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教員向け研修会

放射線教育授業実践事例15:札幌市立北栄中学校

放射線教育授業実践事例15:札幌市立北栄中学校

 中学校第3学年理科の単元『運動とエネルギー』の「エネルギー資源とその利用」の学習が、下記のような指導計画に基づいて展開され、その3・4時間目にあたる「放射線とは」が、大学講師との連携授業として平成25年11月26日に札幌市立北栄中学校の視聴覚室で実施された。授業の担当教諭は佐藤深氏、大学講師は明治大学理工学部応用化学科の小池裕也氏、対象は第3学年の生徒148名だった。

 

指導計画

 

1時間目:エネルギー利用の歴史と東北地方太平洋沖地震後のエネルギー事情の変化
2時間目:いろいろな発電方法
3・4時間目:放射線とは(大学講師との連携授業)
       放射線の種類と単位、身のまわりの放射線、放射線の利用
       ※簡易放射線測定器『はかるくん』による放射線量の測定、霧箱の製作
5時間目:放射線の性質
6時間目:未来のエネルギーの活用

 

 

大学講師との連携授業「放射線とは」


 授業は、2時間連続(100分)とし、身のまわりの放射線について知る前半と、霧箱による放射線の観察を中心とした後半の2部構成とした。

 

 

3時間目(前半)【つかむ】(10分)
○放射線を理解する上で必要な原子の構造について確認する。
○事前調査の結果をもとに放射線のイメージを共有し、課題につなげる。
○大学講師の説明を聞き、放射線の基本事項を知る。
※放射線の種類、単位、放射線量を調べる方法、自然放射線の存在

 

図1 原子の基本構造を確認

 

【調べる】(15分)
○簡易放射線測定器『はかるくん』を班ごとに3台ずつ使用し、校舎内の放射線量を測定する。

図2 校舎内の放射線量の測定

【交流する】(10分)
○各班の測定結果を発表により交流する。

【解釈する】(10分)
○自然界に放射線が存在することを確認する。
○測定器や測定場所の違いによって、放射線量が変化する理由を考え、まとめる。

【つなげる】(5分)
○大学講師の説明を聞き、身のまわりの放射線(環境・食物等)について知る。
○目に見えない放射線の存在を確認する方法を知る。

 

4時間目(後半)【つくる】(10分)・【調べる】(10分)
○グループごとに霧箱の組み立てに必要な材料を配布し、大学講師の説明に従って霧箱を製作する。
○ランタンのマントル(芯)を使用し、α線の飛跡を観察する。

図3 霧箱によるα線の軌跡の観察

【整理する】(10分)
○大学講師から様々な分野での放射線の利用方法について説明を聞く。

【まとめる】(15分)
○簡易放射線測定器による測定で得られた結果や、霧箱による観察、大学講師の講義などを通して得た情報をもとに、放射線は身近に存在することや、その種類・単位・利用などについて、分かったことをまとめる。

【つなげる】(5分)
○福島の現状について説明を聞き、放射線による影響を減らすにはどうすればよいのか考え、次時の新たな課題につなげる。

 

連携授業の成果と課題(生徒のワークシートから見えてきたこと)


○成果
放射線が身近に存在することや、様々な分野で利用されていること、また、線量をしっかりと把握することの重要性に気づいた記述が多く見られた。
・授業を通して、自分が放射線について全然知っていないということがわかった
・放射線は身のまわりに必ず存在するもので、私は今まで被災地の周りにしかないものだと思っていたので驚きました。また、放射線は量で判断するのが大切だとわかりました。
・今回の特別授業を受けてから放射線のイメージが少し変わりました。もちろん量が多くなると危険ですが、人の役に立っているということも新しく学べました
・福島の放射線量は自分たちの住んでいる場所の放射線量よりとても多く、原発事故の被害の大きさが改めてよくわかった
・ニュースを見たときに、強さの単位を見て、自分で危険か危険じゃないかを判断していきたいです。
・今回学んだことを忘れずに、これからは前よりも放射線について自分自身で調べて、正しいことをしっかりと理解したいです。

 

○課題
短時間に多くの情報を得たことにより、誤解が生じている記述もあった。扱う内容や説明の方法には、改善が必要な部分もある。
・普段生活しているところの空気や食べ物にも放射線が入っている(→からも放射線が出ている)ということを知ってとても驚いた。
どんな物質でも放射能をもっている(→すべてではない)ことに驚いた。
飛行機雲が放射線とかでできたりする(→霧箱の原理についての説明を誤解している)のも知らなく、とてもすごいと思った。

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