熱効率を実現している。

 参加者一行は、中央操作室や巨大なタービンが並ぶフロア、高さ200mの排気塔にある展望室などを見学。施設の運用体制やコンバインドサイクル発電の技術的特性などについて質問し、ガイドの解説に熱心に耳を傾けていた。