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実践授業例・研修会レポート
偉人たちとの授業
活躍する放射線
川村先生の放射線模擬授業2011年12月5日 (日本教育新聞社 3面掲載)
東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、放射線教育を学校現場でどう扱うか。福島県内では、新学習指導要領で放射線が盛り込まれた中学3年生の理科以外の時間でも取り上げる学校がある。また、文科省が10月、放射線の基礎知識をまとめた副読本を作成した他、自治体の教育委員会が独自に作成する動きもある。
福島県郡山市では、子どもたちを放射線から守るために、屋外での体育や部活動の時間を制限する「3時間ルール」や、放射線積算量計の装着を推奨している。
こうした中、子どもたちの放射線への関心の高さから、郡山市立明健中学校では1年次から理科の授業で扱うことを決めた。
放射線授業の初回、佐々木清教諭は単元「地震はなぜ起こるか」で、校庭の放射線量のデータや放射線の特徴の読み取りの他、放射線を可視化した実験を行った。
実験では、放射線教育の導入としてよく使われる霧箱を用いた放射線の飛跡観察を試みた。まず、同校の校庭の土を使い、放射線が出るのを待つ。いつまでたっても放射線の飛跡が観察できないため、霧箱を開けて教材用の放射線源となるネジを置き、生徒たちはやっと放射線の飛跡を確かめた。
校庭の土を用いた理由について、佐々木教諭は「現在、本校の校庭の放射線量は低くなっている。子どもたちに、安心して校庭で活動してよいというメッセージ」と語る。
生徒たちは夏休みの宿題として、環境に関するリポートを作成している。このうち約6割が放射線に関わる内容だったという。授業で発表した女子生徒は「私たちは放射線とずっと向き合わなければならない」と語気を強めた。そして、「福島県から離れることを考える人もいるかもしれない。でも、福島を復興させるのは、私たち。たとえ、福島を離れることになっても、笑顔と自然のあふれる故郷を忘れずにいてほしい」と結んだ。
東日本大震災後、郡山市から転出した子どもの数は千人前後に及ぶ。教育研修センターの安田良一指導主事は、「郡山に残った子どもたちに、『郡山に残って良かった』『郡山で学んで良かった』と思ってもらえるような質の高い教育を提供することが、公立学校教員の使命だと思っている」と話す。
郡山市教委が示す放射線教育の柱は二つ。公教育としての「公平性と中立性」、子どもに夢や希望を与えることだ。公平性と中立性は、光と影の両面を押さえるのを大切にすること。震災前後で、原子力発電への安全認識や放射線の影響や身を守る方法を学ぶことなどが変わった一方で、医療などで放射線が使われているという現実は変わっていない。
原発事故の影響を受けている郡山市では、放射線によりどのような影響があるのか、科学的に検証された事実を踏まえて、放射線の影響を指導する必要があるという。そのため、学習指導要領に含まれていないが、放射線の影響やどう身を守るかについても学習する方針だ。
また、内部被ばくを悲観する子どもたちには、人間の体が持つ放射線で傷ついたDNAを修復する機能や、一定の期間がたてば体内から排出されることを伝えることで、夢や希望を与えるべきだと説明している。
佐々木教諭は「東日本大震災後、リスクコミュニケーションの重要性を感じた。そのため、理科では子どもたちに、自分の力で環境を知ること、データを分析する力を育てる必要がある。また、放射線教育は、『総合的な学習』、社会、道徳などとも連携できれば」と話している。
放射線について学ぶ際、文科省が作成した副読本の他、独自資料を作成する自治体もある。
岩手県教委では、パワーポイントで提示する放射線学習の教材を開発し、教員向け研修を実施。文科省の副読本では、小・中・高生の3種類だが、同県教委では小学生向けをさらに発達段階に分け、低学年、中学年、高学年を用意。また、中、高生向きのワークシートを作成した。
福井県教委でも、中学校理科のエネルギー教育で指導資料を作成。独自の資料で放射線が人体に与える影響などをまとめた。全国で最も原子力発電所の設置数が多いことを踏まえ、原子力利用の利点と欠点を考えさせる内容になっている。文科省の副読本とは異なり、福島第一原子力発電所の事故発生の経緯も図解入りで説明。3時間の授業展開案を提示している。